800話 竜の群れ
「風船偽竜をあっちに回さないといけなくなったのは痛手だなwww
せっかくの手数が互角になってしまったンゴwww
【包丁戦士】にモンスターをテイムする甲斐性があるなんて思わなかったぞwww」
失礼な!
俺だって女だからな、母性愛的な意味で我が子のように愛情を持って接しているつもりだ。
むしろ積極的に戦闘に連れ出さないから過保護じゃないかと思ってしまうくらいなんだが?
「……言われてみるとそうンゴwww
いつからテイムしていたか知らないがこれまで見せなかったってことは過保護って言っても間違いないwww
んんっ、これは【包丁戦士】像の解釈違いwww」
そんな厄介オタクみたいなこと言われても困るんだが……
「流石に戦闘力は【包丁戦士】のやつの方が優勢みたいだが、オレの風船偽竜はあくまでもチュートリアル武器だwww
スキルの効果が切れるまで絶対に負けないンゴwww
このまま足止めさせてもらうぞwww」
あいにく、俺も【カイ=フジン】をお前にぶつけるつもりはないからそれでちょうどいい。
俺とお前の一騎討ちにケチさえつかなければな。
下を見てみろ、どうやら【虫眼鏡踊子】の舞も【短弓射手】に妨害されているらしいぞ?
「ちょwww
【トランポリン守兵】負けてるじゃんwww
あのおっさん強すぎwww」
【短弓射手】は勝ったようだが、リデちゃんは【戒焔剣レヴァ】奪還作戦のためにこの場は一度撤退したようだ。
【戒焔剣レヴァ】さえ手に入れば後からリデちゃんに渡せば問題ないが、手に入れた瞬間にその場に居てくれた方がやりやすいからな。
賢明な判断だろう。
「本当に一騎討ちになっちまったぞwww」
【風船飛行士】は俺の【魚尾砲撃】による極太レーザーを【刃状風竜】で切り裂きながらそう嘆き始めた。
今の俺の力と【風船飛行士】の力は拮抗しているからな。
この状況で援軍が来る可能性が無くなったのなら、より緊張感のある戦いになるからな。
【風船飛行士】はそういった局面が苦手なのだろう。
俺は好きだぞ、そういう戦いはな。
プレイヤーをキル出来る機会があればどこだって駆けつけてやるさ!
緊張感なんてなんのそのってな!
「やっぱり狂人でワロタwww
プレイヤーを倒しても何のメリットも無いのにプレイヤーキラーなんてやってるから、【包丁戦士】が狂人ってのは周知の事実だがwww
怖wすwぎw
だけどこのままだと負けそうかwww
こうなりゃ面白いものを見せてやるよwww
スキル発動!【青龍偃月】www」
【風船飛行士】は俺に対抗すべく新たなスキルを使ってきた。
そうして現れたのは青龍偃月刀だった。
青龍偃月刀は長い柄の先に湾曲した刃を取り付けたもので、刃は幅広で大きくなっているものだ。
柄の長さは刃の大きさに対してやや短めになっているというのが特徴で、片手で使うことを考慮してこの長さになっているらしい。
【風船飛行士】はその青龍偃月刀を握るのではなく、宙に浮かせて操作している。
風船偽竜をあの精度で操作できる【風船飛行士】の並列思考能力あってこそ出来る芸当だな。
聖剣次元のMVPプレイヤーの【ランゼルート】も同じスキルを使って似たようなことをしてきたが、あいつは【上位権限】AI……つまり高性能な演算機のようなものだから比較対象としてはスペックが違いすぎる。
【ランゼルート】は出来て当然だったのだ。
むしろ、それに近い形で動かせている【風船飛行士】が異様だろう。
そんな【青龍偃月】を操り、【刃状風竜】と同時に俺の【魚尾砲撃】を完全に断ち斬ってきた。
……ちっ、そりゃそうなるよなっ!?
2つ同時操作でなら俺に分が悪いぞ……
「【魔法】操作が得意な【オメガンド】から、オレならこのスキルを操作できるだろうと伝授してもらったンゴwww
どうやら次元全体に配布されるスキル以外にも、個人がレイドボスから直接教わる教え技っていうものがあるらしいからなwww
【ブーメラン冒険者】が【タウラノ】から呪術スキルを教えてもらっているのを参考にさせてもらったwww
オレ天才の発想スグルwww」
そうか!?
正直その発想は無かったぞ……
あれは【タウラノ】だけの特権だと思っていたがどうやらそれは俺の思い込みだったようだ。
……最も、【オメガンド】からスキルの教わるのは難易度が高そうだが。
【タウラノ】は色々な意味でチョロいからこそ多くのプレイヤーが呪術スキルを教われているというのもあるんだろうな……
そんなことを考えながらも、ギロチンの刃のように俺に迫ってきている【青龍偃月】を包丁の腹で受け流していくが……
「ついに捉えたンゴwww
これで止めだwww
スキル発動!【覇道逆鱗】www」
次の瞬間、俺の目の前は炎に包み込まれたのだった……
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