846話 宝さがし次元戦争前の顔合わせ
【Raid Battle！】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン！
昨日は次元戦争の開始予告をゲーム運営プロデューサーの【山伏権現】から告げられたんだったな。
俺が次元天子としての力を行使できる貴重な機会だ、思う存分暴れるぞ～！
というわけで、今日はゲーム運営プロデューサーの山伏権現から通達があったように次元戦争が開催されるというわけだ。
それを証明するように、ウインドウ画面の【上位権限】という項目が点滅している。
あきらかにこの項目を選べという意志がひしひしと感じられるので、それを押すと「【上位権限】【Battle field】展開！」という文字が現れた。
この文字を触っても意味がないというのは前回試して分かっているので、素直に前回起動できた方法を試させてもらうぞ！
俺は口を大きく開き、【上位権限】の起動ワードを唱えていく。
「【上位権限】【Battle field】展開！」
俺は包丁を天に掲げて、包丁から力の奔流である光を煌めかせ始めた。
そして、その奔流に呑み込まれるようにして俺は天子王宮から姿を消していったのだった……
【特異次元 金剛島海域エイプモンド】
俺が転送されてくると、そこは自然豊かな島だった。
俺がいる場所は海に面している砂浜で、海の向こうを見渡しても青空と水面が広がっているだけだ。
陸地を見ると、ヤシの木やらの南国チックな植物が生い茂っている。
この中を探していくのは中々骨が折れそうだ……
「ふひひっ！
今、骨って言いましたぁぁ……？」
たしかに言ったけど、お前が喜ぶような話題じゃないぞ！
俺がまず見つけた包丁次元のプレイヤーは頭に骸骨のようなものを装着し、服のいたるところに骨を飾り付けている不気味な服装の緑髪の女……【骨笛ネクロマンサー】だった。
こいつは次元戦争初参加だったな。
というわけで、抱負をどうぞ。
「ミチの骨が欲しいですぅぅ……
ここなら珍しい魚の骨とかありそうですねぇぇ！」
ブレないな……
どんだけ骨が好きなんだよ……
【骨笛ネクロマンサー】は自分のクランメンバーなんだが俺にはその趣味は理解しかねるので、他のやつと接触しにいこう。
次に見つけたのはチュートリアル防具を着込んでいるタンクトップロリ巨乳……ボマードちゃんだ！
低身長な身体に不相応な巨乳がぶら下がっているのは、見るものにとって目に毒となるものだ！
「いや～、また【包丁戦士】さんと一緒に戦えるのは嬉しいですね～！
メロメロです！！！」
はい次いこう！
次に見つけたのはピョコピョコと動く小動物のような小柄な女だ。
こいつはピンク髪のロングヘアーで猫耳頭巾を被った忍者衣装のペド……【ペグ忍者】だな！
「【包丁戦士】しゃん今日は一段と元気そうなのらね！
【ペグ忍者】も頑張るのらよ～！！
せっかくだからついでに他の次元のスキルをいっぱい見たいのら！
前に参加した時も収穫がいっぱいあったから今回も期待できるのらよ～！」
流石はクラン【検証班】のスキル調査を担当しているだけあるな。
こういうイベントの使い方をよく理解しているじゃないか！
【釣竿剣士】に色々と仕込まれたのは伊達じゃないってことがこういう時によく分かる。
あいつは戦闘すらも生産活動の一環として扱っている節があるからな……
そしてもう一人。
いかにも軍楽隊に所属してそうな派手な服装の十代半ばの男。
チュートリアル武器であるバグパイプを携えた【バグパイプ軍楽隊員】だ。
クラン【紅蓮砂漠隊】という俺とはあまり関わりのないクランに所属しているやつだな。
関り合いになる時はだいたい敵側なので、【バグパイプ軍楽隊員】のことについてはスキル【堕音深笛】の使い手ということくらいしか知らない。
「うわっ、狂人だ……
いや、次元戦争だから代表の【包丁戦士】がいるのは知ってたけど、お前が味方なのは身体が拒否反応を起こしそうだぞ」
随分と失礼な物言いだな？
今ここでお前をキルしてやってもいいんだぞ？
俺は腰に提げていた包丁を瞬時に抜き【バグパイプ軍楽隊員】の首もとに刃を押しつけた。
「うへー、勘弁してくれよ……
そうやってすぐに実力行使してくるところが狂人って呼ばれるポイントの一つなのは自覚してくれ。
だからMVPプレイヤーなのに人望がないんだよ」
それは承知の上でプレイヤーキラーをやってるから問題ないぞ！
……まあ、たまに人望のなさに自分で絶望することもあるが、すぐ立ち直るレベルのショックを受ける程度だ。
他の誰に言われたからって今さら自分のプレイスタイルを変えるつもりはないさ。
「そうやって一貫してるのも狂ってるんだよな……
悪役を押し通せるほどの精神力は普通のやつが持ってるわけないからな！」
俺は普通の可憐な乙女さ、ほら可愛いだろ？
そう言ってマントを翻しながらクルリと回って見せた。
「……まあ、見た目が可愛いのは認めてやるけどよ」
やったぜ。
！
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