769話 三次元混線混戦
本日2話目の更新になります。
前の話を読んでいない方は前の話からどうぞ。
【【死屍累々城塞バンデット】南側戦線】
はい、というわけでやってきました【死屍累々城塞バンデット】の南側!
そこでは隙間無く蠢くゾンビの群れが壁のようになって迫ってきていた。
……ファランクスもビックリな集団密集戦法だな!?
ゾンビそのものが盾であり、武器として成立するこの質量は見るだけでも胸焼けするぞ……
「このようなおぞましい光景は私の瞳に映るのに相応しくないです。
あのような不浄な存在が来る前に結界で周囲を浄化します!
神の加護よ、私の十字架に宿ってください!
スキル発動!【天元顕現権限】!【風流聖域】!」
【スキルミックス!】
【【天元顕現権限】【風流聖域】】
【混合発動【天元聖域】】
【修練武器に概念混合されます】
【デメリットとして魔力が減少しました】
戦線開始早々に十字架を地面に打ち立てているのは十字架次元のMVPプレイヤー【綺羅星天奈】だ。
風の結界を生み出し、デバフ耐性と物理攻撃耐性を付与しているようだ。
だが、その範囲は十字架次元のプレイヤーだけに止まらず、俺たち包丁次元のプレイヤーにも及んでいた。
急に優しいじゃないか、どうした【綺羅星天奈】?
俺がそう問いかけると、渋々といった表情を浮かべながらその理由を説明してくれた。
「不服ですが、そこの金髪邪眼のお嬢様との協定であなた方にも神の祝福を与えています。
この偉大なる力の庇護の下奮闘してください!」
……なるほど、【トランポリン守兵】お嬢様と【メリケンサックボクサー】による十字架次元との協定は設備の一部譲渡だけではなかったのか、なぜ事前に教えてくれなかったんだ?
俺がそう疑問に思い【トランポリン守兵】お嬢様の方を見ると顔を背けられた。
あん?
どうしたどうした!?
「……ですわ」
なんだって?
聞こえないぞ!
俺は苛立ちながらリピートするように催促する。
すると、【トランポリン守兵】お嬢様は意を決したように口を開き再度言葉を口にした。
「伝えるのを忘れておりましたわ!
ごめん遊ばせ!!!」
……ただの伝え忘れか。
まぁ、それなら特に咎めることはないぞ?
俺がそう伝えると【トランポリン守兵】お嬢様はキョトンとしていた。
「あら、怒りませんのね?
てっきりキルされるくらいのことは覚悟しておりましたわ」
今回は別に大事に至るようなことじゃなかったし、今知っても問題なかったことだからな。
【トランポリン守兵】お嬢様の普段の言動からしても、俺を貶めようとしてやったわけじゃないのは分かるから問題はない。
これを【風船飛行士】がやってたら死ぬほどキルしていただろうけどな!
「……ちっ、イチャつくなら別のところでやれよ(ボソッ)」
【綺羅星天奈】が俺の耳元に近寄り不快な気分になっていることを人知れず俺に吐露した。
まあ、確かに不要な会話だったか。
事前の耐性バフも手に入れられたことだし、まずはこの死ぬほどいるゾンビを蹴散らすぞ!
「承知致しましたわ!」
「神の名の下に断罪します!」
俺と【トランポリン守兵】お嬢様は背合わせになりながら、ゾンビの群れの中で強行突破し始めた。
「道を空けるのはワタクシにお任せ下さいまし!
称号【大量生産職人】をセット!クラフトマイスター権限起動しますわよ!」
【Warning!】
【創り上げるのは多くのもの】
【均一物こそ美しい】
【【クラフトマイスター】権限により【近所合壁】の連続錬成!】
【【トランポリン守兵】のチュートリアル武器が連続錬成されます】
「スキル発動!【近所合壁】の最大展開ですわ!」
【トランポリン守兵】お嬢様はトンネル状になるようにトランポリンを生成し、その入り口からゾンビが二体ずつ俺たちに攻め入ろうとしていた。
流石に十体も二十体も同時に相手にすることは出来ないが、二体ずつなら戦えるな!
俺は腰に提げていた包丁を手を掛けて、そのままゾンビの首もとを一閃し頭と胴体を分断した。
そしてそのまま体を回転させて真後ろにいたゾンビの胴体を切り裂いて、地面に切り捨てた。
どうだ、これがプレイヤーキラーとして培った対人戦術だ!
「いつ見てもお見事ですわ!
これがプレイヤーキラー活動に使われているという点を除けば最高でしてよ!」
「オイラたちも負けてられないんだなぁ!
スキル発動!【巌亀開花】!」
「ふん、聖女様のお手を煩わせる必要も感じられないぜ!
スキル発動!【鳥海不知】!」
トランポリントンネルの外では十字架次元のプレイヤーたちがスキルを使って開幕早々にゾンビを蹴散らしていっている。
ゾンビ集団相手に既に押されつつあるが、それでも果敢に攻めることが出来ているので戦線崩壊はまだ免れている。
「あれっ、先生とはぐれてしまいました……
このゾンビの数だと痕跡を辿るのも難しいですからね……
それならここで戦って先生を待ちますか!
スキル発動!【蒼狼風咆】!」
全く姿が見えないステッキ次元のプレイヤーたちだったが、ふらりと迷い込んできた少年探偵の【シャルル=ホルムズ】もここで戦うことにしたようだ。
使ったスキルは全く聞き覚えのないものだが、ステッキ次元の使ってくるスキルは聖獣関係が多いらしい。
これも包丁次元で生存していない聖獣のスキルだろう。
【シャルル=ホルムズ】が口を大きく開いたら、そこから風のブレスが放たれた。
その風のブレスに巻き込まれたゾンビたちはダメージこそ受けていないが、上空へと吹き飛ばされていってしまった。
あーあ、あそこから落ちたら落下ダメージだけで死にそうだな。
スキルとしては派手な動きだが、それは犬獣人としての種族補助を受けたからだろう。
本来は少し距離を離す位だと睨んでいる。
一応【ロイス=キャメル】が敵対した時不意を突かれないために覚えておこう……
……。
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