850話 緊急密着!ドキドキトラップ
お互いに先を急ぐ俺たちと【師匠】たちは軽く雑談を終えたあと、その場で別れることとなった。
「いや~、かなり風格のある人でしたね~!
あの人が【釣竿剣士】さんよりも強いと言われても納得できる立ち振舞いでしたよ!」
頭お花畑のボマードちゃんにもあの【師匠】の凄さが伝わっていたか!
戦わないと言いつつも、いつ俺たちが攻撃を仕掛けてもすぐ迎撃できるように緊張感を張り巡らせていたから、変に攻撃していたらボマードちゃんは瞬殺されていたに違いない。
それくらい常在戦場を心得ている玄人ということだ。
「ええっ、そうだったんですね!?
いや~、次元戦争始まったばっかりですぐに脱落したらもったいないですからね!
穏便に終わってよかったですよ!」
そんな風に俺とボマードちゃんは【師匠】についてしばらく語り合いながら引き続き草木を包丁で切り捨てながら進行していく。
【師匠】たちが来た方向は既に探索されてしまっているので、少しだけ進む方向を変えておいた。
【師匠】たちが進行中に何かを見つけていた可能性も否めないが、あの様子からするとまだ特に手がかりを見つけていない感じだった。
ポーカーフェイスが異様に上手かったパターンも考えられるが、どっちにしても同じ情報を得るよりは別方向で手がかりを増やした方がいいと判断した結果だな!
そして、どうやらその判断が功を奏したようだ!
俺たちの前方には何やら建造物のようなものが現れた。
それは木々に隠れて遠くからは見えなかったが、塔のような見た目をしたものだ。
おあつらえ向きに入り口まであるのでここに入れということなのだろう。
「どうします、入りますか?
いや~、中にお宝とかあれば一発クリアなんですけどね~!」
確かにそうなったら圧勝もいいところだが、流石にそれは楽観的過ぎるだろ!
と思いつつも、せっかく見つけた異物だ。
ここに入らないという選択肢はない!
俺とポマードちゃんは罠で分断されないようにピッタリとくっつきながら塔の中へと入っていった。
……今思えばこれが良くなかった。
「ほ、【包丁戦士】さん!?
いや~、なんか腕輪みたいなものが急に現れましたよ!?
って、【包丁戦士】さんの腕輪とくっついていますね!
これはきっと、私たちの愛の形を表現したものに違いないですよ!」
ボマードちゃんが即行で罠を踏み抜いてしまい、俺の左腕とボマードちゃんの右腕に鉄製の腕輪が取りつけられ、その腕輪同士がチェーンのようなもので繋がれてしまったのだ!
チェーンの長さはさほど長くないため、素早い動きをするとボマードちゃんが引き摺られるようになった。
決して俺とポマードちゃんの愛の形ではない、断じてだ!
まあ、普段の俺だったら鬱陶しいことこの上ない罠だったが、この次元戦争中に限って俺は次元天子としてのスペックを存分に振り回すことが出来るからな!
圧倒的筋力を以てボマードちゃんを側に引き寄せながら塔の中を進んでいくぞ!
ボマードちゃんの豊満な巨乳が当たって憎らしい……
塔の内部は罠がかなり仕掛けられていた。
よくあるスイッチを踏むと矢が飛んでくるものや、岩が転がってくるもの、水没させるほどの勢いで水が流れてくるものなど包丁次元のモブプレイヤーたちではこの何処かで脱落していたようなものばかりだ。
「恐ろしいやつばっかりでしたね~!
いや~、【包丁戦士】さんは何であんなに罠の対処が上手いんですか?
プレイヤーキルしている時に近いくらいイキイキしてましたよ!」
……まあ、その辺は色々とあってな?
罠に関しては場所も回避方法もかなり分かる。
プレイヤーキル同様、俺に必要とされていた技能の一つだからな!
もっとも、俺だけなら回避できた罠も、全ての罠をボマードちゃんが華麗に踏み抜いてしまったので、無駄な労力を使ってしまった感は否めない。
「ふええ、ごめんない!
いや~、だって普通罠が何処にあるかなんて分からないじゃないですか~!
【包丁戦士】さんは分かるみたいですけど、歩いている最中に場所を言われてもすぐに反応出来るほど私の【名称公開】虚弱体質は身体が強くないですからね!
こういう時はどうしようもないですよ~」
それは虚弱体質のせいなのか?
どっちかといえばボマードちゃんの運動神経は反射神経の問題のような気がするが……
まあ、それは本人しか分からないことだろうし、少なからず【名称公開】虚弱体質は関与しているだろうから仕方ない面もあるのは認めてやろう。
だが、その甲斐あってか塔の最奥まで到達することに成功したのだった!
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