876話 闇核虚構変異
昨日は2話更新をしています。
読み飛ばしがあるかたはそちらからどうぞ!
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
昨日はあれからもモブプレイヤーたちによる妨害もあってボマードちゃんに近づくことができなかった。
この際ボマードちゃんと組むのは諦めた方がいいだろう。
期限も今日を入れてあと2日しかないからな!
というわけでやって来ました岩山エリア……堅牢剣山ソイングレスト!
ボマードちゃんという第一候補を使えないので、後ろ楯を確実に得られそうなところに来たのだ。
「愚鈍混沌咎人【包丁戦士】。
久々に我輩の崇高なる凶神神聖祭壇域にたどり着いたようだ。
我輩たちが信奉する神の遣い……狂巫女として迎え入れよう!」
中二病患者のような痛いセリフを平然と使いこなすこの人物は魔法使いが被る三角帽子と黒いローブを羽織ったいかにも怪しい魔法使いという風体の【黒杖魔導師】だ。
俺のことを狂巫女と呼び、【包丁戦士狂教団】という俺のファンクラブのリーダーをやっているやつだな。
俺がアイドルをやるならこいつらの手助けは必要不可欠だろう。
……というわけで何かしら助けてくれよ~!
「ククク、我輩にかかればそのようなことは初級魔法レベルだ」
……なんか変なルビの付け方だったが気にしないでおこう。
俺を助けてくれるのなら細かいことはある程度スルーしてやるくらいの器量はあるつもりだ。
「偶像崇拝狂祭で上位になるには狂巫女の姿を変えなければならない。
極論人気投票であるからな」
おお、【黒杖魔導師】が真っ当なことを言っている!?
俺がプレイヤーキラーである以上、俺に票を入れるやつは誇張抜きでこいつら【包丁戦士狂教団】のメンバーと俺のクラン【コラテラルダメージ】くらいだろう。
それだと多少の票は入ったとしてもランクインまでは程遠くなってしまう。
……だが、【黒杖魔導師】の言うように多少姿を弄ったくらいでは俺だってことはすぐバレるんじゃないだろうか?
「ククク、先程も言ったであろう。
我輩にとっては初級魔法レベルであると!
漆黒闇の力であればこのような虚構身体を一時的に変えることが出来るのだ。
見ているといい……」
そう言うと【黒杖魔導師】は俺と自身を囲み込むようにして魔法陣を地面に描き始めた。
黒色のインクで描かれる模様は昔に書物で見た錬金術で扱われていたものと似ているが、異世界の技だからだろうか俺が知っている法則に沿っているわけじゃないらしい。
そうして魔法陣が完成すると、【黒杖魔導師】は口を開き呪文の詠唱を始めたようだ。
「虚構震え、失われた変異の闇核を螺旋の相に還さん。
漆黒闇の導に従いこの身に変革をっ!
漆黒闇魔法【闇核虚構変異】」
呪文詠唱が終わった瞬間、視界がブラックアウトし俺の意識が一瞬にして落とされてしまった。
そして俺が起きると目の前には黒髪長身の女が立って見下ろしていた。
黒色の三角帽子にボンテージを思わせるようなピッチリとした布の服装、右腕と左腹と右足側の布地が一切なく肌が露出している扇情的な服装を着ているが、それでもクールな表情を浮かべているので冷徹な美人という印象だな。
そして最も特徴的なのは眼だな、赤と緑のオッドアイというものだ。
ボトムダウンオンラインではスキルを使わないとオッドアイが成立しないので、それだけ目の前の女が異質であるという証明となっているぞ。
だが、その長身の女が口を開くと謎の人物ではないということが一発で分かった。
「ククク、我輩の漆黒闇の力はどうだ。
これで我輩が【黒杖魔導師】であると誰も分からないであろう?」
こいつっ、【黒杖魔導師】かよっ!?
……たしかに。
俺は目の前で魔法を見せられたからすぐに【黒杖魔導師】だと分かったが、普通は美女が【黒杖魔導師】だとは誰も思わないだろう。
口調が中二病なのは引っ掛かるが、【黒杖魔導師】のファンかただの中二病を患った女のどちらかだと普通は考えるだろう。
なにせボトムダウンオンラインでアバターの変更なんて機能はないからな!
「ククク、そして驚くのはまだ早い。
この漆黒闇魔法で虚構身体を作り替えたのは我輩だけではないのだから!」
ナ、ナンダッテ~!?
ということはもしや……
俺は【黒杖魔導師】から鏡を受け取って、恐る恐る自分の身体を確認していくのだった……
変わったり、変わらなかったりする……
【Bottom Down-Online Now loading……】