787話 刹那的感想
本日二話目の更新となります。
前の話を読んでいない方は前の話から読んでいただくようにお願いします。
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
俺がログインすると目の前には不機嫌そうな表情を浮かべたおっさんと、機戒兵に騎乗している女がいた。
……用件はなんとなく予想できるが。
「お嬢ちゃん、手回しが早すぎるんじゃないかねぇ?
昨日は急にユニーククエストが出てきて驚いたよ」
「【包丁戦士】は相変わらずハチャメチャね!
【クシーリア】の話を聞いた次の日に堅牢剣山ソイングレスト関係するユニーククエストを出すなんて……
頭おかしいんじゃない?
あ、これ褒め言葉だよ」
酷い褒め言葉だな……
まあ、似たような罵倒はしょっちゅうモブプレイヤーたちから受け取っているので、褒め言葉なら素直に受け取るくらいの器量はある。
罵倒でも受け取ってやるがな!
売り言葉に買い言葉ってやつだ。
「それでオジサンたちはどっちに参加した方がいいのかな?
一応聞いておくけど……悪魔の侵攻作戦の方だよねぇ?」
「もしかしたら炎帝鳥の防衛作戦で恩を売るって方かもしれないからまだ受注してないんだよ!
【包丁戦士】の考えは私たちには理解できないから直接聞きに来たってわけね!」
確かに言われてみるとどっちでもあり得るよな。
ただ、こいつらは基本的に俺が悪サイドの人間だと思っているので悪魔の侵攻作戦が俺の参加する作戦だと信じ込んでいるようだ。
……正解だよ!
これでも聖獣側である【天子】の複合種族になっていたり、【次元天子】になっていたりするのにこの扱いはいったい……?
「「それは【包丁戦士】の普段のおこない!」だねぇ……」
二人でハモらせて強調してくるなよ!
なんとなく分かってたからそんなに強調しなくてもいいって!
俺はプレイヤーキラーだからな、こういった謗りを受けることは多いのだ。
「それじゃ、オジサンたちも悪魔の侵攻作戦に参加させてもらうよ。
そういう約束だったからねぇ」
「機戒兵関係のユニーククエストじゃなくて良かったわね。
私やオジサンはこれまでも【荒野の自由】との盟約で機戒兵関係のクエストには強制参加させられてるのよ」
そうなのか。
俺も深淵種族関係のクエストはほぼ強制参加させられているから似たような境遇だな。
お互いついている陣営が違うだけで、立場は同じってわけか。
「上からの命令に逆らえないのは会社人間の辛いところだねぇ……」
「オジチャン……」
歳を経ているなりの苦労が【短弓射手】の顔から読み取れた。
ゲームのアバターでは設定していないであろう顔のシワまで想像できてしまうぞ……苦労人ってやつだな。
それはいいとして、これからは堅牢剣山ソイングレストに攻め込むための作戦を立てたいと思う。
お前たちに協力してくれるプレイヤーはどれくらいいるんだ?
味方の数がある程度分かれば作戦を立てやすいんだが……
「そうだねぇ……
オジサンたちはクランを作っているわけじゃないからそんなに数は多くないのさ。
よく一緒にプレイしているのはクラン【コラテラルダメージ】と同じくらいの人数だねぇ」
「もしかしたらクラン【紅蓮砂漠隊】のメンバーも私たちがいる陣営なら協力してくれるかもしれないわ!
ただ、全員とはいかないでしょうけど。
あそこの【バグパイプ軍楽隊員】は【包丁戦士】をあまりよく思っていないって聞くし!」
あー、確かに【金剛島海域エイプモンド】で会ったときも凄く警戒されていたな……
軽い殺気が常に飛んできていたからお前の聞いた噂は本当だろうよ。
「おや、お嬢ちゃんは【金剛島海域エイプモンド】にも行ったことがあるんだねぇ?
オジサンも船で連れていってもらったけど、あそこのレイドボス【金剛海の輝虎魚】は中々変わったレイドボスだ。
オジサンは遠くから攻撃できるから戦いやすいけどねぇ!」
「私のチュートリアル武器は盾だから結晶化毒を防げるけど、近接武器がチュートリアル武器だと大変そうね」
お前ら、俺を煽りに来たのか?
確かに【金剛海の輝虎魚】の攻撃に対して俺の戦い方の相性は不利だが……
お前たちのようにあの毒に対して立ち回り易い奴らに言われると煽られているようにしか聞こえないぞ!
「心外だねぇ……
こう見えてもオジサンはオジサンなりに工夫しながら戦っているわけよ」
確かに【金剛海の輝虎魚】の守りも固いからな。
単に矢を放つだけではダメージの通りも悪そうだ。
急所を的確に狙い撃ちする必要があるだろうよ。
「おや、思ったよりも分かってるねぇ!
やっぱりお嬢ちゃん、ただ者じゃないよねぇ?」
どうだろうな?
俺はただの可憐な乙女だぞ?
「あははは、【包丁戦士】が可憐な乙女なんて笑えるよ!」
俺は瞬時に腰に提げていた包丁を手に取りリデちゃんの首を地面にポロリと落とした。
刹那的に行われたその行為に、リデちゃんは気づくことなく光の粒子となって消えていった。
「あらら……口は災いのもとって言うけど、それをまさに目の当たりにしてしまったよ。
相変わらず恐ろしいお嬢ちゃんだねぇ……本当に……」
恐ろしかったり、恐ろしく無かったりする……
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