851話 赤と青と黒
塔の最奥に到着した俺たちの前には3つの鍵が置かれていた。
一つは赤色、一つは青色のもの、そしてもう一つは黒色だな!
だが、この全てを取らせてくれるほど甘い仕掛けではないらしい。
「ここの立て看板に何か書いてありますよ!
いや~、ワクワクしますね!
……えーっと。
【腕輪で繋がれたもの二人で二つの鍵に触れよ! さすれば触れた二つの鍵が消え同時に腕輪も消えるであろう】ですって!
【包丁戦士】さんとの愛の結晶が消えるのは残念ですけど、戦闘になる前には外さないと不利になっちゃうので仕方ないですけど悔しいですね~!」
立て看板の要約をするなら、腕輪の解除と引き換えに二つの鍵の入手を諦めろ……ということだな!
今後のことを考えるのなら、この腕輪を放置しておくのはあり得ないのでどの鍵を残すのか考えないといけないだろう。
「やっぱり赤色を残すべきじゃないですか!
いや~、私と【包丁戦士】さんとの情熱的な愛の色ですし!
絶対これがいいですよ!」
ボマードちゃんは拳をぐっと握りしめて俺に迫りながら力説してきた。
おいおい、そんなにグイグイ来るなよ!
色仕掛けで巨乳を押しつけてきても俺が動じるなんて思うな!
くっ、柔らかいなこいつ……っ!!
俺はボマードちゃんに反撃すべく、豊満な双丘が形を変えるほど激しく揉みしだいていく。
俺の手のひらに収まりきらないほどの大きさの柔肌が波打つように形を変えていく様は見事としか言いようがない光景となっているぞ!
「は、激し過ぎですよ!?
いや~、いつにも増して執拗な攻めで私も興奮して来ちゃいますね!
強引な【包丁戦士】さんも大好きですよ!!!」
よし、やり込めることに成功したな!
ボマードちゃんを説得(?)出来たので、俺たちが残すのは黒い鍵だ。
配色的に黒色って深淵種族関係の可能性もあるからな!
俺やボマードちゃん、【骨笛ネクロマンサー】や【バグパイプ軍楽隊員】が得意とするスキルは深淵スキルなので、ここで黒色を選ぶのは悪い選択肢じゃないはずだ。
……まあ、鍵の色が全く関係ない可能性もあり得るが、そんなことを考えてもボマードちゃんのような謎理論で他のものを選ぶしかないのでほぼ勘のようなものだけどな!
「それでは私が赤色の鍵に触れますね!」
オッケー、それなら俺は青色の鍵だな!
さあ、いくぞ!
俺とボマードちゃんはそれぞれ鍵と鍵の間に立ち、そこから腕輪のチェーンが伸びる限界まで身体を伸ばして、さらに手をピンと張ってようやく鍵に手を届かせることに成功した!
俺とボマードちゃんは身長が低めなアバターなので、こういう時に不利だな……
そんなことを考えていると俺が触れていた青色の鍵が浮かび上がり、そのまま空中でくるくると回りながら俺の腕輪にぶつかってきた!
すると、腕輪に鍵穴が現れてその穴に青色の鍵がカチリとハマっていったのだ。
その甲斐あってか、俺たちを縛っていた腕輪が外れ代わりに鍵が光の粒子となって消えていった……
ボマードちゃんの方を見ると、あちらもちょうど腕輪と鍵が無くなったタイミングだったようで、自由になった腕をバタバタと上下に振って腕輪を無くなったことをアピールしてきている。
「【包丁戦士】さん、私も腕輪が取れましたよ!
いや~、自由になれてよかったですよ!
……でも、【包丁戦士】さんとならずっと繋がれていても問題ないどころか、大歓迎なんですけどね~!
【包丁戦士】さんと密着して過ごした時間は最高でしたからね!」
やはりボマードちゃんの頭お花畑も絶好調のようだな?
俺はノーサンキューだぞ……
というか、前々から思っていたが俺と一緒にいてそんなに嬉しいものなのか……?
客観的に見てもボマードちゃんが喜んでいる理由がよく分からないぞ。
そんなことよりだ。
俺とボマードちゃんが消し去った赤色と青色の鍵は手に入らなかったものの、俺の予想通り黒色の鍵についてはこの場に残されたままだった。
これはボマードちゃんに渡すと失くされそうだから俺が持っておくけどいいよな?
どっちにしても虚弱体質のボマードちゃんは鍵を持つだけでも疲れるみたいだからな……
「それは任せますよ!
いや~、私だとすぐに他のプレイヤーとかに盗られそうですからね。
ここは【包丁戦士】さんが持っていてください!」
当然こうなるわけだ!
さて、この塔にはもう用はない。
さっさと出て、初期地点まで戻るとしよう。
いつ集合するなんて決め事は一切していないが、情報について異様な拘りを見せる【検証班長】のやり方を熟知している【ペグ忍者】があっちのチームにはいる。
このまま情報を分断したまま最後まで進むとはとても思えない。
そろそろ俺たちと情報を共有するために戻っている頃だろう。
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