表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

836/2203

836話 阿吽のお膳立て

 はい、【槌鍛冶士】が【失伝秘具】ー【大深罪鉄林包丁】へと変形して、俺はそれを握りしめているわけだがこれからどうすればいいんだろうか?

 まさかこの肉切り包丁で気が遠くなるほどでかい大樹を伐採しろなんて言わないだろうな?


 俺は料理人ではあるが、木こりじゃないぞ!


 そんな文句を言いながら口を尖らせると【槌鍛冶士】は包丁から俺の意識へと直接言葉を飛ばしてきた。

 口が無くなるからどうやってコミュニケーションをとろうかと思っていたが杞憂で済んでなによりだ。



 【ガハハ!!!】


 【それは勘弁して欲しい!!!】


 【あの大樹はワシのエリアの根幹になるものだからな!!!】


 【失われてしまうとワシの森人としての強みが減ってしまうぞ!!!】



 流石に大樹は切らなくてもよかったらしい。

 正直ホッとしたな……

 あれを切ろうとしたら途方もない時間と労力が必要になっただろう。

 

 【まずはこの段階でクエストの発令をさせてもらうぞ!!!】


 【ワシの【上位権限】のリミットをいくつか外すきっかけになるからな!!!】


 【このシステムを利用させてもらうぞ!!!】


 【槌鍛冶士】がそう言うと肉切り包丁が緑色に輝き始め、俺の脳内に無機質な声のアナウンスが鳴り響き始めた。





 【個人アナウンス】


 【【ユニーククエスト 封印樹を解く封地剣を装備せよ】を受注しました】



 【運営からの忠告】


 【このクエストは失敗しても失うものはありませんが、成功することによって特別な報酬が与えられることがあります。】


 【ユニーククエストは達成する前に状況の変化によって、クエストそのものが消失している場合もあります。

 他の次元では発生しないことも考えられますので、この機会に世界を変えていきましょう!】




 ユニーククエストを一度経由しないとむやみやたらに行動できないのはレイドボスとしての縛りの1つだよな。

 だが、考えてみれば【槌鍛冶士】からユニーククエストを受けたのはこれが始めてだ。

 しかも目的のブツが何処にあるのかが分かっているので難易度はリデちゃんが受けたものよりも低いだろう。


 【ここから先のことをワシが語るためにはユニーククエストの受注が必須になるからな!!!】


 【何度も越権行為ばかりしていればワシがゲーム運営プロデューサーの山伏権現に消されてしまう!!!】


 【そうなれば復活も封じられてしまうだろうから非常に困るのだ!!!】



 へー、山伏権現はレイドボスの削除とかも出来るのか……

 あの奇妙な性格からしてそんなことを頻繁にするような奴には思えないが、一方で目的のためならば手段を選ばないようにも思える。

 俺たちのアカウントを垢BANするようにレイドボスにも関与できるのなら、平然とやってのけてもおかしくない……か?


 ただ、俺が見てきた【上位権限】レイドボスやその眷属のレイドボスたちは一定の法則に従いながら行動しており、その対象になるようなレイドボスは知っている限りだと【槌鍛冶士】しかいない。

 常に上から目線のツンデレ【菜刀天子】、老獪で狡猾なルル様、力の破片を繋ぎ合わせて存在している【大罪魔】、何を考えているのかよく分からないカニタマ。

 あいつらは自分を迂闊に危険に晒すような真似をする連中じゃなかった。

 それに対して【槌鍛冶士】は異質すぎる存在と言えるだろう。

 常にプレイヤーとして行動しておりプレイヤーを見下していない、そして俺のこととあらば【上位権限】ですら許されていない越権行為もしれっとやってのける。


 そういった点もあって、山伏権現に異質と判断されて削除されてしまうと【槌鍛冶士】は考えたのだろうな。

 だが、それなら【失伝秘具】ー【大深罪鉄林包丁】を生産イベントで提出した時に消されていただろう。

 あの時、むしろ山伏権現はその状況を面白いと言っていたからそれを望んでいた可能性すらあるけどな。


 ……あー、そういうことか。

 なるほどなぁ……あいつの目的が何となく分かってきたような気がするぞ。


 俺は山伏権現のことについて考察し、ある種の理解と納得を得て自らの口から声が漏れ出てしまったことに気がついた。

 これは【槌鍛冶士】にわざわざ説明するようなことでもなさそうだし、このまま話を進めてもらうことにしよう。


 【ガハハ!!!】


 【何やら考え込んでいたようだが、そろそろ話を進めるぞ!!!】


 【【大深罪鉄林包丁】と化したワシをお前が振るい、封印の力のみを切り裂くのだ!!!】


 【この状態ならば【プレイヤー】としての枷を気にせずお前に力を貸してやれるからな!!!】


 

 何をすればいいのかは分かったが、その封印をどうやって見つけるのかだよな。

 下手すると余計なものまで一緒に切り裂きかねないし、確実に見極めていきたいが……



 【お前には力の流れを読み取る深淵の眼があるだろう!!!】


 【あれを使えばいい!!!】


 【ある程度の場所はワシが伝えてやるから、その付近にある流れを切除すれば問題ないだろう!!!】


 深淵の眼……アルベーの邪眼のことだな?

 だが、【深淵顕現権限】を使うための生け贄がここにはいない。

 【槌鍛冶士】も肉切り包丁の姿になってしまったからな……


 【ここに来る前、お前に深淵の力の塊を渡しただろう!!!】


 【あれを生け贄の代替品として使えば問題ないはずだ!!!】



 そういえば毎度のごとく【槌鍛冶士】から深淵鉄球をもらっていたな。

 ここまで見越していたということだろう。

 そんなにお膳立てした状態なら文句もない。

 







 流石は俺の相棒だな。


 【Bottom Down-Online The Eternal Now loading……】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ