863話 全体攻撃の風評被害
本日二話目の投稿となります。
前の話を読んでない人はそちらからどうぞ!
全員の攻撃がそれぞれ対処され一度振り出しに戻ったわけだが、俺と【タコガタ】の次元天子二人を除けばいつの間にか皆が異形の力を身体に纏わせている奇妙な戦場と化していた。
これまでの次元戦争でも無かった異例の事態だな。
ここで俺が【深淵顕現権限】か【深淵纏縛】を使うともっと絵面が面白くなりそうなものだが、次元天子としての力を十全に使いたいこの局面では相性の悪い深淵スキルを使うのは悪手だろう。
非常に残念だが、おとなしく諦めよう……
「今度はボクからいく~よ!
スキル発動!【虎岩牙花】!」
【タコガタ】がスキルの発動を宣言すると、岩で出来た牙のような形をした花の花弁が出現し、それが咀嚼するような動きをして動き周りながら俺たちへと襲いかかってきた。
これは聖剣次元のMVPプレイヤーである【ランゼルート】も使ってきたスキルだから見覚えがある。
あの時は【ガルザヴォーク】が黒炎で焼き払ってくれたが、今回はどうやって対処したものか……
「私に任せてください!
スキル発動!【魚尾砲撃】!」
バニー服姿のボマードちゃんが二本の尻尾から再び極太レーザーを放ち、牙岩を穿とうとした。
極太レーザーが岩に触れると表面が徐々に削れていっているのだが……
「む、向こうの勢いが強すぎますよ!
いや~、助けてください~!」
任せてくださいと言った次の瞬間にボマードちゃんは俺たちに助けを求め始めた。
なんという変わり身の早さだ……
その様子に俺と【ペグ忍者】が顔を見合わせて苦笑しつつも、各々がボマードちゃんを助けるために迎撃体勢に入った。
まず【ペグ忍者】はチュートリアル武器のペグと、それを複製したものを両手の指の間に挟み込み鉤爪のようにして構えた。
「【ペグ忍者】もいくのら~!
スキル発動!【暴虎馮河】なのら!」
【ペグ忍者】は鉤爪のようにしたペグから黄色いオーラが溢れ始めた。
そのオーラは伸びるようにして鉤爪ペグを補強していく姿はまるで爪を研ぐ獰猛な虎のようだ!
そしてそのまま迫り来る牙岩に斬りかかろうとしたのだが……
【ペグ忍者】の攻撃に待ったをかけた人物がいたのだ!
「それはたこすちゃんが邪魔させてもらうのだよ!
スキル発動!【水流万花】!」
蛸足を器用に使い【ペグ忍者】の前に躍り出た【夢魔たこす】がスキルを発動すると、周囲3メートルくらいに水流の輪が形成され始めた。
その輪が花弁のように回りながら【ペグ忍者】のオーラを帯びた斬撃を受け止めていく。
……?
【水流万花】は確かに防御スキルだったはずだが、ここまで強度や持続性が無かったはずだ。
なのにも関わらず【ペグ忍者】の連撃を受け止め続けられているのは違和感があるな。
「もう忘れたのだ?
ふっふっふっ、たこすちゃんの【水流万花】は特別製なのだ!
たこすちゃんの種族【蛸海人】は【水に関するスキル】と【海に関するスキル】が強化されるのだよ!」
そういえばそんな効果もあったな。
つまり【水に関するスキル】である【水流万花】がこれだけ高性能になっているのは種族転生の恩恵ということだな。
【夢魔たこす】はペラペラと情報を明かしてくれるので非常にやりやすい!
他のMVPプレイヤーたちもみんなこれくらい素直だったら楽なんだが……
「【包丁戦士】しゃん、呑気にしてないであの牙岩を止めて欲しいのらよ!
【ペグ忍者】はたこすしゃんから離れられないのら~」
「【包丁戦士】さん!!!
ああああっ!!!」
二人ともうるさいぞ!
今助けてやるから慌てるな。
スキル発動!【花上楼閣】!
俺は背後に巨大な岩の花びらを生み出し、そこから次々に岩の礫として放っていく。
岩と岩、互いにぶつかり合い研磨されていき勢いが減退されていく。
まるで土石流に巻き込まれたかのような激しい衝撃が周囲に響き渡り、今度はスキルを放っている俺と【タコガタ】を除いた【夢魔たこす】、【ペグ忍者】、ボマードちゃんに被害が出たようだ。
被害の大小はあるが、こっちの方がメンバーが多い分相対的に被害が大きくなってしまった。
これはもしや、【タコガタ】の手のひらの上で踊らされているんじゃないだろうか?
さっきから直接的というより、間接的な被害によって全体的にダメージを与えてきているからな……
総ダメージ量がこちらの方がくらってしまっている以上、不利になりつつあるのは間違いない。
とらえどころの無い笑みを浮かべ続ける【タコガタ】がそこまで考えているのかは分からないが、何度かこちらを心理戦で試すようなことをしてきているのでそういう性格の次元天子なのだろう。
【菜刀天子】と違って緩い雰囲気のやつだが、その反面きちんと高性能AIの演算能力を無駄にしていない動きをしているのが嫌らしい。
くそっ、【夢魔たこす】みたいに何も考えずに行動してくれたら人数の差もあるから余裕に対処出来たはずなのに!
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