834話 永遠の底無し
針樹海地帯を抜けた俺は【槌鍛冶士】に案内されながら一際存在感を見せていた大樹の根元へと到着したのだった。
「ガハハ!!!
ここまで来れば安心だ!!!
さあ、新たなるボトムダウンーオンラインの世界をお前に見せてやろう!!!
受け取れ!!!」
【Bottom Down-Online Now loading……】
【Bottom Down-Online The Eternal downloading……】
【はじめの隠者は唯一無二の相棒を選んだ】
【さあ、一心同体であり相棒である親友のためにその身を投げ出すぞ!!!】
【しかしそれは永遠なる輪廻の始まりであり】
【甦った隠者は再び唯一無二の相棒を選んだ】
【Bottom Down-Online The Eternal Downloaded!】
【ようこそ、ワシの森へ!】
【Bottom Down-Online The Eternal Now loading……】
【槌鍛冶士】によって新たに俺の機体へとインストールされたのは【Bottom Down-Online The Eternal】というタイトルのゲームだった。
前にルル様から与えられたものとタイトルの一部は違うものの、工程が同じだったのでおそらくはこの先に干渉するために必要なものなのだろう。
「その通りだ!!!
ワシが真に認めた者がこの封印大樹に触れることが条件となり、インストール出来るようになるのだ!!!
お前は既にワシの唯一無二の相棒だから、この封印大樹にさえ触れてくれれば問題なかったのだ!!!」
そんなことをあっさりと言い切る【槌鍛冶士】。
ルル様は深度がマスクデータの上昇値を含めて100を越えていることと、深淵種族の同胞になることを条件にインストールさせてくれたが【槌鍛冶士】はそんな条件すらもつけずに俺へと便宜を図ってくれたようだ。
アビスと同じ仕様なら、ログイン場所も天子王宮ではなくこの【封印の森ダンサムント】で行うことが出来るってことになる。
その認識で間違いないか?
「ガハハ!!!
合っているぞ!!!
プレイヤーとしてこの場所に到達したことで、再びこの地を訪れる時には針樹海を越える必要が無くなったのだ!!!
……それと、ゲーム運営プロデューサーの山伏権現からのメッセージを伝えることになっているが、聞くか???!!!」
正直、アビスをインストールした時に聞いたから不要だと思うが、その流用だろうが一応聞いておくか。
深度について触れていた部分がどう変わっているのか興味があるし。
「そういうことなら読み上げてやろう!!!
【どうも、ゲーム運営プロデューサーの山伏権現です。
まずは、ここまでこのゲームを楽しんでいただけたようで、プロデューサーとして感謝を!
これからもこのゲームをよろしくお願いします!
さて、この【Bottom Down-Online The Eternal】は【Bottom Down-Online 】のアップデートパッチのようなものです。
このアップデートパッチで【Bottom Down-Online The Eternal】は森人種族用のバージョンで、封印の森の踏破済み領域であれば好きなところからログインが可能になります。
それ以外にも、今現在封印の森の大樹の目の前までしかシステムで通行を許可しておりませんでしたが、本格的に探索が可能になります。
永きモノの真実解明と繁栄を目指して頑張ってください】……ということのようだ!!!
何か分からないことはあったか!!!???」
分からないことはいっぱいあるんだが……
特にこの中で気になったのは、森人種族専用のバージョンという点だ。
俺が持っている要素としては【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】【次元天子】【上位権限】しかない。
このどれかが森人に関係しているかと言われたらNOだろうよ。
それなのになんでエターナルのインストールが出来たんだろうか?
珍しくバグか?
「ガハハ!!!
そうではない!!!
色々と理由はあるが、分かりやすく言うならばワシの持つ【上位権限】でワシの鍛冶場に来たときから、あらかじめお前に森人のデータを被せておいたのだ!!!
ワシの【上位権限】は情報操作に長けたものだからこその荒業だったが何とかなったみたいだな!!!」
そんなハッカー染みたことをしれっとやってたのかよ……
権限の濫用って言われても知らないぞ?
「ワシが権限を濫用しているのは今さらだな!!!
【菜刀天子】の戦闘にユニーククエストを介さずに乱入した時点で濫用だぞ!!!
あの時は色々とペナルティを食らったが、すぐに死んだから全く問題なかったな!!!」
あの乱入は復活前提だったのか……
さっきから色々と事情をぶちまけてくれているが、そんなこと平然と笑いながら話すなよ!
俺にしては珍しく申し訳ない気分になってくるじゃないか……
「なに、気にすることはない!!!
あの時……そう、はじめて会ったあの時にワシはお前に救われたのだからな!!!
それからワシは、ワシの持てる全てをお前のために使うと決めている!!!」
あー、あれは偶然といえば偶然、気まぐれだった。
そんなに深刻に考えてくれなくてもいいんだが、それを言うのは野暮なものだろう。
俺がやるべきことは、これほどまでの俺のために尽くしてくれる【槌鍛冶士】の期待に全力で応えるだけだ!
とうとうここまで連れて来れたな!!!
【Bottom Down-Online The Eternal Now loading……】