777話 慟哭のインシュレーション
俺は狼包丁を浮遊させながら【ギアフリィ】ゾンビに切り込ませながら、俺自身は距離を取っていく。
俺は十二枚のうちの羽の一枚だけを使用し、【ギアフリィ】ゾンビの攻撃の間合いから外れたのだ!
【強気に夢幻エネルギーを解放したかと思えば】
【単なる時間稼ぎとは】
【これでは些か興ざめだな】
はっ、勝手に言ってろ!
俺の間合いは何も近距離攻撃だけじゃないってことを見せてやるよ!
スキル発動!【魚尾砲撃】!
俺は羽のうち二枚から極太レーザーを【ギアフリィ】ゾンビに狙いを定めて放った。
真っ直ぐに伸びていくその直線が【ギアフリィ】ゾンビを今にも捉えようとしていたが……
【クハハハ!!!】
【刻も満ちてきたころであるな!】
【それならば我もこれで迎え撃とうではないか】
【スキル発動【機天慟哭】!】
【総門解放だ!】
【ギアフリィ】ゾンビがスキルを発動させると、背後に空間の歪みが生まれ始めた。
そして、1つ1つから大砲、マスケット銃、ガトリング、ショットガン、レーザー銃、粒子砲など様々な遠距離武器が出現し空中で待機している。
それぞれ出現した武器には1から12までのナンバリングがされているのが特徴だ。
【クハハハ!!!】
【あやつの眷属のスキルというのは気にくわないが】
【相変わらず我好みのスキルだ!】
【このスキルを以て】
【ここで小娘たちに引導を渡してやろう!】
【全機、射撃対象は目の前の小娘だ!】
【撃ち方用意……放て!】
【ギアフリィ】ゾンビが射撃を武器たちに命じると、空中で待機していた武器が凶弾を一斉に放ち始めた。
火薬の匂いや眩しい光線が交わり俺の【魚尾砲撃】とぶつかり合う。
俺の【魚尾砲撃】が二発なのに対して、【機天慟哭】は十二発放たれている。
このままだと押し負けるのは道理だが……
俺が発動していた重ねの兵法はまだ生きているままだ!
ハハハハハハハハ!!!【阻鴉邪眼】!
衰弱の円陣よ、漆黒の写し鏡よ!
俺に歯向かう凶弾を堕とせ!
十二枚の羽のうちさらに二枚からデバフサークルが生み出され地面と垂直にデバフサークルが壁のように現れる。
そして、デバフサークルを飛び越えてきた凶弾たちは衰弱しており、俺と俺の周りを回っている漆黒の邪眼球に挟まれると加えて勢いを落としていった。
俺はそれを切り落とすためにさらにスキルを重ねていく。
スキル発動!【フィレオ】!
俺は移動に使っている一枚、【魚尾砲撃】を放っている二枚、【阻鴉邪眼】を展開している二枚を除いた七枚のうちから一枚を消費することで切断に特化した飛翔する斬撃を放った。
紫片を宙に舞わせながら飛翔していく斬撃は【魚尾砲撃】をすり抜けてきた銃撃たちを次々切り伏せながら【ギアフリィ】ゾンビへと向かっていく。
【グヌゥゥゥ!!!】
【ガラクタ共よ、我を守るのだ!】
【ギアフリィ】ゾンビは銃撃を切り裂きながら迫ってくる斬撃から身を守るために、大砲やマスケット銃などを重ねて盾にし食い止め始めた。
一機、また一機と銃器たちが切れていく。
【グォォォォォ!!!】
【ギアフリィ】ゾンビの咆哮と共に俺の【フィレオ】が止められてしまった。
だが、なんとかスキル【機天慟哭】を防ぎきることが出来たようだ。
初めてこのスキルを食らったとき……【ギアフリィ】と初めて戦った次元戦争中にくらった時にはなす術もなくやられてしまったが、今回は対応できたな。
文字通りの必殺スキルだったようだが、これでチャージしていた力もかなり消費してくれただろう。
そろそろお前がステーキ肉として食卓に並ぶ時間が近づいてきたんじゃないのか?
想像しただけで胸が踊るなぁ!
俺はまな板のような断崖絶壁の胸を弾ませながらそう言い放った。
事実、現時点での【ギアフリィ】ゾンビはストックしていたチャージも失い、バフも剥がれ、デバフも受けていることからとても万全とは言えるものではない。
【夢幻深淵】の効果も【暴食】の力でエネルギーを外部から補給できたお陰か少し延長している。
このままいけば【ロイス=キャメル】や【綺羅星天奈】の到着を待つまでもなく勝てるかもしれない。
【クハハハ!!!】
……だが、やつから感じる余裕はなんだ?
俺に有利となりつつあるこの戦場の状況をあいつも理解しているはずだ。
まるでまだ奥の手を隠し持っているような……
自分が負けると思っているような様子には到底思えない。
【この身体ではここまでのようだが】
【我にはまだ次なる姿が残されている!】
【【傲慢】の大罪を糧とした深淵の力を】
【……刮目せよ!!!】
次の瞬間、俺の目の前には大きな影がかかることとなった。
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