783話 燃ゆる世界の剣
本日は2話更新しております。
この話は2話目ですので、前の話を読んでいない方は前の話へ移動して読んでいただくようにお願いします。
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日はボマードちゃんと新緑都市アネイブルのほのぼの市場で遊ぶ予定だ。
……というわけでやって来ました新緑都市アネイブルのほのぼの市場!
深淵獣が野良犬のように跋扈する市場の中を俺とボマードちゃんは談笑しながら物色していく。
「【包丁戦士】さんとデートするのはいつでも楽しいですね!
いや~、深淵奈落のレイドバトルデートは流石に疲れちゃいましたけど!」
それは【アルベー】との再戦のことを言っているのか?
あれをデートと呼べるのは頭お花畑の爆弾魔のボマードちゃんくらいだろうよ。
どうしてそんな認識をしているのか気になるところだが、どうせ深い理由なんて無さそうだから触れないでおこう。
そんなボマードちゃんと買い込んだホットドッグを食べていると、俺たちの方へ向かって歩いてくる三人組がいた。
何処かくたびれた様子の男二人と興奮気味一人の女だ。
あれは……【短弓射手】、ロープ使いのモブプレイヤー、【リフレクトミラーディフェンダー】……通称リデちゃんだな。
前にキャンプをしていたメンバーたちがわざわざ俺とボマードちゃんのところに来るなんて……何の用だろうか?
「確かにあの人たちと新緑都市アネイブルで会うのは珍しいですよね!
いや~、いつもは無限湖沼ルルラシアか草原エリアで戦う相手たちですからね~!
流石にこの市場の中で戦いにきたとは思いたくないですけど……」
ボマードちゃんの言うようにここで戦闘を急におっぱじめる連中じゃない。
俺だったら何処でもプレイヤーキルをしているが、【短弓射手】はある程度時と場合を考えて攻撃してくるから【トランポリン守兵】お嬢様寄りの理性派プレイヤーだ。
「リデちゃんちょっと歩くのが速いねぇ……
オジサン歳だからついていくのがやっとだよ……」
「俺も体力には自信があるはずだったけど、リデちゃんの若さには勝てないぞ!」
「二人とも情けないわ!
特にオジチャンはもっと頑張ってよ~!
……っ【包丁戦士】、待たせたわね!」
いや、別に待ってないんだが……
急に俺たちの前に現れて何がしたいんだ?
リデちゃんの後ろ二人は既にバテバテだぞ?
「ふっふっふっ、それはずはり【失伝秘具】の【戒焔剣レヴァ】を探しているんだよ!
オジチャンたち二人にも協力してもらってね!」
【戒焔剣レヴァ】?
初めて聞いたぞそんな【失伝秘具】の名前……
俺がそうぼそりと呟くとリデちゃんは露骨にガッカリした表情で落ち込んでいた。
「なーんだ……てっきり【包丁戦士】なら何か知ってるかもってここまで来たのにアテが外れちゃったよ!」
「お嬢ちゃんは奇妙なことに巻き込まれやすい印象があったからねぇ……
この件にも関わっているかとオジサンも思ってたよ」
「いや~、その気持ち分かりますよ~!」
ボマードちゃんは同意するな!
シンパシーを感じるな!
お前は一体誰の味方なんだよ……
というか、なんだなんだ?
その【戒焔剣レヴァ】がどうしたっていうんだ?
【失伝秘具】だから普通のアイテムや装備とは隔絶した性能を持っているんだろうが、手に入れていない【失伝秘具】の名前を知る機会なんて普通はないはずだ。
それを知っているということは教えた存在がいるだろう。
【槌鍛冶士】か……いや、あいつが俺抜きに何か始めるとは思えない。
それよりも、【短弓射手】関係ならおあつらえ向きの【上位権限】レイドボスがいるじゃないか!
そう、【荒野の自由】だ!
大方、あいつがユニーククエストでも出したんだろう。
そして、そのユニーククエストの達成条件が【戒焔剣レヴァ】の入手ってところか。
「ええっ!?
なんでそんなところまで分かっちゃうの!?
【包丁戦士】こわーい!」
「あらら、そこまで見抜かれちゃうか……
オジサンたちそんなにヒントを漏らしてなかったはずなんだけどねぇ」
「レバニラ……?
いや~、【包丁戦士】さんの料理のことですか?」
おいボマードちゃん、完全に話に着いてこれてないじゃないか……(困惑)
この場にボマードちゃんを置いたまま話を進めるのは流石の俺も辛いな……
少しだけ申し訳ない気持ちが沸き上がってくるからな。
「ボマードちゃんは俺とあの店でも見て回ろうか?
それくらいには話が終わってそうだし!」
「あっ、確かにあのお店のアクセサリー可愛いですね!
いや~、私のファンなだけあってお目が高いですね~!」
「ははは、ボマードちゃんにそう言われると嬉しいじゃん!」
全く話に入ってこれていなかったボマードちゃんに気を利かせて、ロープ使いのモブプレイヤーがこの場から連れ出してくれたようだ。
流石はアイドルのボマードちゃんファン!
ボマードちゃんのファンが何人いるのかは知らないが、こうやって好かれているのはボマードちゃんにとっても良い影響になっている……はずだ。
「さーて、せっかくだから【包丁戦士】にも協力してもらおっと!
というわけでユニーククエスト共有ね!」
【個人アナウンス】
【【ユニーククエスト 機戒樹を呑む戒焔剣を装備せよ】を共有されました(4/5)】
【共有化されたユニーククエストについては共有元のプレイヤー【リフレクトミラーディフェンダー】が達成することで全員達成となります】
【運営からの忠告】
【このクエストは失敗しても失うものはありませんが、成功することによって特別な報酬が与えられることがあります。】
【ユニーククエストは達成する前に状況の変化によって、クエストそのものが消失している場合もあります。
他の次元では発生しないことも考えられますので、この機会に世界を変えていきましょう!】
任意の他人と共有できるユニーククエストか、こんな形式もあるんだな……
だが、(4/5)っていう表記があるってことは……
「そうだよ!
これは五人までしか受けられないみたいなんだよね……
そこに【包丁戦士】を加えてあげたわ!」
加えてあげたわ!……じゃないんだよな!!
せめて事前に確認してから追加してくれ……
俺は協力するなんて一言たりとも言ってないんだが……
「あれっ!?
そうだっけ!?」
「リデちゃんはそそっかしいねぇ……
お嬢ちゃんも急に巻き込んで申し訳ないけど、リデちゃんに協力してあげて欲しい」
……まあ、してもいいけど。
でもそれなりのものを対価として差し出してもらわないと割に合わないぞ?
何せ何処にあるのか分からないものを探すんだからな。
「あらら、ごもっともな意見で。
オジサンも大人だからよく分かっているけど、頭が痛いねぇ……」
流石はアラフォーのおっさん、話が分かるな。
「それならこういうのはどうかねぇ?
次に陣営ごとに分かれて戦うイベントやクエストが発生したらオジサンたちはお嬢ちゃんと敵対しない……これじゃダメかな」
【短弓射手】が交換条件として提示してきたのは俺と敵対しないという約束事だった。
これなら【大罪魔】のユニーククエストで堅牢剣山ソイングレストを攻めるときの不安要素を減らせるか!
そう考えれば悪くない条件に思える。
いいだろう、協力してやろう!
その代わり時間があるときにユニーククエストの詳細を教えてくれ。
流石に情報が少なすぎて【戒焔剣レヴァ】を探そうにも探せないぞ……
「それは任せてよね!
このリデちゃんにお任せあれよ!」
リデちゃんは胸をドンと叩きながら自信満々な表情を浮かべていたのだった。
なんか不安だなぁ……
ミーの為に働くのだ。
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