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817話 一心同体の助っ人

 【Raid Battle!】


 【包丁戦士】


 【包丁を冠する君主】


【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】

【サブ】ー【次元天子】【上位権限】



 【聖獣を担うが故に】


 【深淵へ誘い】


 【聖邪の境界を流転させる】


 【会うは別れの始め】


 【合わせ物は離れ物】


 【産声は死の始まり】


 【この世の栄誉は去ってゆく】


 【故に永遠なるものなど存在しない】


 【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】


 【ああ……この世は無情である】




 【ワールドアナウンス】


 【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】


 【レイドバトルを開始します】



 はい、今日も元気にログイン!

 昨日は【コラテラルダメージ】から【誓言の歪曲迷宮】に連れていくメンバーを選出したな。

 だが、【バットシーフ】後輩と【フランベルジェナイト】というメンバーとなり、あと一人足りないのだ。


 そして、純粋な戦力として考えても特級戦力足り得る【フランベルジェナイト】はともかく、【バットシーフ】後輩は窃盗技術こそ神がかりしているが、戦闘そのものの仕上がり具合では少し頼りないのも事実。

 

 そこで最後のメンバーには戦闘に自信のあるやつを引き入れようと思う。







 というわけでやってきました新緑都市アネイブルにある闘技場!

 ここにはあいつがいるはずだ!





 ……居ないな?

 しばらく戦っている連中や観戦している連中の中から探し出そうとしていたが、全く見当たらなかった。

 おかしいな、ここにいると思い込んでいたが想定外だ。


 それなら別の場所を探すか。







 ……ここにもいない。

 俺の左右で揺れる炎が今の俺の寂しい気持ちを暖めてくれているように感じられるほどだ。

 闘技場にもここにも居ないとなると何処にいるんだ……!?

 正直全く見当もつかない。

 


 ……こともないか。

 もしかするとあそこか?

 あの後から、あいつがこれまでそこに行ったことを見たこと無いが可能性としてはあり得る。

 どうせ見つからないのだ、折角だし気分転換も兼ねて見に行こう!






 そうして俺がたどり着いたのは、新緑都市アネイブルの中心からは少しだけ離れたところだ。

 ここにも樹木をくり貫いて出来た建物が建ち並んでいるが、プレイヤーの手が入っているところは少ない。

 それでもあの時と比べるとかなり整備されてきていると思う。

 あの数々の激戦の跡がほとんど残っていないからな!



 そんな風景に溶け込むように佇んでいるやつを見つけた。

 何を考えているのか分からない無表情な顔で木にもたれかかりながら正面を見つめているようだった。

 そいつの姿を簡単に言ってしまうのならば、紫色のチャイナドレスを着ている無表情な美少女だ。

 頭にお団子2つ着けている典型的なチャイナ娘って感じだな。

 

 そうこいつの名前は……

 


 おーい、【ミューン】こんなところで何をしているんだ?

 闘技場にも礼拝所にも居ないから探していたが、まさかこんなところにいるとはな?


 「……ここは、おもいでのばしょ。

 【包丁戦士】とたくさんあそんだ……」


 あの地獄の日々を遊んだと言い表されると複雑な気分だな……

 あの頃はスキルもabilityも一切持っていない状態でお前みたいな規格外の存在と戦わされていたんだからな。

 今でもレイドボスは強敵だが、ボトムダウンオンラインの仕様が分かってきてからは攻略方法も見えてくるようになった。

 そうなる前に嫌というほど打ちのめされた相手がお前だからな、よく言うよ。


 「……?

 【包丁戦士】は、たのしくなかった?」


 ……まあ、俺に限った話をするならそれなりに楽しませてはもらったな。

 俺がこの次元で一番お前に固執したプレイヤーだと断言出来るくらいには!

 今ではお前のせいで西のトッププレイヤーなんて呼ばれているんだからな。

 

 「……よかった?」


 良かったことも悪かったこともあるが、なんだかんだ良かったことの方が多いような気もする。


 まあ、そんな感傷に浸るのは一旦置いておこうか。

 お前をわざわざ探しだしたのは【誓言の歪曲迷宮】に眠ると言われている【世界剣種】を手に入れるためだ。

 【ミューン】の行動範囲が制限されているのは知っているが、あのダンジョンには一度【菜刀天子】と【ミューン】そして俺の三人で挑んだことがあった。

 ……つまり、お前の行動範囲内ということは間違いないと思ってな。


 「……それは、つまり?」


 お前を攻略メンバーに加えようと思っているわけだ。

 どうせ暇してたんだろ?

 久しぶりに俺と出かけるのも悪い話じゃないんじゃないか?



 俺がそう提案すると、無表情な顔が少しだけ微笑んだように思えた。

 だがその直後、寂しげな顔をして口を開いた。


 「……でも、ゲートキーパーに、こうげき、できない。

 それは、まえにもせつめいした。

 それでも、いい……?」


 いつも無表情ながら強気な発言を繰り返していた【ミューン】にしては珍しく弱気だな。

 だが、それは俺も承知の上でお前を誘っているんだ。

 ゲートキーパーは俺とその仲間が排除してやろう。

 その代わり、道中ではお前に思いっきり暴れてもらうからな!


 「……可以。

 わかった、それなら、てつだう……

 たたかい、たのしみ!」


 【ミューン】は両手をグッと握り締めて力強く気合いを見せてくれたが、表情が変わらないせいか分かりにくい……

 

 「……だけど、きをつけて。

 いちばんおくには、あいつが、いる……

 なかなか、てごわい……」


 ……ふむ?

 【ミューン】が手強いと言うほどの相手がいるのか……

 嫌な予感しかしないが、ここで止まるわけにはいかないだろう。

 




 ……。


 【Bottom Down-Online Now loading……】 

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