855話 カンテライト(挿絵あり)
ふははは、まだまだいくぞ!
スキル発動!【渦炎炭鳥】!
俺はさらに新たに聖獣スキル……【渦炎炭鳥】を起動し赤色の魔法陣を【師匠】の前に4つほど展開した。
いつもなら一個が限界だが、次元天子としての力を手に入れた俺はそれなりの数の魔法陣を同時に扱えるみたいだ!
出すことが出来る上限として本当はもっと出せるっぽいが、高性能なAIや並列思考が異様に得意というわけではない俺の頭では座標指定の関係で4つがまともに扱える範囲内だ。
そんな赤色魔法陣からは火柱が真横に飛び出し、【師匠】の周囲四方から灼熱の炎が襲いかかっていく!
こんなの食らったらひとたまりもないだろうな!
だが、そんな危機的状況にも関わらず【師匠】は頭の皺を僅かに寄せただけでさほど苦しそうな表情を浮かべていなかった。
この状況からでも脱出出来るとでもいうのだろうか……?
「儂を侮るではないぞ?
生産的人間として、これしき当然のように容易く乗り越えてみせるっ!
釣竿一刀流【滝登】、重ねて釣竿一刀流【波載】っ!」
【師匠】は釣竿に水を纏わせ、そこから水飛沫で生み出した波紋を広げていくとその波紋を足場にして空中へと駆け上がっていった。
いやいやいや、水飛沫を足場にするっておかしいだろ!
しかも空を飛び続けてるし……
これが【現界超技術】の真髄か、異世界人たちはいったいどんな身体してるんだよ。
そんな途方に暮れている間に【師匠】は釣竿から放った水流で俺の火柱から釣竿次元の仲間たちを守ったようだ。
俺と違ってきちんと仲間想いなのは年長者であるという自負があるからか?
俺だったらそのままスルーして相手に突撃してたと思う。
まだまだ攻め立てる手段は多く残されているから、こっちも強気にいかせてもらうぞ!
スキル発動!【花上楼閣】!
俺はスキルを発動させることで背後に巨大な岩で出来た花を浮かせ始めた。
これは【菜刀天子】が総力戦の時に使っていた【花上楼閣】の次元天子特製バージョンのやつだ。
巨大な岩の花は回転しながら花弁を広範囲に飛ばし始め、まるでガトリングから弾丸が放たれているような射撃が釣竿次元のプレイヤーたちへと襲いかかっていく。
「これは儂一人では撃ち漏らすか?
釣竿一刀流【雨乞】……!」
【師匠】は釣竿を弓のように扱い、異能力で生み出した魚の形をした水を矢のように放ち岩の花弁を相殺しようとしてきた。
次元天子のスペックで攻撃してるのに普通に対抗できてるこいつはいったい何なんだ……?
だが、対抗出来ているだけで実際は少しずつ俺が押していっている。
このまま行けば攻撃を直撃させられるはずだ。
そんな思考をしていると、【ペグ忍者】が慌てた声で俺に呼び掛けてきた。
「【包丁戦士】しゃん、【灯莉アカリ】しゃんがそっちの援護に行っちゃったのら!
【ペグ忍者】が引き離すまでなんとか足止めしてて欲しいのらよ~」
「ふふん、ちょーっとだけ抜け出して来たですよ!
かなり苦戦してる【師匠】にお裾分けです、アカリのとっておき受け取って欲しーです。
暗闇照らす光霓、彼の者を害する不浄から守り賜え!
防護の光……【セフィラスライト】です!」
【灯莉アカリ】がチュートリアル武器のカンテラから神々しい白光を放ち【師匠】を包み込んでいく。
するとどうだろうか、【師匠】の周りに光で構築されたカンテラが現れてカンテラ同士を結ぶように結界が張り巡らされたのだ!
その結界に阻まれた結果、俺の岩の花弁は結界を発生させていたカンテラ擬きを破壊しただけで終わってしまった。
防御力が高い結界だったが、結界解除のタネさえ割れてしまえば次はもっと早く解除できるぞ!
「防げたけど二回目は通用しなさそうです。
こんなに早く解除されるなんて想定してねーですよ!」
そりゃこっちは次元天子のスペックを振り回しているからな!
普通にこの二人の組み合わせと戦ったら厄介なこと極まりなかっただろうが、俺にしては珍しく策もなくゴリ押しさせてもらうぞ!
「【灯莉アカリ】しゃ~ん、【ペグ忍者】にそのカンテラの力をもっと見せるのらよっ!」
「うわっ、いつの間に真後ろに居たですか!?
この忍者っ娘、しつけーですよ!
とんでもなく速いですし、また捕まっちゃいましたです……」
【師匠】相手に補助を行った【灯莉アカリ】は【ペグ忍者】との戦闘で出来た一瞬の猶予を使いきってしまったため、再び【ペグ忍者】との戦闘に引き戻されていったようだ。
「アカリよ、助かったぞ。
だが、後は自分の戦いに専念するのだ。
儂の心配は要らぬ」
言ってくれるじゃないか……
けど俺も負ける気は全くしないぞ。
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