762話 城塞の再編成タイム
さて、【強欲なる咎死人】も倒されたから【死屍累々城塞バンデット】の外に出ていたプレイヤーたちが時期に戻ってくるだろう。
だが、あの油釜を使った後も設備を色々と試していたところ面白いものを幾つか見つけた。
これらを戦闘中に利用できたら面白いかもしれないな!
そう思った俺は使用する予定の設備にあらかじめポイントを投入しておく。
こうすれば俺が一度使った後じゃないと他の奴らは使えないはずだ。
悪いが先に唾をつけさせてもらったぞ!
そうして包丁次元の拠点としている場所に再び包丁次元のプレイヤーたちが集まり始めた。
戦闘が一旦止まったので自分の陣営が今後どう動くのか確認しにきた奴らだろう。
それ以外の奴らは手に入れたポイントを使いたいのかウキウキで城塞の内部を駆け巡っていた。
とは言っても、既に汎用的で数の多い砲台くらいしか空いてないけどな。
大人数がポイントを手に入れた状態でいち早く戻ってきていた十字架次元のやつらが、これ見よがしに設備にポイントを事前投入していっていたのだ。
お陰さまでウキウキで出ていったはずのプレイヤーたちが、砲台しか確保できなかったと泣きべそをかきながらトボトボと戻ってきてしまった。
これには包丁次元のモブプレイヤーたちも辟易としていたが、仕様内の戦術なので仕方ないだろう。
プレイヤーキルと一緒だな!
「いや違うンゴねぇwww
プレイヤーキルの方が迷惑スグルwww
それにちゃっかり自分が使う設備だけ確保しているのは、重ねて性格が悪い過ぎワロタwww」
ちゃっかりしてると言ってくれ!
【風船飛行士】は先に戦闘を終えて戻ってきていた俺に棘のある言葉をぶつけてきた。
だが、お前も先に戻ってきていたら設備のポイント事前投入はやってただろ?
お前の頭脳なら俺よりも上手く占有できていた可能性すらある。
この【風船飛行士】の性格は気に入らないが、頭脳だけは一目置いているからな。
「急に誉めるなんて照れるンゴねぇwww
【包丁戦士】は見た目だけは可愛いから普段から誉めてくれたら嬉し過ぎて泣くwww
んんwwwでも実際にはそんなことアリエナイwww」
まあ、【風船飛行士】の言うようにあり得ない話だ。
ナンパなやつだから、俺への因縁があっても嬉しいものは嬉しいのだろう。
【虫眼鏡踊子】という彼女が居ながら、お前というやつは……
「それで、これからどうしまして?
次もあのようなゾンビが襲いかかってくると思いますが、アナウンスの分母を見ると少なくともあと四体のゾンビが出てくるはずですわ!」
だろうな。
【トランポリン守兵】お嬢様の言うようにゲートキーパーの数は信用しておくべきだろう。
だからこそ、この次の戦闘までの猶予期間で敵を減らしておきたい。
「敵を減らす……でして?
ゾンビは出てきていないので、他の次元のプレイヤーたちと同盟を組むということですわね!」
あー、そういう考えもあるのか。
俺が考えていた敵を減らすというのは全く別のものだったが、同盟という方法も悪くはない。
だが、他の次元のプレイヤーとの距離感を間違えると痛い目を見ることになる。
「痛い目ッスか?
どんな目に遭うッスかね……?」
「なんとなく分かりますわよ」
「当然だろwww
足元掬われてたら情けなさすぎるンゴねぇwww」
【バットシーフ】後輩は分かっていないようだが、【トランポリン守兵】お嬢様や【風船飛行士】はきちんと分かっているようだ。
変に近づきすぎると、相手の良いように利用されるだけ利用されてしまい、包丁次元としては全くメリットの無いことを押しつけられることがあるからな。
一度そうなってしまったらこの次元戦争はその相手のペースで終始進んでしまうだろうから、勝ち目は非常に薄くなるだろう。
同盟を組むにしても限定的なものにしてくれよな。
それで、この辺りの交渉が得意なやつって居るか?
すぐに騙されそうな【バットシーフ】後輩は論外だが、他の奴らならある程度信頼していいだろう。
「ちわッス!
俺はクラン【裏の人脈】として交渉しにいきたいです!」
おおっ、【メリケンサックボクサー】!
確かに情報系クランのトップのお前なら適任かもしれない。
だが、お前だけだとプレイヤースキル的な意味で実力不足だ。
せめてトッププレイヤーのどちらかがついていってやって欲しい。
「ちょっwww
お前は行かないのかよwww
サボりすぎワロタwww」
失礼な、俺には俺でやりたいことがあるんだよ。
証明してやるから【風船飛行士】は俺についてこい。
「それでしたらワタクシが【メリケンサックボクサー】様について限定的な同盟を組めるように動いてみますわ!
期待していてくださいまし?」
【トランポリン守兵】お嬢様なら安心だな。
【風船飛行士】は頭は抜群に切れるが、あの態度をよく思わないプレイヤーがいてもおかしくはないからな。
それに比べて【トランポリン守兵】お嬢様は、物腰も丁寧だし見た目もいい、若干融通がきかない時もあるが頭の回転も悪くない。
一番いいのは、この【トランポリン守兵】お嬢様の倫理観が比較的マトモだってことだな。
それだけで怪しい人物じゃないってことが分かるし、信頼されやすいだろう。
というわけで【メリケンサックボクサー】と【トランポリン守兵】お嬢様任せたぞ!
そうして二人と、そのクラン【お屋敷組】と【裏の人脈】のメンバーたちは城塞の中を移動し始めたのを見送った俺たちは真逆の方向へと動き始めた。
「先輩どこに行くッスか?
そっちは外ッスよ!
設備を漁りに行くんじゃないんッスか?」
そうじゃない。
さっき俺が言っていたことを忘れたのか?
これから敵を減らしにいくんだ。
「なるほどなwww
大体読めてきたぞwww
前のあれを再現するんだなwww」
「前のあれ……ッスか?
何ッスか?」
何か【バットシーフ】後輩の察し力が今回やけに低いな……寝不足か?
心なしか足元も覚束ない気がするし、こういうやつの動きはプレイヤーキラー目線からすると寝不足に多い気がする。
「そうなんッスよ!
実は徹夜明けでログインしてて、実は結構フラフラッス……」
おいおい……
それなら仕方ないが、途中でダウンしないでくれよ……
寝たり寝なかったりする……
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