794話 ウグイスのなく頃に
昨日は2話更新しております!
前の話を読まれていない方は前の話から読んでいただくようにお願いします。
「イクヨっ、スキル【竜鱗図冊】っ!
ability【天手古舞】っ!」
目の前の女の腰に提げられていた巻物がぶわっと広がり帯のように伸びていく。
そしてその巻物から六角形の竜の鱗のような物が飛び出てきて【短剣探険者】の短剣と身体を包み込んだ。
そして光輝くとそこには竜人としての力を覚醒させた姿の【短剣探険者】がいた。
「私も行くよっ!
スキル【竜鱗図冊】っ!
そして、ability【天地逆転】だよっ!」
先程と同様に【ブーメラン冒険者】の持っていた巻物から六角形の竜の鱗のような物が飛び出てきて【ブーメラン冒険者】のブーメランと身体を包み込んだ。
これが竜人に種族転生した双子の本気モードってわけだな。
あっちがその気なら俺も姿を変えて戦うのが礼儀だろう。
スキル発動!【深淵顕現権限Ж】
俺はその辺にいた悪魔側のモブプレイヤーを勝手に生け贄に捧げて深淵の黒い霧を身体に纏わせていく。
そして身体が深淵に馴染むように作り替えられていき、尻からうねるように尻尾が生えてきた。
その尻尾はドロドロの粘液を地面に滴しながら鞭のようにしなる。
「よーし、第二ラウンドだねっ!」
「私たち双子の本気を見せてアゲルヨ!」
そう言うと【短剣探険者】はこれまでとは比べ物にならないスピードで俺に接近し、短剣を振り下ろした。
俺はそれを包丁の腹で受け流そうとしたが……
攻撃が重いっ!?
なんとか受け流せたが、今の攻撃には電柱が倒れてくるのを受け止めたかのような重さが込められていた。
これが【短剣探険者】のみが持つability【天手古舞】の補正だろう。
攻撃力と素早さを規格外に上昇させることができるらしい。
その反面、防御力が紙のようにペラペラになってしまうらしいが……
俺は包丁で短剣を受け流しながら尻尾を使い、弧を描くようにして斜め後ろ方向から【短剣探険者】を打ちつけようとした。
尻尾による曲線的な動きにこの体勢から対応するのは難しいはず!
「スキル発動!【波状風流】だよっ!」
そんな攻撃が当たる間際に【ブーメラン冒険者】がスキルによって風を噴き出すスプリンクラーのようなものを設置して【短剣探険者】の身体を宙に浮かせた。
攻撃の対象が思わぬ方向に逃げてしまったため俺の尻尾による攻撃は不発となり、地面に突き刺さることとなったのだ。
くそっ、外したっ!
今のは当たればクリティカルヒットだったはずなんだがな……
「正直一人で【包丁戦士】さんに勝てるとは思ってないけど、二人なら勝てる可能性はあると思ってるよっ!」
「姉弟愛の力はとんでもないパワーがアルヨ~!」
そうだろうな。
個人の力よりも、そして赤の他人と組むよりもお互いの連携が取りやすいだろう。
まさに阿吽の呼吸というものを体現した動きが出来るのはこの双子最大の強みだからな。
それならこれはどうだ?
スキル発動!【魚尾砲撃】!
俺は尻尾にエネルギーを集約させて極太レーザーとして放った。
今度は最前線にいた【短剣探険者】ではなく、後方にいた【ブーメラン冒険者】が狙いだ。
「不味いネ!?」
すかさず【短剣探険者】がカバーに入るが、これを防ぐ手段を持っているやつは少ないはずだ。
「通用するか分からないけど……
【波状風流】を破棄して……
スキル発動!【六根清浄急急如律令】だよっ!」
「パワーが漲ってキタヨ!
スキル発動!【波状風流】!」
【波状風流】の発動者を切り替えてきたようだ。
【ブーメラン冒険者】は代わりに【六根清浄急急如律令】を発動して【短剣探険者】のステータスを一気に上昇させた。
そして、【短剣探険者】は【ブーメラン冒険者】の代わりに【波状風流】を起動して風の流れを再度生み出していく。
そして二人とも上空へと浮かび上がり、再度回避していった。
……やっぱり【波状風流】の移動補助機能は厄介だな。
本来当てられるはずの攻撃をこれでもかというほど避けられてしまうからな……
【短剣探険者】は身体能力向上のバフを受けたまま風の流れに乗り、そのまま俺に向かって突撃してきた。
……だが、それは想定済みだ!
スキル発動!【フィレオ】!
俺は飛翔する斬撃を生み出し、迫ってきていた【短剣探険者】の短剣を持つ腕を切り落とした。
俺の右足もデメリットで吹き飛んでいったが、この場では軽い代償だろう。
「なっ!?
これは……ピンチダネ!?」
そういうことだ!
くらえっ、俺の十八番の袈裟斬りだっ!
短剣を振り下ろすつもりでいた【短剣探険者】は短剣を失い振るうものがない状態でも突撃の勢いは止められず俺の方へと向かってきていた。
俺はその勢いを利用して、いつも以上に包丁を【短剣探険者】の身体へとめり込ませながらその身体を切り裂いた。
「次は……私が勝つヨ……」
そうして【短剣探険者】は光の粒子となって消えていったのだった。
これで一人目だっ!
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