830話 相棒との旅支度
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
【世界剣種】……【勅聖剣タイア】のことをルル様に報告したわけだが、他の【世界剣種】のことは全く分かっていないので振り出しに戻った気分になってくる。
……実際は一つ見つけたので進捗はあったのだが、俺の利益になっていないのでそうなってしまうのだ。
【世界剣種】の所在について知るために俺が向かうべき場所……そこは……
というわけでやってきました新緑都市アネイブルの拡張エリアにある【槌鍛冶士】の鍛冶場!
暑苦しい空気の中奥へと進んでいくと、そこには金属を叩いているガチムチのおっさんがいた。
「ガハハ!!!
よく来たな【包丁戦士】!!!
【戒焔剣レヴァ】は見事手に入ったようで何よりだ!!!」
あの場面で【槌鍛冶士】が決戦地に訪れていなかったら装備できずに【クシーリア】に回収されていたかもしれないから、半分くらいは【槌鍛冶士】のお陰なんだよな……
しかも、この鍛冶場から離れているから【上位権限】の行使をしたわけでもなく、ただ【槌鍛冶士】の技量だけで成し遂げたと考えるならお前こそあの場所ではMVPだったな。
流石は俺が認めた相棒なだけあるぞ!
「ガハハ!!!
嬉しいことをいってくれるじゃないか!!!
そう言ってくれるお前が相手だからこそ、ワシも仕事し甲斐があるというものだな!!!」
そう言って高らかに笑い声を上げる【槌鍛冶士】。
俺が【槌鍛冶士】を信頼しているのはかなり前からだから今さら感もあるが、こうやって都度口に出すことが俺たちの関係を強化することになるのだろう。
もはやルーティンみたいなところはある。
まあそんなことは置いておいて、【槌鍛冶士】は他の【世界剣種】について何か知っていることはないか?
今俺が所在を知っているのはリデちゃんが持っている【戒焔剣レヴァ】と【菜刀天子】が持っている【勅聖剣タイア】の2つだけだからな。
これら以外のことを教えてほしいところだ。
「【菜刀天子】が生きていたのか!!!
……さては事前に、その【勅聖剣タイア】に分体を宿していたな!!!???
ワシも【大深罪鉄林包丁】で似たようなことをしていたから、あやつも同じことを考えていたのだろう!!!
【包丁戦士】の様子からすると【勅聖剣タイア】は譲ってくれなかったようだが、それでもさらに別の【世界剣種】を探すのか!!!
……分かった、ワシも一肌脱いでやろう!!!」
【槌鍛冶士】はそう言うと鍛冶場の横に立て掛けてあったチュートリアル武器の槌や、アイテムを仕舞い込んである棚を漁り始めた。
おっ、何かくれるのか?
……っていう雰囲気じゃないな。
「これからワシが元々潜んでいたエリアに移動する準備をするぞ!!!
今日中に移動することは無理だが、そのために必要なものをこの鍛冶場から持ち出しておきたいからな!!!
何せこの鍛冶場……そして新緑都市アネイブルの拡張エリアから離れるとワシは【上位権限】やレイドボスに関する力は一切行使出来なくなるからな!!!
今もかなり制限されているが、これから向かう先はプレイヤーと同格の力しか発揮できないワシ単身では突破できないぞ!!!」
そんな危険な場所に行くのか……
レイドボスが生息している場所なら理解できるが、そこまで危ない場所となると深淵奈落くらいしか見当もつかない。
だが、【槌鍛冶士】が深淵奈落をわざわざ案内するとも思えないので、別の場所なのだろう。
それに加えて【槌鍛冶士】もレイドボスだったのだから、他のレイドボスたちのように専用のエリアがあるのは納得できるので特殊な場所に連れていかれるのは容易に想像できた。
「うーむ、これとこれは持っていきたいが重量が気になるな!!!
いや、運搬用の装置を使えば問題ないか!!!」
【槌鍛冶士】はそんな物騒なことを言いながら三メートルほどある盾や人の大きさほどある大剣など、これから決戦に行くと錯覚してしまうものばかり取り出してきた。
おいおい、これから俺は紛争地帯にでも連れていかれるのかよ……
そんなことを思いながらも、俺は【槌鍛冶士】の旅支度を手伝うのだった……
ガハハ!!!
久々に血が滾ってきたぞ!!!
【Bottom Down-Online Now loading……】