793話 双子の緒戦
本日二話目の更新となります。
前の話を読んでいない方は前の話から読んでいただくようにお願いします。
「久しぶりに【包丁戦士】とは戦うヨネ!」
「実は次元戦争にも参加したことがある私たちだけど、ここ最近は他の【コラテラルダメージ】のメンバーとの交流が多かったからねっ!
特に【フランベルジェナイト】さん……私たちと同じように竜の力を扱うからねっ!」
そんなことを言いながら【短剣探険者】が俺の前に飛び出て斬りかかってきた。
軽快な左右のステップを踏みながら太刀筋を読ませないようにしてくる【短剣探険者】の得意戦術だ。
短剣を突き出すようにして脇腹へと差し込んできたかと思えば少しずらしてきた。
俺はその突きを包丁の腹を使った受け流しで逸らしていく。
だが、これで安心するのは二流のすることだ。
【短剣探険者】の後ろにはあいつがいるっ!
包丁で短剣を受け流した直後、俺は半歩下がり首を下げた。
するとどうだろうか、さっきまで俺の首があったところをブーメランが弧を描きながら通り抜けていった。
俺が殺気を察知して反応していなかったら俺の首が刈り取られていただろう。
危ないな……
「あっ、今の惜しかったよねっ?
私のブーメランさばきも上手くなってきたよねっ!」
それは素直に認めてやろう。
であったばかりの頃よりも確実にブーメランを投げるのが上手くなっているし、狙う場所やタイミングについても熟知してきているな。
【短剣探険者】との連携が前提ではあるが、あのタイミングは格上すらも倒すことが出来るほどの神がかったものだったぞ!
「わぁい、【包丁戦士】さんに誉められちゃったっ!」
「デレデレしないできっちり私の援護をヨロシクネ!」
【ブーメラン冒険者】は身体をクネクネさせながら喜んでいたが、あいつはあんな可愛い見た目と動作をしているのに男だ。
いわゆる男の娘ってやつだな。
そんな【ブーメラン冒険者】を差し置いて【短剣探険者】は連続して俺に短剣で斬りかかってきた。
武器としてのリーチも短剣と包丁とでは酷似しているためか、眼前での切り合いに発展した。
右へ左へと切り結んでいくので激しい応酬となっているが、そのうちに俺の背後からブーメランが飛んでくるのを察知したのでサイドステップで緊急回避をして凌いだ。
「これも避けられちゃうんだねっ!
正直当てられる気がしないよっ!」
俺はプレイヤーキラーだからな、死角からの攻撃でも殺気がこもっていたら何となく感じ取れる。
殺気には敏感な体質なのだ!
「敏感肌ってやつダネ?」
いや、敏感肌ってわけじゃないんだが……
肌が弱いとかそういう話ではない。
殺気に反応しやすいかどうかって話だったんだ……
「それならこれはどうかなっ!」
今度は【ブーメラン冒険者】が投げナイフを5本指にはさんで投げてきた。
俺はそれを叩き落とそうとしたが、そこに割り込んできたやつがいた。
「あっちょうどいいところにナイフが飛んでるッスね!
つい手癖で盗んじゃったッス!
【ペグ忍者】先輩対策にもらっていくッス」
唐突に【バットシーフ】後輩が神業の窃盗術で【ブーメラン冒険者】の投げナイフを全て懐に仕舞っていた。
「あっ、私のナイフが盗まれたっ!」
「ふふふ、もらっていくッスよ!」
そう言って【バットシーフ】後輩は【ペグ忍者】のいる戦場へと戻っていった。
なんだったんだ今のは……
嵐のように来て嵐のように去っていったぞ。
まあ、攻撃を防いでくれたから助かったがあいつはナイフを盗むだけにこっちに来たのかよ。
相変わらず盗むことにかけてはプロ意識があるな。
「変な人だったネ……
あの人も大概【コラテラルダメージ】のメンバーしてるヨ」
あん?
それはどういうことだ?
「変人ってことだねっ!」
「ソウダヨ~」
俺のクランはいったい何だと思われているんだ?
見世物小屋でもあるまいし。
そんな疑問を持ちながらも俺は包丁を逆手に持って【短剣探険者】の裏に回り込んで首を切り落とそうとした。
「うわっ、会話しながらナチュラルに首狙ってきたヨ!?」
「流石【包丁戦士】さんだねっ!
そのワイルドさ、私も見習いたいよっ!」
「見習わなくてイイヨ……」
俺の流れるような斬撃を間一髪で回避した【短剣探険者】をサポートするように【ブーメラン冒険者】がブーメランで俺の行動を妨害してきた。
この攻撃で俺を倒せる可能性があったのだが、やはり双子とだけあってお互いのミスをお互いにカバーし合うのが上手いな。
中々やるじゃないか。
派手でピーキーなスキルやability無しでここまで戦えるようになっていたとはな。
「全く攻撃が通せてない相手に言われても皮肉にしか聞こえナイヨ!」
「でも、前よりは戦えてる気がするねっ!
ここからはギアを上げていこうかなっ!
【短剣探険者】もいいよねっ?」
「わかったヨ!
【ブーメラン冒険者】の言うように、【包丁戦士】は力を温存していて勝てる相手じゃないカラネ!」
おっ、ここからが本番ってわけだな。
いいだろう、受けて立つぞ!
……。
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