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80話 猫まっしぐら

 早速両手でワイヤーを掴むようにして、猫のような四足歩行姿勢になった【ペグ忍者】。

 また来るか急加速!?


 「そろそろ、倒されて欲しいのら!」


 よしっ!

 予想通り弾丸のような急加速が来た。

 どんなに速くても、軌道さえ読めていれば避けるのは容易い!

 しかも、それだけじゃないぞ!


 「ぐにゃん!

 包丁の刃を通り道に合わせて置くなんて、ずるいのら~!」


 どうやら、【ペグ忍者】の頬に小さな切り傷を作ることに成功したようだ。

 へへーん、勝負にズルいも何もないぞ。

 勝てば官軍なのだ!


 どんなに加速しても、軌道上に包丁を構えて通りすがりに切り込みを入れれば問題ない。

 どうやら【ペグ忍者】もあの急加速を使いきれていないようだし、複雑な動きはできないんだろう。


 「で、でもこれは偶然の可能性もあるのら……?

 それならもう1回!」


 懲りずにまた急加速で飛んできた猫耳忍者。

 甘い甘い、また切ってやる!

 そう考え、軌道を予測し包丁を構える。


 そして包丁に確かな手応えを感じた……のだが、何か鈍痛が腕に走っている。

 その痛みの正体を探るために腕を見ると、そこにはペグが深々と刺さっていた。

 というか貫通してない?これ?


 あいつっっ、俺が油断していると思ってわざとワンパターンっぽく見せてきたな!?

 俺が攻撃を与える瞬間にペグを投擲してきたようだ。

 あの急加速で投擲を成功させるなんて……流鏑馬かな?そう思ってしまう。


 ってそんな場合じゃないぞこれ。

 ペグの根本にはワイヤーが仕込まれている……つまり……


 「【包丁戦士】しゃんのシャンデリアをワイヤー猫ハウスに飾るのら~♪

 汚いシャンデリアだけど我慢してあげるのら!」


 うおっ!?

 ……どうやら、俺は腕に固定されたワイヤーで身体全体を引っ張りあげられたようだ。

 

 フィールドに張り巡らされたワイヤーの一本を支点に、俺についているワイヤーを【ペグ忍者】が手で引っ張りあげた結果、俺が空中でシャンデリアと化しているみたいだ。


 フィールドの中心でブラブラと浮いているのは結構きつい。

 なんというか、恥辱プレイを思わせる感じな。

 俺一応可憐な乙女(?)なんだけど、最近こんなんばっかりだぞ!?


 「……狂人で蛮族な【包丁戦士】しゃんのことを知っていて遠慮するプレイヤーはいないのら!

 たとえ見た目が乙女でも、内面が下衆なのら……」


 酷い言われようだな……

 ……まあ、いつも言われているし別に今さらではあるが。



 さて、この宙ぶらりんな状況からどうやって脱出するか……

 包丁で切ろうにも……刃は届くが体重をかけられないので切るのは難しそうだ。



 それならやむを得ないか……

 虎の子のスキル【フィレオ】!


 ワイヤーに囚われていない包丁を持った手で空中に軌道を描く。

 そして、そこから飛翔する斬撃が生み出され見事ワイヤーを切断することに成功した。


 流石ダメージよりも切断を重視しているスキルなだけある。



 「まーた攻略されたのら~!!

 もー【包丁戦士】しゃんは攻略が早すぎるのら!

 ……でも、その身体になったからにはもう勝負は決まったも同然なのら~?」


 一瞬悔しそうな顔を見せた【ペグ忍者】だったが、俺の姿を見てからは再び余裕を持った顔に戻った。

 

 そう、【フィレオ】の代償で片腕が吹き飛んでいるのだ。

 幸いにもペグが刺さっていた方だったから被害は最小限に抑えられたが、隻腕の状態だとどうしても不利だろう。


 「……【包丁戦士】しゃん、スキルでどうせ四肢を飛ばすなら、はじめから自分の腕を切断してワイヤーを外せば良かったのら……?」

 

 うわっ、そうじゃん!

 あの状態、ワイヤーが刺さっている腕が飛ぶのが最善だったなら、【ペグ忍者】の言うようにスキルを使わない方が博打を打たなくて済んだかもしれない。

 これはどじっ娘【包丁戦士】ちゃんですわ。


 とか言ってる場合じゃなくて、隻腕状態でこのまま長期戦に持ち込むのは愚策だろう。

 間違いなく勝ち目が薄い。

 それならさっきのように博打に出るしかないなぁ!


 俺の四肢を全てスキルにオールインだ!(なお、既に1つ無い模様)

 【フィレオ】と【渡月伝心】の同時発動っ!

 


 

 【スキルチェイン【フィレオ】【渡月伝心】】





 【追加効果が付与されました】





 【デメリットが増加しました】


 

 俺の片腕に握られた包丁から放たれる飛翔する斬撃が不完全な満月を描きながら【ペグ忍者】へと迫る。

 

 それと同時に俺の残っていた腕と両足が吹き飛んだ、俺の四肢はもう1つも残されていない状態になってしまったということだ。

 これが外れたら問答無用で俺の負けだろう。

 いざ、勝負!


 「【包丁戦士】しゃん、悪いでしゅね……

 種族転生する前なら間違いなく負けてたのら!

 でも、今はこの力があるのら~!!

 スキル【獣王無尽】なのらぁ!」


 俺に対抗するかのように【ペグ忍者】がスキルを発動してきた。

 発言とスキルの名前から獣人に転生して手に入れたものだろう。


 スキルを発動した【ペグ忍者】から黄色いオーラが溢れるように出ている。

 【魚尾砲撃】も似たような感じでオーラを出すが、あれは不安定だし、本来のスキルの使い方じゃないのはよく分かっている。

 それに対して、この【獣王無尽】は元々身体を覆うようなオーラを出すスキルだと見るだけで分かるくらいしっくりくる。

 まあ、獣人だし身体強化系統のスキルだろう、だが、それで俺のスキルチェインを破れるかぁ!?


 【ペグ忍者】は手の周辺のオーラを爪のような形にして俺のスキルチェインに突っ込んでくる。

 そして射程範囲に入ったところで一度両手を地面につき、急加速して切り裂いた。


 一撃目、二撃目の【フィレオ】は爪の形のオーラに引き裂かれ消滅。

 三撃目の【フィレオ】は足による蹴りで霧散してしまった。


 おいおい、底辺種族のプレイヤーと種族転生したプレイヤーの差ってこんなにあるものなのか!?

 こっちは2つのスキルを重ねたスキルチェインだったはずなのに、単発スキルに打ち負けるとは正直思ってなかったわ……




 その後、のそのそと歩いてきた【ペグ忍者】のペグによって喉元を一突きされた俺は死に戻りすることとなった。

 悔しすぎる!!








 

 「一回戦第一試合終了!

 勝者は草原エリア闘技場代表の【ペグ忍者】です!

 底辺種族との格の違いを見せつける形になりましたね。

 底辺種族【包丁戦士】も私の想定以上に食いついていたので、素直に健闘したほうだと思いますよ。

 二人ともよく頑張りました。

 それでは次に進むとしましょう!」




 【Bottom Down-Online Now loading……】

 

80話突破記念で11話のあとがきに【釣竿剣士】ちゃんの絵を置いてきました!

興味のある方はぜひ見てみてください。

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