806話 鉱石の功績
【まずは小手調べからいく……!】
【【強欲】だったり、【強欲】じゃなかったりする……】
【大罪魔】がそう呟くと、髪の色が金髪ポニーテールになり全身が鎧に覆われていき、頭にはヘッドライト付きのヘルメットが装着された。
そして、その小さな手にはとても収まらないピッケルが握られていた。
これはピッケル次元のMVPプレイヤー……【石動故智】の姿を模したものだな!
【大罪魔】は俺が【暴食】の権能で集めてきた力を使って別次元のMVPプレイヤーたちの力を行使することが出来るのだ!
「【石動故智】さんの姿ですね……
前に次元戦争で姿を少し見たことがあるのでわかりました。
つまり、ドワーフの力も使ってくるということです!
【クシーリア】、気をつけてください」
【検証班長】は【大罪魔】の変身した姿を見て【クシーリア】へと注意を促したようだ。
【検証班長】自身が【石動故智】と戦ったわけではないが、これまで次元戦争が終わる度に俺が情報を【検証班長】へと報告してきたからどのような力を使ってくるのかおおよそ見当がついているんだろうな。
「誰に警告しているのかしら?
この新たな美しさを身につけた私に敵はないわ!
……たとえ罪を司る悪魔が相手であってもねっ!
私の美しき眼で浄化してあげるわ、【彩鳥炎眼】っ!」
先手を打ったのは極彩色の大怪鳥と化した【クシーリア】だ。
その燃えるような眼が輝くと、離れているのにも関わらず距離を無視して【大罪魔】の身体に直接炎を発生させてきた。
このスキルは望遠鏡次元のMVPプレイヤー……【牛乳パフェ】が使ってきていたな。
たしか火傷状態を相手に発生させて継続ダメージを与えるデバフ魔眼スキルだったはずだが、レイドボスが使えば炎そのものを相手の身体に植え付けることが出来るのか……
厄介すぎる……
【この炎……鬱陶しかったり鬱陶しくなかったりする……】
【スキル発動、【紅石鉱山】】
【大罪魔】が【クシーリア】に対抗するようにスキル発動させてピッケルを赤色に発光させると、力の流れる場所を掘り当てるかの如くそのまま地面に振り下ろし突き刺した。
【大罪魔】が発動したスキル【紅石鉱山】は赤色に光ったピッケルを地面に振り下ろし、そこからルビーのような鉱石が生え始め、敵に向かって伸びていくというものだった。
上空を飛んでいるはずの【クシーリア】を突き刺さんばかりの勢いで赤色の鉱石が地面から伸びていき、【クシーリア】をじわじわと追い詰めていく。
そして、逃げ場のなくなった【クシーリア】の翼へと突き刺さったのだった!
鉱石の突き刺さった【クシーリア】の翼は穴が空いてしまったようで……
「わ、私の美しき美炎の翼がっ!?
……許さないわっ!!」
【クシーリア】は自らの美しさを瀆された怒りで全身から炎を更に滾らせたようだ。
そして、穴が空いたはずの翼も滾る炎によって再生されていく……
なんだあの回復力!?
【クシーリア】は【素早さ】がウリだったはずだ。
なのに【回復力】が桁違いだ。
こんなのどうやって倒せっていうんだ!?
こんな奥の手を残していたからこそ【上位権限】レイドボスである【大罪魔】と対になる形でユニーククエストを発令したんだろうが、見事に騙されてしまったぞ……
「そう、この【回復力】と【素早さ】があれば負ける気はしないけれど……
どうやって勝ちに持ち込むかは機が熟するかどうか次第ね!」
「どうやらボクの作戦通りに事が進みつつあるようですね。
このままボクたちのペースに引き込ませてもらいますよ!」
【クシーリア】と【検証班長】がそれぞれ意気揚々としているが、【クシーリア】はともかく【検証班長】は動きが遅くなり機能が減った【邪神像】で【短弓射手】を幽閉しているくらいでそれ以上の動きはない。
あくまでも【検証班長】は有力プレイヤーを戦線から一時的に除外する方向で動く方針なんだろうか。
【検証班長】の弱めの腕っぷしで【短弓射手】を封殺出来るのなら上等な切り札の使い方ではあるが、些か消極的なようにも思える。
【回復されるなら何度でも攻撃するの!】
【スキル発動、【砲刃矢石】!】
【大罪魔】が新たなスキル【砲刃矢石】を発動すると、俺の視界にあるスキル【紅石鉱山】で生み出した赤色の鉱石が矢や砲弾、刀剣へと姿を変え始めた。
そして、形を変えた鉱石武器たちが【クシーリア】へと向かって次々に飛んでいった。
この隙に俺も追撃しようと思ったのだが……
まるで豪雨のごとき勢いで武器が【クシーリア】へと降り注いでいくため、俺たちでは近寄ることすらできないのだ!
【上位権限】レイドボスとしての力を発揮しているだけあって、本家の【石動故智】よりも大迫力の攻撃となっているからな!
「ウググググヌ……っ!!
やってくれたわねこの醜悪な悪魔め!!」
【クシーリア】の身体は再度ボロボロになったようだ。
しかも、今回は翼だけではなく全身がダメージを負っている。
……だがそれでも圧倒的回復力によって身体が復元されていってしまった。
なんという生命力だ……
ん?生命……?
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