77話 開戦!闘技場イベント代表戦
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気……?いや微妙……にログイン。
公共の場で触手プレイの写真が公開されるという惨劇が昨日はあったから少し気が引けていたが、今日は代表戦があるからな。
ここでログインしなかったら今日までの俺の努力を水の泡にしてしまうので、泣く泣くログインしてきたわけだ。
代表戦の会場は昨日の結果発表をした草原エリア闘技場だ。
さっさと向かうとしよう。
到着して闘技場の入り口を潜ろうとしたら唐突にワープさせられた。
いや、俺も突然で何がなんだかわからないが、前ぶれなくワープさせられてたんだ。
んで……ここは?
「……選手控え室です。
あっ、私、ビャッコが西闘技場の代表者である【包丁戦士】さんをナビゲートしますね」
これはどうも。
嫌というほど戦闘の後に見たこのマスコットAIが説明してくれるようだ。
「……これから対戦相手の抽選があります。
あそこのモニターで見れるのでどうぞ見てください」
ビャッコが爪先で指したところにはごく一般的なモニターが設置されていた。
こういうところは何故か現代的なんだな……
そんな感傷に浸っているとモニターで【菜刀天子】が喋り始めた。
「さて、今日は【包丁次元】底辺種族たちの頂点を決める戦いが始まります!
参加者全ての頂点に立つのは誰なのでしょうか!
ここからの対戦はトーナメント形式、ステージ地形は【上位権限】を使ってランダムで私が生成します」
【上位権限】ってそんなこともできるのな。
なんでもあり過ぎて突拍子もないが、羨ましいぞ。
「では、トーナメント戦の組み合わせを発表します!」
昨日散々やっていたように、包丁を天に掲げて参加者のパネルが表示され動き回りシャッフルをしているような演出がされている。
……まあ、もう決まっているんだろうけど。
右ブロック
【新緑都市アネイブル】代表【包丁戦士】VS草原エリア代表【ペグ忍者】
【無限湖沼ルルラシア】代表【釣竿剣士】VS山間部エリア代表【ブーメラン冒険者】
左ブロック
渓谷エリア代表【風船飛行士】VS荒野エリア代表【短弓射手】
岩山エリア代表【トランポリン守兵】VS【深淵奈落】代表【包丁戦士】
という組み合わせのようだ。
俺が2人存在しているということに配慮してなのか、俺は右ブロックと左ブロックそれぞれに分けられている。
そうしないとすぐ自分同士で当たるというつまらないことになるからな。
結果として一回戦闘が少なくなるので、別ブロックに振り分けたのは必然だろう。
あのシャッフルもあくまで演出で、こうなるようにあらかじめホログラムを弄ってあったに違いない。
盛り上げるためには仕方ないと思うけどね。
まあ、対戦の組み合わせが決まったようだが、俺は一試合目から出番があるようだ。
この対戦順も2枠ある俺に配慮されている……気がする!
最悪連戦になるかもしれなかったので、この配慮はありがたいな。
珍しくこのゲームで人権を感じる(?)
対戦表を見てみると、俺の試合順に操作されている意図を感じていたように、他の試合でも操作されている感じはあった。
メイン5つのエリアの代表者に対して、隠しエリア代表をぶつけるようにされている。
これは、マイナーなプレイヤー同士が戦っても盛り上がりが少ないと思ってのことだろうな。
最低でも片方がある程度有名なトッププレイヤーなら、マイナープレイヤーによるジャイアントキリングを楽しめたり、やっぱりトッププレイヤーと呼ばれるだけあるな……という安心感を得られたりと観客席のプレイヤーに何かしら思わせることができるんだろう。
全く知らないプレイヤーだけだとこういう興味や感想って抱きにくいし妥当だ。
さて、対戦表の操作に対する考察はこれくらいにしておくか。
第一試合は【新緑都市アネイブル】代表【包丁戦士】VS草原エリア代表【ペグ忍者】みたいだしな。
あの淫乱ピンク髪ペド忍者とは共闘こそしたことがあったものの、実際に面と向かって戦ったことがなかった。
そもそも初見が新緑都市アネイブルのレイドボス攻略だし、最後にあったのもそのあとのメッテルニヒでの考察会議だし、あんまり会っていたわけでもない。
それでも印象に残っているのは、あの【釣竿剣士】に対する変態性と服装の奇抜さ、軽快な戦い方その全てが俺の脳裏に深く刻まれたからだろう。
前にも言った気がするが、俺の脳内ページを5ページくらい使ったプレイヤーはこいつくらいだったしな。
このプレイヤーに人権のないどん底ゲームを初めて、様々なサイコパスプレイヤーに会ったがこいつは本物の変態だろう。
そんなことを考えていると、ビャッコが声をかけてきた。
「……さあ、出番ですよ!
存分に戦ってきてください!」
俺は闘技場へと転送されるあの感覚を感じた。
俺が闘技場へと移動させられてまず感じたのは、会場の熱気だ。
これまで行われていた予選とは桁違いの人数が収容されている闘技場は、観客プレイヤーの熱気だけで現実世界の真夏くらい暑くなっている。
こりゃ人前に出るのが苦手なプレイヤーが勝ち残ってたら苦労するな~!
俺は大丈夫だけど。
「【包丁戦士】しゃんは大勢の前でも平気なのら~?
こっちはガクブルなのら……」
俺の前に現れた猫耳フードの幼女は、特徴的な語尾の【ペグ忍者】だ。
よう、久しぶり!
「お久しぶりなのら!
相変わらず奇想天外なことをやってたって【検証班長】しゃんから聞いたのら~
流石は狂人と呼ばれているだけあるでしゅね」
おいおい、俺は狂人でも蛮族でもないぞ。
ただプレイヤーキルが好きなだけの可憐な乙女だ。
「その見た目とのギャップが余計にそう思わせてるって気づいてないのら?
それに比べてこっちは見た目も中身もマッチしてるのら~♪」
いや、確かに見た目の幼さとか口調とかはマッチしてるけどさぁ……
【釣竿剣士】への異様な執着とかセクハラとかは幼女のそれじゃないだろ……(困惑)
「それはそれ、これはこれなのら~
はぁ~、はやく【包丁戦士】しゃんに勝って【釣竿剣士】ちゃんとラブラブイチャイチャぺろぺろしたいのら~♪
首筋とか舐めごたえありそうなのら……じゅるり」
そう、この戦いに勝った方が【無限湖沼ルルラシア】代表【釣竿剣士】VS山間部エリア代表【ブーメラン冒険者】の勝った方と戦える。
つまり、この淫乱ペド忍者のお目当てである【釣竿剣士】と戦える可能性が高いというわけだ。
まあ、もちろん【ブーメラン冒険者】が勝ち上がってくる可能性も充分にあるので確実ではないが、それでも【包丁次元】でもトップレベルの実力、ability【現界超技術】でリアルから引っ提げてきた釣竿一刀流という訳のわからないリアルスキルを持っているのでそう簡単に負けたりはしないだろう。
「その通りなのら~
【釣竿剣士】ちゃんとのラブラブぺろぺろ権をかけて、いざ、勝負なのら!」
いや、そんなものかけて戦わないからな!?
なんとも締まらない感じで俺と猫耳頭巾淫乱ピンクペド忍者との勝負の火蓋が落とされた。
やはりアカウントを飛ばすべきですか……?
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