853話 今後の動きについて
「で狂人、これからどうするよ?
宝のヒントになるのは狂人が持ち帰ってきた黒色の鍵だけだが、結局これで開けるものが見つからなかったら無意味だぞ?」
【バグパイプ軍楽隊員】の言うように、鍵だけでは宝の持ち腐れだ。
勝ちを積極的に狙いにいくのであれば、このまま探索を続ける他ないだろう。
……いや、待てよ?
釣竿次元の次元天子は拠点から動いてなかったんだよな?
「そうなのらよ!
動かざること山のごとし! を体現していたのら~」
ふーん、なるほどねぇ?
「ふひひっ、【包丁戦士】さんが不気味な笑みを浮かべてますねぇぇ……」
「こういう時の【包丁戦士】さんは突拍子もないことを言い始めますよ!
いや~、みなさん覚悟しておいた方がいいですね~!」
好き勝手言われているが、俺の方針は決まった!
釣竿次元の次元天子を放置して、探索している釣竿次元のプレイヤーたちを殲滅していくぞ!
プレイヤーキラーとしての血が騒ぐな!!!
俺は腰に提げていた包丁を取り出し、包丁を指でゆっくりなぞりながら思わず恍惚とした表情を浮かべてしまった。
「清々しいほどの狂人思考だな……
これがトッププレイヤーキラーか。
包丁をなぞっている様子が映えるやつなんて、普通はよっぽどいないぞ」
それは俺が普通じゃないっていいたいんだな?
「いや、どう考えてもお前を普通って言うプレイヤーはいねーよ!
自覚なしか?」
流石にこれだけ言われてくると自覚はあるが……
「でも戦略的にはありなのらね~
宝探しの競争相手が減ればその分【ペグ忍者】たちが有利に立ち回れるのら!」
「ふひひっ、アンカー次元はMVPプレイヤーと次元天子が一緒に動いているので狙うのは怖いですけど、釣竿次元ならプレイヤーだけなので逝けそうですねぇぇ」
おいおい、勝手に逝こうとするな!
全身に骨を纏っているお前が言うと洒落にならないぞ!
……それならとりあえず釣竿次元のプレイヤーを誘い出す動きをしつつ、探索も同時に進めていくか。
釣竿次元の拠点に近づかなければ問題ないはずだ。
それに、イベントの公平性からしてそれぞれの拠点の近くには宝に関係するものが置かれていない可能性もあるので、なおのこと近寄る理由はない!
「これぞクラン【コラテラルダメージ】の動きって感じですよね!
いや~、物騒な作戦ですけどワクワクしてきましたね~!」
「【ペグ忍者】も気合いをいれて釣竿次元のプレイヤーと戦うのらよ!
【釣竿剣士】ちゃんの【師匠】の力……この肌で感じとりたいのらね~」
「ふひひっ、他の次元のプレイヤーの骨粒が採取出来るのか気になりますよぉぉ……
他の次元のMVPプレイヤーの力を【骨笛ネクロマンサー】兵として少しでも行使出来るようになったら便利ですからねぇぇ……」
「狂人の作戦に乗るのも癪だが、俺以外が賛同しているなら従うしかないな。
ま、やるからには俺も全力で支援してやるさ。
ここで何も出来ずにリタイアしたら【トンカチ戦士】リーダーと【虫眼鏡踊子】の姐さんに顔向け出来ないし」
ここにいる包丁次元のMVPプレイヤーである俺に対してというよりは、自分が所属するクランのメンバーたちに対しての想いが強いようだ。
クラン【紅蓮砂漠隊】は俺たちのように多数のクラン合同でレイドボスを倒すのではなく、自分達で見つけたものは自分達だけで倒す拘りがあるので身内にはより気持ちが入るのだろう。
そんな動機であろうとも協力してくれるのなら何でもいいぞ!
【風船飛行士】なら遠回しに最悪妨害してきてもおかしくなかったが、こいつなら任せてもよさそうだ。
「それで、どの辺りで誘い出すのら?
釣竿次元の拠点から離れすぎても、今度はアンカー次元とぶつかる可能性があるのらよ?
三つ巴だとこっちの被害もでかくなりそうなのら~」
【ペグ忍者】はちゃんと戦術をある程度齧っているようだ。
単独次元対決なら次元天子である俺が参戦する包丁次元が圧倒的優位だが、三つ巴となれば誰がどのタイミングで落ちるのか予想するのは困難だ。
まだそこまでのリスクを冒す必要はないだろう。
それならやはり周囲にアンカー次元の拠点がないと断言できる包丁次元の拠点周辺で待ち構えるのが安全策だ。
この辺りで見逃しがないか探索しつつ、釣竿次元のプレイヤーを待ち構えよう!
「ふひひっ、アンカー次元のプレイヤーと遭遇したらどうしますかぁぁ?」
うーん、どうしようか。
倒せるなら倒すに越したことはないが、次元天子がいたら雑談だけしてスルーしよう。
それでも向こうが襲ってきたら……その時考えよう!
「テキトーだな……」
臨機応変に対応できる柔軟な作戦と言ってくれ!
流石に状況を見ないと何とも言えないからな!
そういうところですよ、劣化天子!
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