81話 第二試合とability考察
【イベントバトルリザルト】
【あなたの負けです】
【代表戦順位8位】
【報酬はイベント終了後配布されます】
【今しばらくお待ちください】
はい、というわけで【新緑都市アネイブル】闘技場代表の俺【包丁戦士】は8位でイベントを終了することとなったのだった。
くそう、まさかキャラクタースペックの差で押し負ける展開になるなんて戦闘前には思いもしなかったぞ!
だが、ただキャラクタースペックの差で負けただけではなく、俺自身の判断ミスやスキルの選択、戦闘スタイルが受け身だったなど終わってみてから反省すべき点がうようよと出てくる。
【新緑都市アネイブル】闘技場代表の俺【包丁戦士】は負けてしまったが、これで終わりというわけではない。
第一の俺が破れたとしても第二の俺がいる!
具体的に言うのなら、【深淵奈落】闘技場代表の俺はまだ一回戦すらやってない。
つまり、これから勝ち残るチャンスは残されているというわけだな。
そのためにも他のプレイヤーの戦闘は見逃さないで確認しておかないとな。
控え室に置かれているディスプレイには一回戦第二試合である
【無限湖沼ルルラシア】代表【釣竿剣士】VS山間部エリア代表【ブーメラン冒険者】の対戦映像が映し出されている。
【釣竿剣士】の多彩な手札から繰り出されるさまざまな技に翻弄されている【ブーメラン冒険者】という構図のようだ。
闘技場の床を釣竿で砕きながらブーメラン使いの男の娘へ接近する花飾りの釣竿使いという盤面で、【ブーメラン冒険者】はチュートリアル武器であるブーメランを投げるのではなく手に持って守りに使った。
あの床を砕いている釣竿の技は釣竿一刀流【石砕き】だろう。
とんでもリアルスキルである釣竿一刀流の中でもフィールド破壊に特化した技のようで、その名のごとく石を軽々と砕いてしまうもの……らしい。
俺も間近で何度か見たことがあるが、何故あの動きでそこまで破壊力が出るのか分からなかった。
【ブーメラン冒険者】は一度鍔迫り合いから逃れるためバックステップで離れると、そこからブーメランを投擲した。
そのブーメランを【釣竿剣士】は釣竿をトーチトワリングの要領で振り回し弾いたが、ブーメランはその場で落とされることなく投擲した者の手元へ吸い込まれるように戻っていった。
なんか不自然な動きだなあれ。
いや、【釣竿剣士】の使った技は先程のように釣竿一刀流というリアルスキルの動きっていうのは知っている。
あれは釣竿一刀流【渦潮】だ。
遠距離攻撃に対して使っている光景をよく見る気がする技で、ジェーの極太レーザーすら細切れにしてしまう恐るべき防御性能を持っているのだ。
俺が不自然に思ったのは【ブーメラン冒険者】の投げたブーメランの動きが不自然だったってことだ。
攻撃を弾かれたブーメランがごく当たり前のように【ブーメラン冒険者】の手元に戻っていたが、現実の法則だとそのまま地面に打ち落とされているはずだ。
これはまたとんでもリアルスキルか、このゲームにあるまだ知られていないスキルか……?
いや、abilityって可能性もあるよな。
というかそもそもabilityってなんなんだろう。
俺以外のability持ちに聞いてもいまいち共通するものが見えてこない。
とは言ってもability持ちは俺の知っている限り
【釣竿剣士】の【現界超技術】
【包丁戦士】の【会者定離】
【短剣探険者】の【天手古舞】
だけだし、【短剣探険者】の【天手古舞】についてはスキルと併用して使っていたみたいだからどんな効果なのかよく分からなかった。
俺【包丁戦士】の【会者定離】はプレイヤーとのフレンド登録が全て解除され、プレイヤーとフレンド登録が出来なくなるというデメリットまみれなabilityだ。
メリットみたいなのは今のところわかる範囲だと、通常のフレンドタブが使えない代わりに、一心同体タブという意味不明なフレンド欄ができたことと、発動条件と効果が分からないバフのようなものがあるってことくらいか。
自分で纏めてて思ったが、色々と酷いなこのability。
そして、今戦っている【釣竿剣士】の【現界超技術】はとんでもリアルスキルである釣竿一刀流をゲーム内でも使えるようになるというものだ。
あの多彩な手札をゲームに持ち込めるのはかなりのメリットだろう。
だが、このプレイヤーに人権のないどん底ゲームでそんなメリットだけのabilityを実装するなんて考えられるだろうか?
いや、あり得ないだろう。
そうじゃないと俺のabilityなんてどう考えてもハズレとしか考えられなくなってしまう、それは俺の気持ち的にも嫌だ。
まあ、【釣竿剣士】の【現界超技術】のデメリットは本人から新緑都市アネイブルレイドボス攻略の時に聞いているから知っている。
この【ブーメラン冒険者】との戦いでも何度もそのデメリットは発動しているぞ。
【釣竿剣士】が釣竿をケースに一度しまい、踏み込むような姿勢で【ブーメラン冒険者】に抜刀術を繰り出した。
あれは釣竿一刀流【抜刀斬】だ。
鋭い斬撃を繰り出せる技で、俺とのスキルチェイン実験の時にも使っていたが、この技を使うタイミングをあまり見たことがない。
ケースから解き放たれた釣竿の動きは、釣竿であるのにも関わらずまさに刀を体現したかのような全てを断つことができるものだろう。
その動きは確実に相手を仕留めうるものだと誰もが思うものだったが……
実際には、少々のダメージを与えるに留まっていた。
そう、これがability【現界超技術】のデメリットだ。
この【釣竿剣士】の攻撃ダメージがレイドボスやプレイヤーに対してかなり低減されてしまうという戦闘系統のプレイヤーにとっても死活問題になりうるものだ。
俺のようなプレイヤーキラーにも死活問題だ、他の【モブ】とかキルできなくなっちゃうからな!
めっちゃ困る!
だが、【釣竿剣士】は釣竿一刀流【抜刀斬】で作り出した隙でさらなる追撃をかけて雨のような連撃を加えて見事勝利を納めることに成功したようだった。
そう、戦闘系統のプレイヤーなら困るデメリットだが、こいつはあくまでも別系統プレイヤーを自負している。
この程度のデメリットは屁でもないんだろう。
見事勝利を納めた【釣竿剣士】がにこりと笑い【ブーメラン冒険者】に対して何かを呟いたようだった。
声が小さかったので何を言ったのかは聞こえなかったが、ディスプレイ越しでも、その時の口の動きを見ただけで【釣竿剣士】が何を言ったのかはすぐにわかった。
……当然ですよ、生産プレイヤーなら。
当然ですね、トッププレイヤーなら。
ん?トッププレイヤーなのに初戦で敗北した底辺種族がいるようですね??
【Bottom Down-Online Now loading……】
アンケート第二弾です。
是非コメントお願いします。
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/788051/blogkey/2491052/