845話 介入型トレジャーハント次元戦争フラゲ
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
とりあえず【短剣探険者】の料理問題は解決したな!
天ぷら限定だが料理できるようになったので、多少なりとも女子力は上がっただろう。
俺が玉座に座りながらログインすると、目の前に一人の人物の影が現れた。
山伏のような姿とサラリーマンのような姿をまぜこぜにしたカオスな見た目のやつだ。
基本は山伏衣装なんだが、ネクタイをしていたり、キッチリメガネをキメて、髪は七三分の状態でワックスで固めているようだ。
この時代錯誤な服装をしているやつは見覚えがある。
ゲーム運営プロデューサーの【山伏権現】だ。
【どうも、ゲーム運営プロデューサーの山伏権現です。
まずは、ここまでこのゲームを楽しんでいただけたようで、プロデューサーとして感謝を!
これからもこのゲームをよろしくお願いします!】
恒例の挨拶をドーモ。
この挨拶は既にテンプレと化してるな……
もはやお決まりになった登場時の挨拶を口にしながらも、【山伏権現】は俺のことを見定めるような目で見つめてきている。
このゲーム運営プロデューサーが出てくるってことは、そろそろあれが開催される時期だったということだな。
【【包丁戦士】君が察しているように、次元戦争開催のお時間だ!
はい拍手!】
俺はこれからの次元戦争に想いを馳せながら【山伏権現】が促すように拍手をしていた。
さて、今回はどんな形式の次元戦争なんだ……?
【今回は次元天子介入型の次元戦争だね。
包丁次元とあと2つの次元が合同で同じフィールドで戦う予定だ!
【包丁戦士】君が得意な複数陣営が入り乱れる戦いだから、君にとってはラッキーかな?】
それはラッキーだが、包丁次元に次元天子のNPCはもう居ないぞ?
俺が【菜刀天子】からそのまま受け継いだが、スペックが全く上がってないのに他の次元天子と渡り合うのは酷ってもんじゃないか?
どう考えても不利だろ!
俺が率直な不平不満をぶつけておく。
せっかく苦労して一位の座を維持しているのに、このまま不利な盤面で開始したら一気に転落ルートを辿る未来が見えたからだ!
だが、【山伏権現】は人差し指を立てて左右に振りながら余裕そうな表情を浮かべていた。
この質問は想定済みだったということだろう。
【プレイヤーに優しいと定評のあるこのボトムダウンーオンラインがその問題を放置しておくわけないよね!】
くっ、心にもないことを言いやがって……
プレイヤーに人権のないこのゲームならそれくらいやりかねないから、わざわざ聞いているというのに……
【次の次元戦争に限って、【包丁戦士】君は【菜刀天子】と同じステータスになったり、スキルを使えるようになるよ!
つまり正真正銘の【上位権限】持ち次元天子として戦えるわけだ。
ワクワクしてこないかな?】
……確かにそれは魅力的な話だ!
天子仕様の聖獣スキルを連発していけるのは爽快感があるだろうなぁ~!
これ、次元戦争で無双ものをやる気分を味わえるんじゃないか!?
地味にスキル検証の機会にもなるだろうし、これを有効活用しないのは勿体ないだろう。
せこいかもしれないが、がめつくいかせてもらうぞ!
【もちろん、相手の次元は正規の次元天子たちがいるから、そう簡単にはいかないということを忘れないように。
【包丁戦士】君以上に力を使いなれているから、その力を使って君がどうやって次元天子たちと戦うのか楽しみにさせてもらうよ】
簡単に言ってくれるなぁ……
いくら次元天子の力を手に入れたとしても、かなり苦戦するだろう。
色々と熟練度が違うだろうし、身体スペックの違いで普段通りの動きが出来ない可能性があるからな!
……そういえば、次元天子介入型ということ以外情報をもらってないぞ?
【そういえばそうだったね。
今回はフィールドに隠されたお宝を探し当てるトレジャーハント形式だよ。
宝の形とか名前とかは現地で情報を仕入れていく必要があるから頑張ってね。
君、こういうの得意でしょ?】
やっぱり俺のこと見透かしたようなこと平然と言ってくるなこいつ……
やっぱりこのゲームはプレイヤーに人権がないじゃないか!
プライバシーもへったくれもないんだが?
【おっと、では健闘を祈るよ!】
【山伏権現】は痛いところを突かれたような苦笑いを浮かべながらスーっと空中で分散していってしまった……
おいおい、図星かよ……
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