815話 陰陽献策
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
昨日はログインせずに掲示板をぼーっと眺めていたが、かけた時間の割にはそんなに実りのある情報は得られなかったぞ……
そんなわけで新たな情報を得るべく、今日は山間部エリアにいるレイドボス【タウラノ】に会いに来た!
今日はいつも通りの裏面なので俺以外のプレイヤーは一切存在しない特殊な場所だ。
【Raid Battle!】
【下克上の陰陽妖狐】
【???】
【狐獣人(妖怪)】【陰陽師】【妖怪総大将】
【物事の陰陽を見届けるために】
【冒険者を教育する】
【聖獣であるが故に】
【深淵と敵対する】
【しかし君臨する者を裁定する定めにあるが故に】
【下克上を志す】
【妖しき者共を纏め上げ】
【己のミチを拓き征く】
【条件未達成のため開示拒否】
【レイドバトルを開始します】
「また来たでおじゃるな!
どうせ妾をおちょくりに来たでおじゃろう?
【包丁戦士】のやることはだいたい分かってきたでおじゃるよ!」
まあほとんど正解だな。
【タウラノ】はなんとなくおちょくりやすいからな。
レイドボスで俺よりも強いはずなのに、ついつい弄ってしまう。
ルル様が小者狐と呼ぶだけあって、弄られ体質なんだろう。
聖獣たちの中でも窓際族として立場が強くなかったのもその影響に違いない。
「その話はもういいでおじゃるよ!
……それに、今この次元で妾よりも活発に活動している聖獣は居ないから、妾が一番強いのでおじゃる!」
上の連中が居なくなって繰り上がりで……だけどな?
お前は自分の力を強めようとはしないのか?
【ミューン】は闘技場で鍛えてるし、【クシーリア】は最近一瞬だけレイドボスとしての格を取り戻した。
【オメガンド】はギルドマスターとして活動しながら渓谷の復興で自身の勢力を再生しようとしている。
【ウプシロン】は……全く知らん、何処で何をやっているんだよ!
「一人で勝手に怒り始めないでほしいでおじゃるよ……
驚きで妾の核がビクビクしてしまうのおじゃる……」
心臓じゃなくて核か……
レイドボス特有の表現だから一瞬だけ困惑してしまったが、なんとなく伝わってきた。
心臓がバクバクするのと同じことだろうな。
「そういうことになるでおじゃるな。
……それで、本当に用事が無いのでおじゃるか?」
うーん、【タウラノ】が知っているか不明だが【世界剣種】について聞いておくか。
聖獣の窓際族だったから、そういう大きな諍いに関係ありそうな知識はあまり知らなさそうだけど。
「妾のことを軽く見すぎでおじゃるよ!
これでも下克上を妾だけで決行しようと身内の情報は密かに集めていたのでおじゃるよ!
妾は式神で小回りがきくから……」
【タウラノ】はどこか哀愁が漂う表情を浮かべた。
過去のことが脳裏によぎったのだろう。
立場は弱かっただろうが、それでも聖獣たちとの良い思い出もあったはずだからな。
思うことは山ほどあるのだろう。
「それで過去に……本当に過去でおじゃるが【世界剣種】について聞いたことがあるでおじゃるよ!
【クシーリア】が【戒焔剣レヴァ】を使っていたのはお主も知っているから割愛するでおじゃるが……」
まあ、グランドアナウンスで流れていただろうし、どうせ式神であのユニーククエストの様子も見ていたのだろう。
今さら覗き見されてたくらいで目くじらをたてるほどではないが、いい気分ではないな。
……だがそんな前置きをするくらいだ、別の【世界剣種】の情報を持っていると思っていいんだな?
「とは言っても【菜刀天子】がそれを使ったことは妾は見たことがないでおじゃるからなぁ……
ただ、【オメガンド】と【菜刀天子】が聖獣深淵対戦の時に保管場所について話していたのは聞いたことあるでおじゃる」
それはかなり重要な情報じゃないか?
なんで自分で手に入れようとしなかったんだ?
「物理的に入れない場所に隠されていたのでおじゃるよ!
妾も本当は【世界剣種】を使って無双したかった……」
そんなところにあるのか……
相当変なところにあるってことだよな?
「妾は入ることが出来ないでおじゃるが、その反面お主は【菜刀天子】と一緒に入ったことがあるはずでおじゃるよ?
【次元天子】以外の【天子】の特性を手に入れていることがその証明でおじゃる」
【天子】の特性を手に入れていることがその証明になる場所……!?
その条件に当てはまる場所の心当たりはある。
というより一つしか候補がないと言ってもいいだろう。
その場所の名前は……
「【誓言の歪曲迷宮】でおじゃる!
あそこはプレイヤーか【菜刀天子】が許可した存在しか入れないのでおじゃるから、妾は入れなかったのでおじゃる」
あの高難易度ダンジョンだなっ!?
【オメガンド】の冒険者ギルド経由で入ることが出来るダンジョンの何倍も攻略難易度が高いとされている場所でもある。
【菜刀天子】曰く、エンドコンテンツの一つであるということだったが、天子王宮に入る許可証を持っているプレイヤーたちがこれまで挑み続けて全くクリア出来ていないものだ。
プレイヤーでの最高は5階層までらしい。
俺は【菜刀天子】と【ミューン】に道中任せていたからゲートキーパー戦までリソースを温存できていたが、あの戦いを消耗した状態でやりたいとは思えない。
「まあ、【誓言の歪曲迷宮】のどこにあるのかしらないし、【誓言の歪曲迷宮】に今もあるとは限らないでおじゃるが……
妾が今出せる情報はここまででおじゃる!
この情報をどう使うかはお主に任せるでおじゃるよ~」
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