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856話 避雷『sin』

 「さて、仕切り直しと行かせてもらおうか。

 釣竿一刀流【砂荒】!」


 釣竿一刀流【砂荒】によって釣竿の斬撃に合わせて地面を断ち斬りながら豪快に切り上げてきた。

 地面を経由する太刀筋で、かつ、師匠が砂と風を生み出しているので視界をより悪くして来るという小癪な技だな。

 振るわれた釣竿の通りすぎた場所には砂嵐が発生しているため、その攻撃に合わせにいこうとしても正確な軌道が見えなくて対応できない。



 ……と【師匠】は考えているだろう。

 だがっ、それは甘いなぁ!

 スキル発動!【波状風流】!


 俺は風の刃を生み出すスプリンクラーのようなものを背後に生み出し、包丁の動きに合わせて【師匠】へと飛ばしていく。

 


 「風の力を宿す攻撃で儂の起こした風の流れを強引にねじ曲げるとは……っ!?

 驚愕だ、儂がこれで押し負けたのは【ランゼルート】以来だな……」


 【師匠】の表情が一瞬だけ、僅かに驚きの表情が浮かび上がったがすぐに元の凛々しい表情へと戻っていった。

 

 そうか、そういえば次元天子の力を持っていることを明かしていないから俺の素の力と思われているのか……

 クックックッ、面白いから黙っとこ!

 今回はメリットにもデメリットにもならないが、次回以降戦うことがあったらパワーバランスの計算をこっちが意図的に崩すことが出来るからな。

 今のうちに伏線を張らせてもらうとしよう。



 「攻め手を変えるか。

 釣竿一刀流【氷霰】っ!」


 

 【師匠】は砂と風の攻撃を中断して、今度は氷を操り始めた。

 【師匠】が釣竿を振るうと、釣糸の先に取り付けられているルアーが通った場所から氷の礫のようなものが次々に生成されていく。

 一つ一つは小さな粒のようなものなので一つぶつかったところでダメージは少ないが、氷の礫の生成は止まることなくされているので対処するのは中々骨が折れるかもしれない。




 ……もちろん、俺が次元天子の力を振り回していなかったらの話だがな。

 スキル発動!【鳳仙火花】!


 俺がこの局面で発動したスキルは鳳凰と化した【クシーリア】を討伐した時に手に入れた新スキルだっ!

 俺の包丁から放たれたのは、まるで2羽の炎の鳥が羽を広げてくっついているようにも見える3枚の炎花弁だった。

 その炎によって形成された花弁が氷の礫たちを溶かしていき、周囲に水蒸気を立ち上らせながら【師匠】へと向かっていく。

 属性相性は俺の方が有利だからなっ!



 「ぐっ、ぐぅ……

 片腕が持っていかれたか……

 こうなればやむを得ない。

 大罪の力を解放させてもらおう」


 



 【ワールドアナウンス】


 【釣竿が鬱屈を覚える】




 【【師匠】の称号【『sin』憂鬱の目覚め】が強制セットされました】


 【【師匠】の称号【『sin』憂鬱の渇望】が強制セットされました】


 【【師匠】の称号【『sin』憂鬱の飽和】が強制セットされました】


 【【師匠】の称号【『sin』憂鬱師匠】が強制セットされました】


 【【師匠】の称号【『sin』憂鬱の釣餌】が強制セットされました】


 【【師匠】の称号【『sin』憂鬱の大望】が強制セットされました】





 【【包丁戦士】の称号に【『sin』暴食の目覚め】の存在を確認】


 【罪は負の連鎖で繋がったり、断ち切られたりする……】


 【【包丁戦士】の称号【『sin』暴食の目覚め】が強制セットされました】


 【【包丁戦士】の称号【『sin』暴食の渇望】が強制セットされました】


 【【包丁戦士】の称号【『sin』暴食の飢忌】が強制セットされました】


 【【包丁戦士】の称号【『sin』暴食狂姫】が強制セットされました】


 【暴食は食べ散らかしたり、味わったりする……】




 【大罪域の風が吹き荒れる】


 【【師匠】に憂鬱の力が貸与されました】


 【【包丁戦士】に暴食の力が貸与されました】




 ん?【夢魔たこす】のアナウンスが無いな?

 何故だろう?


 ……まあ、今は関係ないか!

 極上の食材が目の前にあるんだからなァ!

 据え膳食わぬは男の恥というから喰らえる時に喰らわせてもらおうじゃないか!  


 「お前さんはお嬢だろうに男の恥とは威勢がいいというより、威勢が良いのか?」


 へっ、言葉の綾ってやつだ。

 ……そんなに気にするな!



 「誰であろうと生産的人間である儂を止められないであろう。

 それが儂の憂鬱でもあるのだが……

 まずはこれから行かせてもらおうか、釣竿一刀流【憂鬱三ノ型ー憂イノ雷】!」

 

 【師匠】はそう叫ぶと、天を突くように釣竿を垂直に掲げ始めた。

 すると、【師匠】が天に掲げた釣竿から雷が放たれ、戦場に落雷が発生し始めたのだ!

 雷が落ちる度に地面が焦げていき、周囲に生えていた広葉樹林が次々に雷に撃たれて引火しフィールドが燃え盛っていっている。


  

 「にゃにゃにゃっ!?

 これは天災じゃないのら!?

 ……っ、い、息つく暇も、ない、のら……っ!」


 地面を駆け巡りながら雷を間一髪で避け続ける【ペグ忍者】。

 卓越した運動センスが無ければ、アバターのスペックが高くてもこれほどの芸当はできないだろう。

 それほど見事なかわしっぷりだな!



 「オイオイ、【オメガンド】の天雷をスキル無しで再現したみたいな技って反則だろ……

 MVPプレイヤーってのはこんな頭がぶっ飛んだ連中しかいないのか……?」


 「ふひひっ、あてぃしたちは骨で作った避雷針で凌ぎますぅぅ……

 【包丁戦士】さんと【ペグ忍者】さんは自力で頑張ってくださいぃぃ……」


 「いや~、天才ならぬ天災ってこういうことなんですね~!」


 【バグパイプ軍楽隊員】、【骨笛ネクロマンサー】、ボマードちゃんたち後衛部隊は【骨笛ネクロマンサー】がability【粉骨再身】で生み出したと思われる骨避雷針で安全に雷を回避していた。

 【骨笛ネクロマンサー】はまだ分かるが、【バグパイプ軍楽隊員】やボマードちゃんが呑気なことを言っているのは少し思うところがあるぞ!



 そして俺は……

 スキル発動!【渡月伝心】!


 再び銀色の円環粒子を包丁から生み出し、頭上に【伝播】の力を張り巡らせることで雷を千切りにして防いだのだ!

 ふふふ、普段なら既に一回使用した【渡月伝心】のクールタイムはこの次元戦争中に解けないのだが今の俺は次元天子だ!

 スキルの回りが早いとここまで快適なんだな~!






 ハハハハハハハッ、今の気分は最高だぞ!


 【Bottom Down-Online Now loading……】

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