841話 ダークヤマー
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
昨日は【短剣探険者】の料理でとんでもない目に遭わされてしまった。
まさかあそこまで壊滅的だとは思ってなかったぞ……
あれは俺の手に負えないかもしれない。
だが、何かしら手助けはしてやりたい。
そんなわけでやって来ました地蒜生渓谷メドニキャニオン。
ここで【短剣探険者】と合流した。
「料理修行って聞いてたのになんで冒険者ギルドのダンジョンに連れてこられたのカナ?」
不思議そうな顔をして俺に問いかけてきた【短剣探険者】だったが、それもそうだろう。
冒険者ギルドのダンジョンといえばひたすらモンスターを倒しながら奥へと進んでいくものだ。
直接料理に関係ある要素を含んでいるとは思えないのも無理はない。
結果として【短剣探険者】がキョトンとした表情になってしまったのも道理である。
だけど、料理を教える前に【短剣探険者】とは色々と話をしてみたかったんだ。
お前のダークマター生成については普通の方法で矯正するのは難しそうだからな……
何か治すきっかけを見つけたいと思ってな!
「イイネ!
せっかくだしおしゃべりしながらダンジョンアタックしようネ!」
今回ギルドマスターの【オメガンド】から受けたクエストは【曲者虫を駆除せよ】だ!
前に【骨笛ネクロマンサー】ともこのクエストを受けていたから、初見じゃないし片手間でクリアできるだろう。
話半分で挑むには丁度いい難易度だな。
俺たちが突入したダンジョンはワーム系の雑魚モンスターが無限に湧き続けるダンジョンだった。
うねうねと蠢くリアルのものよりも何十倍も大きい、人と同じサイズの芋虫はプレイヤーたちに嫌悪感を抱かせるのだろう。
そういえば確認してなかったが、【短剣探険者】は虫とか大丈夫なのか?
俺は今さらだけど。
俺はわらわらと現れてくる芋虫たちを包丁で切り裂きながら【短剣探険者】に確認してみた。
「うーん、全く問題ないヨ!
探険者って名乗ってるし自然にいるものならむしろ得意ダネ!
私たち双子が住んでるところも自然豊かな田舎だし、見慣れてるのもアルヨ~」
【短剣探険者】も俺同様に短剣を使って芋虫たちを一匹一匹、確実に葬りさっていっている。
この様子なら確かに問題なさそうだ。
へー、都会育ちってわけじゃないのか。
てっきり自然に憧れてゲームの中で探険者や冒険者をやっているのかと思っていたぞ。
「私も【ブーメラン冒険者】も小さいときから山の中をグルグルと歩き回っていたから、ゲームでも無意識に同じような場所を求めてたのカモネ?
言われるまで気づかなかったケド……」
そういうこともあるだろう。
自然の中が落ち着くやつなら、ゲームだろうがなんだろうが惹かれるものがあるんだろうな。
「私は狩りをするのが好きなんだケド、【ブーメラン冒険者】は山菜の採取とか山奥にある神社や祠に行くのが好きなんだヨネ~
同じ自然好きなのに方向性が微妙に違うんダヨ!」
世間一般的に見るなら、【短剣探険者】の趣味が男向け、【ブーメラン冒険者】の趣味が女向け……に近いかな?
本来の性別と逆な気がするが、【ブーメラン冒険者】の女子力が高いのはその辺が由来なのだろうか?
……一方で、【短剣探険者】の料理下手についてはよく分からない。
狩りをするなら自分で獲物を料理したりするんじゃないのか?
「えへへ、それは全部【ブーメラン冒険者】に任せてたヨ!
私が料理すると食べられなくなっちゃうからネ!」
えぇ……昔からこの料理下手体質があったのか……
もはや救いようがないのではないだろうか?
「ソンナ~!」
そうは言っても、簡単な炒め物すら作れないなんてどうやって食べられるものを作らせるか見当もつかないんだよな……
山育ちの【短剣探険者】に何を教えればいいんだろう。
理論か、感覚か、感性か。
その全てかどれでもないのか。
それはこれからさらに探っていかないとダメそうだ。
これは骨が折れそうだ……
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