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826話 新たなる【世界剣種】

 「話は変わりますが、劣化天子や底辺種族たち、それに【ミューン】は【誓言の歪曲迷宮】に何をしに来ましたか?

 プレイヤーだけならば単にダンジョンアタックをしていると思ったでしょうが、わざわざ【ミューン】まで同行させているのならば話は別です。

 理由がなければ【ミューン】が付き添わないでしょう」


 その通り。

 俺たちがこのダンジョンを攻略しようとしたのは【世界剣種】を探すためだ。

 このダンジョンにあるっていう噂を聞いてやって来たわけだ。

 せっかく新たなグランドクエストが進行したんだからその攻略に向かうのはプレイヤーの定めというものだぞ。


 「……【世界剣種】ですか。

 攻略に前向きということには感心しましたが、このダンジョンにあると聞いていたであろう【世界剣種】については諦めてください」


 「なっ、なんでッスか!!

 俺っちだって格好いい【失伝秘具】の一つくらい欲しいッス!!」


 【バットシーフ】後輩は憤慨しているが、【菜刀天子】は別に嫌がらせをするためにそんなことをいったわけではないだろう。


 だが、それでも諦めさせたいということは……

 【菜刀天子】、お前がこの【誓言の歪曲迷宮】に安置した【世界剣種】を回収し直したんだな!?

 そして今の所有権は【菜刀天子】にある……そんなところだろう!


 俺は【菜刀天子】に指を突きつけてそう指摘した。

 すると、【菜刀天子】は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして俺を凝視してきた。

 ……なんだよぉ?



 「……驚きました。

 劣化天子にしては察しがいいですね?

 その通り、次元天子として敗北した後真っ先に回収しに来ました。

 ですので、もし手に入れるのであればこの場で私を倒すかそれ相応の対価を支払ってもらわないと許可できません。

 この【勅聖剣タイア】は唯一無二の特級戦力となり得る今の私の切り札ですから。

 聖獣たちを武器として扱えればその必要もありませんでしたが、今あの力は扱えないのでやむを得ないのですよ」


 「【勅聖剣タイア】?

 それが【菜刀天子】が持っている【世界剣種】の名前ッスか」


 【勅聖剣タイア】か。

 ようやく二本目の【世界剣種】の名前が判明したな。

 そして、【菜刀天子】が腰に提げている鞘に納められているものがそれなのだろう。

 手には中華包丁を持ったままであるが、それは俺のチュートリアル武器と同じ扱いであって【勅聖剣タイア】はいざという時の切り札なんだろう。

 【戒焔剣レヴァ】もかなりの高出力の【失伝秘具】だったから、同様に【勅聖剣タイア】も消耗も激しいのだろう。


 ……まあ、プレイヤーレベルのスペックで扱いきれないのはだいたい予想できてるけど。


 「それでどうしますか?

 挑んでくるというのであれば受けてたちますけど」


 【菜刀天子】は余裕綽々といった表情を浮かべて俺たちを煽ってきた。

 どうせこのまま戻ってダンジョンに挑んでもその先に【世界剣種】がないのは分かっているので、死んだとしても痛くはないが……


 「フェイちゃん、せっかくの機会だから【勅聖剣タイア】の性能を見届けてもいいんじゃないかな?

 情報は多いに越したことはないからね。

 大丈夫、フェイちゃんは俺が守るさ!」


 腕を組んだまま黙り込んでいた【フランベルジェナイト】が俺にそんな提案をしてきた。

 【フランベルジェナイト】にしては珍しく挑戦的な提案だ。

 ……生前の宿敵である【菜刀天子】が相手なのが影響しているんだろう。


 

 「そうッスね!

 【菜刀天子】に一泡吹かせてやるッス!」


 【バットシーフ】後輩も同じ意見のようだ。

 こいつは【裏の人脈】に情報を持ち帰りたいという想いがあるに違いない。

 せっかくの新情報なら多く持ち帰った方が喜ばれるだろうし。



 「……そうですか。

 相変わらず底辺種族たちは身の程を知らないようですね。

 一度私を倒した程度で調子に乗らないで、下さい!

 では、行きますよ」





 【Raid Battle!】


 【空虚なる草原の黄麟児】


 【???】


 【???】【???】【???】



 【条件未達成のため開示拒否】


 【条件未達成のため開示拒否】


 【聖獣であるが故に】


 【深淵と敵対する】


 【条件未達成のため開示拒否】


 【条件未達成のため開示拒否】


 【条件未達成のため開示拒否】


 【条件未達成のため開示拒否】


 【レイドバトルを開始します】




 おっ、レイドクエスト名も変わったな!?

 【空虚なる草原の黄麟児】……ね?

 色々と考えたいことはあるが、とりあえず後回しだ!


 「その必要はありません。

 私の絶対的な威光が今でも変化していないということを証明するために一瞬で終わらせてあげましょう。

 【勅聖剣タイア】……抜剣!」


 【菜刀天子】は短くなった四肢を使い、鞘から剣を引き抜いていく。

 その刀身を見てやろうと思い注視したその瞬間……





 剣から剣気が吹き出し、猛獣の咆哮のような音の中、俺たちは光の粒子となり死に戻りすることとなった……

 まさか剣の姿を拝む前に倒されてしまうなんて予想外だったぞ……









 当然の結果ですね。

 私がそう易々と勝ちを譲ることはしませんよ。

 

 【Bottom Down-Online Now loading……】 

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