表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

820/2205

820話 二の打ち要らず

 さて、そんなこんなで第一階層を突破し、第二階層も同じ敵が彷徨いているだけだったので【ミューン】が蹴散らしてくれた。


 俺たちは、たまに討ち漏らした傀儡天使を横から殴ったり切り裂いたりするくらいの役割しか果たしていない。

 非常に楽な役回りだな。

 

 「こんなに楽に三階層に着いちゃっていいんッスかね?

 俺っちが【裏の人脈】の幹部メンバー四人で三階層に来たときは既にパーティーが半壊してたッスよ!

 あの天使たちって戦っている最中に集まってくる習性があるから、倒せないと泥沼の戦いを強いられるんッス!」


 「俺とフェイちゃんで挑んだときももう少し手数があれば楽に進めるだろうと思っていたけど、まさか無傷でここまで進めるなんて思いもしなかったさ。

 フェイちゃんもそう思うよね?」


 【は、はい……】





 【……前に挑んだときは【フランベルジェナイト】さんは実質一人で突破していたので、かなり苦戦していましたよ】


 【フェイ】は俺だけにこそっと教えてくれた。

 あの天使たちそんなに厄介な性質を持っていたのかよ……

 戦っているだけで敵モンスターが続々と集まってくるのは厄介すぎるぞ!


 前回は【菜刀天子】と【ミューン】が、今回は【ミューン】がほぼワンパンで倒してくれているので気がつかなかった。

 ……というより、気づく暇すらなかったというのが正確な表現だな。


 「……ここから、あたらしくなる。

 べつのてき、でてくる……」


 「あー、そういえばそうッスね……

 【裏の人脈】で挑んだときはその別の敵にボロボロにやられてここから先に一回も進めなかったッスよ……

 うげっ、さっそく出てきたッス!!」


 【バットシーフ】後輩がうめき声を上げながら見た先には、デフォルメされた豚に翼が生えたようなモンスターがプカプカと飛んでいた。

 はじめて見たときには、やけにファンシーな見た目なモンスターが出てくるな……と思った記憶がある。

 そして久しぶりに見たが、やはり今でも同じ感想を抱いてしまった。


 だが、その見た目で侮っていけないというのはここにいる誰もが認識している。

 ……【バットシーフ】後輩なんて半分怯えてるし。




 ファンシーな豚は俺たちを発見したかと思うと、息を吸い込み身体の大きさが倍くらいになるまで膨らんだあと口を開放した!


 その開放された口は急激な熱気を帯はじめ、ファンシーな豚の体内から放出された息に着火し、まるで炎が吐き出されたようになった。

 ……そう、この豚は炎のブレスを吐き出してくるのだ!



 「俺は全く問題ないけど、フェイちゃんの繊細な身体に炎が当てさせるわけにはいかない!」


 【フランベルジェナイト】は俺に迫ってきていた炎をチュートリアル武器であるフランベルジェで切り裂いていく。

 これが姫プっ!

 俺がこんな感じで戦力としてではなく、女として守られるのは【フランベルジェナイト】と組んでいる時くらいだろう。

 ……ちょっとだけいい気分だ。


 そして、【フランベルジェナイト】が守ってくれたのは素直に助かる。

 何故なら俺は炎耐性が皆無だからな!

 かすっただけでも大ダメージになってしまう。


 「……交给我吧。

 まかせて、すぐに、たおす。

 ……【獣王無尽】!」


 スキルを発動した【ミューン】から黄色いオーラが溢れるように出始めた。

 そしてそのまま全身をオーラで包みつつも、特に手に着けた鉤爪へと重点的に力を這わせているようだ。

 これは猫獣人系統の種族が使える身体強化スキルだな!


 そのオーラを纏ったままファンシーな豚に殴りかかっていき鉤爪が顔にめり込んだかと思うと、そのままファンシーな豚は一直線に壁に叩きつけられていった。

 

 「……钢拳无二打。

 いっぱつで、じゅうぶん」


 【ミューン】の強烈な一撃を受けたファンシーな豚はそのまま消え去っていったようだ。

 


 「プレイヤーに人権のないゲームって言われてるッスけど、レイドボスが味方ならイージーゲームッスね!

 このゲームはレイドボス優遇ッスから……」


 「……たしかにそうだね。

 俺もそう思うさ」


 【バットシーフ】後輩と【フランベルジェナイト】が同じ意見で共感しているが、その実考えていることは違うだろう。

 【バットシーフ】後輩は自分たちプレイヤーの置かれた境遇について嘆いている面もあるのに対して、【フランベルジェナイト】はレイドボスから転生した存在という立場から今ある生に染々と感謝している様子だ。


 ちなみに、【バットシーフ】後輩は【フランベルジェナイト】が【ガルザヴォーク】の転生体であるという事実を知らないのでこの感覚の違いが是正されることはないだろう。

 あえてバラすようなことでもないし、これはスルーしておいてやろう。



 【もう一人の私にしては優しいんですね?

 ……もしかして【フランベルジェナイト】さんに惚れたりしてません?】


 バカを言うな!

 確かに【フランベルジェナイト】はイケメンだが、俺の好みではない。

 お前もそれは知ってるんじゃないか?


 【……確かにそうですね。

 私は生まれた要因からして【フランベルジェナイト】さんを好きになるような性質になりましたけど、もう一人の私は違いますからね。

 野暮なことを聞きました】


 そう、分かってくれたらそれでいい。

 俺はプレイヤーキラーだからな、守ってくれる系の男だと多分歯車が噛み合わないだろうよ。





 ……。


 【Bottom Down-Online Now loading……】


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ