768話 防戦理論
俺たちが拠点で情報交換をしていると、脳内に無機質なアナウンスが鳴り響いてきた。
【ワールドアナウンス】
【南方向から【傲慢なる咎死人】が率いるモンスターが襲来!】
【南方向から【嫉妬する咎死人】が率いるモンスターが襲来!】
「同じ方向からでして!?」
「zzz……」
「ちわッス!
これは燃えますね!」
【トランポリン守兵】お嬢様が驚いたり、【バットシーフ】後輩が寝てたり、【メリケンサックボクサー】が燃えたりしている。
そして、【風船飛行士】はこの状況について考察を口にしていた。
「ありえない話じゃなかったが厄介だなwww
包丁次元が破壊した釣竿とアンカーを使うゾンビは本当はこのタイミングで北から来るつもりだったに違いないンゴねぇwww
均等に割れてたら楽だったのに運無さすぎワロタwww
お前の日頃の行いが悪すぎたからだろwww」
そういうことか!
第一の攻撃では二方向から一体ずつ、第二の攻撃では二方向から二体ずつ攻めてくるコンセプトだったわけだ。
あのゲートキーパーたちが四体も同時に攻めてきたらほぼ埒が明かなかったぞ。
対応できたとしても一つの次元で一体……つまり合計三体までだ。
これを事前に減らせたのはいいが、よりにもよって両方とも北側から来るやつだったとは……
分散してくれていたら圧が少なかったのに。
「今回は設備を使うやつを何人か城塞の中に残すぞwww
正直これがどう転ぶかは分からないwww
ローテーションでメンバーを回していくぞwww」
「ちわッス!
それなら俺がまず残ります!
十字架次元から譲ってもらった設備を案内する役目を誰かがやらないといけないですからね!
【トランポリン守兵】さんも同じように設備のことは知っていますけど、まさか【トランポリン守兵】さんを前線から外すなんて勿体ないことできないです!
つまり、俺が誰よりも適任者!」
「おっ、おう……www
それなら【冒険者の宴】のメンバーを何人か連れていけwww
数はいるからなwww」
【メリケンサックボクサー】が勢いよく城塞に残るメンバーとして立候補したが、その勢いにあの【風船飛行士】が引いていた。
【風船飛行士】をドン引きさせるとはやるな!
勲章ものだ!
「オレは城塞の外に行くが一戦目と同じように空を飛んでるからなwww
ピンチのやつは助けてやるが期待されても困るンゴねぇwww」
【風船飛行士】は上空からの遊撃を担当するのか。
純粋な白兵戦力として遊ばせてしまう形になるのは惜しい気もするが、その分頭脳労働で頑張ってもらうことにしよう。
「ということはワタクシと【包丁戦士】様で地上戦は引っ張っていくことになりますわね!
最近一緒に戦う機会が増えてきておりますので、息を合わせるのにも慣れてきましたわ!」
【トランポリン守兵】お嬢様がついてきてくれるのなら安心だな。
こいつの防御は文字通り百人力だから、下手なタンクプレイヤーが数集まるよりも助かる。
大規模攻撃を一人で防ぎきれるのは包丁次元の中では【釣竿剣士】と【トランポリン守兵】お嬢様くらいだから、その守りの要が戦場にいるかどうかでボスモンスター系の戦闘難易度が大幅に変化するのは身に染みて実感している。
【マキ】ゾンビの時は虚飾聖女の【綺羅星天奈】が風の結界を張ってくれていたから、対ボス戦の布陣が辛うじて整っていたといえる。
……そう考えるとMVPプレイヤーがタンクの動きを出来るっていうのは安定して戦えるから、十字架次元のプレイヤーたちは戦いやすそうだな……
「それに比べてお前はプレイヤーキルしか脳が無いからなwww
脳筋かよwww
もうちょっと他の次元のやつを見習ってみたらいいンゴねぇwww」
煽るな煽るな!
お前の煽りは一々鬱陶しいから正直相手にしたくない。
確かに俺はプレイヤーキラーだが、そのお陰でお前たちも恩恵を受けている部分があるからな。
種族転生の条件がフレンドの少なさに依存したり、プレイヤーキルの数が定められているから本当は敵専用の種族なんじゃないかと思ってしまうくらいだ。
そんな深淵種族関係のユニーククエストを進めたり出来たのは俺の貢献であるってことも忘れるなよ?
「ちょっwww
地味に反論しにくいことを突いてくるなよwww
確かにその辺はお前くらいしか進められないンゴwww
お前以外に深淵の力を使いこなしているやつは今まで見たことないぞwww」
地味にフラグっぽいのを立てるな。
これから戦うであろう望遠鏡次元のMVPプレイヤー……【牛乳パフェ】ゾンビがまさに深淵スキルの【阻鴉邪眼】を多用してくる。
それのバリエーションが増えてきていたり、強化されてきていたりしている可能性は非常に高い。
いくら戦術的には劣化コピーの動きしかしてこないとはいえ、その分スペックがゲートキーパー用に大幅に強化されているのだから【阻鴉邪眼】のデバフにも何かしらの強化が施されているはずだ。
射程か範囲か、倍率かは不明だが油断できない相手だろう。
「もう一体のゲートキーパーはどうなんですの?
ワタクシが直面した時のために事前に知っておきたいですわ!」
もう一体のゲートキーパーになると思われるのは【ギアフリィ】ゾンビだ。
パイルバンカーを使ってくるやつで、時間の経過で強くなるスキルや一定時間の溜めで高威力のスキルを放ってくるタイプのやつだったな。
今回の形式ではゲートキーパーのHPもかなり増やされているだろうから、時間の経過で強くなる【ギアフリィ】の力を使ってくるなら相当厄介だ。
この二体のゾンビが同時に取り巻きのゾンビを連れながら攻めてくるなんて気が重いにも程があるぞ……
重かったり、重くなかったりする……
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