837話 目の前に3つの封印があるじゃろ?
さて、そういうわけでやらせてもらおうか!
スキル発動!【深淵顕現権限Б】!
俺は【槌鍛冶士】から渡されていた深淵鉄球を生け贄に捧げ、全身に深淵の黒い霧を纏わせていく。
黒い霧は俺の内部構造を身体の端から書き換えていき、最終的に俺の眼球には黒い羽のような模様が浮かび上がってきた。
これが視るものを弱体化させる【阻害】の力を宿した眼だ!
……まあ、今回はその使い方じゃなくて、この場の力の流れを読み取るだけなんだがな。
【ガハハ!!!】
【では向かうとするぞ!!!】
そして【槌鍛冶士】に案内されたのは俺たちがさっきまでいた大樹の裏側だった。
普通なら木の裏側に回っただけかよ!……と突っ込みたくなるところだが、今回は事情が違う。
何せ天を突くほどの高さの木の裏側だ。
移動するだけでかなり時間を使ってしまった。
【槌鍛冶士】に案内されなかったら一々力の流れを調べながら移動することになっていただろうから、時間の短縮という点で非常に助かるナビゲートだったぞ!
……で、力の流れを視てみたが思っていたよりも複雑化していた。
いくつかの封印の力が絡み合っていて、どれを切ればいいのか判断が出来ないのだ!
爆弾の導火線コードが絡まったものを切って外すようなものだ。
迂闊に切れないのに、3つくらいの封印が重なってしまっているようだな。
【3つか!!!】
【そのうち1つは【世界剣種】、残り2つのうちの1つは間違えて解除しても大きな問題にはならないだろう!!!】
【だが、残された1つは絶対に解除するな!!!】
【あれは【包丁戦士】の害になるものだからな!!!】
そんな物騒なこと言われてもなぁ……
俺にはそれぞれどんな性質を持った力の流れなのか視ることが出来ないから判別するのは難しいだろう。
俺が視れるのは力の流れの太さで、この太さは力の強大さを意味していると思っている。
だが、今回の3つの力の流れの太さはごく僅かな差しかない。
【トランポリン守兵】お嬢様の邪眼のように性質の差を色で識別出来たら今回はあっさり解決出来ていたと思うと、少し惜しい気持ちになってくるぞ……
【……深淵の眼を使っても見抜けないのか!!!】
【これは予想外だったぞ!!!】
【流れが視れても、これではロシアンルーレットのようなことになってしまうな!!!】
そんな不安になるようなことを言いながらも豪快に笑ってのけた【槌鍛冶士】。
何か秘策があったりするのか……?
俺がそう尋ねると【槌鍛冶士】は暑苦しい満面の笑みを浮かべながら口を開いて……
【そんなものはない!!!】
【ただお前が思ったようにやればいいぞ!!!】
【その結果どうなろうとも構わぬ!!!】
【さあ、どれを切る!!!???】
【槌鍛冶士】が俺の射幸心を煽るように3つから選ばせようとしてきている。
……いや、待てよ?
よくよく考えたら別にどれかに絞らないといけないわけじゃないよな!
俺に害あるものが存在するとはいえ、それ以上に今欲している【世界剣種】の封印を解くのは必須だろう。
【大深罪鉄林包丁】を使って封印を解けるのはおそらく一回だろうが……
俺の答えはこれだぁぁぉぁ!!!!!
そう叫びながら俺は絡まりあった3つの力の流れを一気に断ち切った!
雁字搦めにされていた力の流れがプツリと切れると、そこに溜まっていたエネルギーが一気に流出していきその光が俺のもとへ、そしてこの世界へと飛び去っていったようだ。
そして脳内に無機質な声のアナウンスが鳴り響き始めた。
【個人アナウンス】
【【ユニーククエスト 封印樹を解く封地剣を装備せよ】が【包丁戦士】によってクリアされました】
【【包丁戦士】に称号【世界地剣の守護者】を付与しました】
【称号の効果で【Bottom Down】!】
【【包丁戦士】の深度が89になりました】
【【鉄血森林の森人君主】及び【大深罪鉄林包丁】が【封地剣マヒク】を吸収しました】
【【鉄血森林の森人君主】の土耐性を参照……】
【所有者である【包丁戦士】に対してスキル【封印土剣】を付与しました】
【【鉄血森林の森人君主】からのコメント】
【【ワシがスキル獲得の条件を代わりに満たしておいたぞ!!!】】
【ワールドアナウンス】
【封印されていた聖獣が解き放たれました】
【地蒜生渓谷メドニキャニオンに配置されます】
【ワールドアナウンス】
【封印されていた【荒野の自由】の【上位権限】ー【movement】が解放されました】
【これにより【荒野の自由】は他エリア間への移動が一定時間可能になりました】
なんかいっぱい来たな……っ!?
やはりこうなったな!!!
流石はワシの相棒、思い切りがいいぞ!!!
【Bottom Down-Online The Eternal Now loading……】