761話 設備しよう費用
さて、城塞に戻ってきたわけだが【風船飛行士】たちはまだ東側で戦っているみたいだから、この城塞の中には西側で戦ったプレイヤーたちと東側で死に戻りしたプレイヤーたちしかいない。
……つまりだ、今こそ城塞の設備を試してみるチャンスってわけだ!
ここの設備は敵を倒して手に入れたポイントを使わないと動かないからな。
一足先に敵を倒して戻ってきた俺が有用な設備を独占することも可能ってわけだ!
というわけでまずは城塞にある高台から【風船飛行士】たちが簡易的に作った全体図と見比べながらどの辺りに行くのか見当をつけていく。
……中央周辺には作りたてホヤホヤの教会があるな。
あれは十字架次元のプレイヤーたちが【綺羅星天奈】のために作り上げたものらしい。
【バットシーフ】後輩や【メリケンサックボクサー】からの報告で聞いた情報だと、あの辺りの設備を占有しようとしている……はず。
無理やり使いに行くのも選択肢としてはありだが、まずはそれよりも穴場かつ有用な設備を見つける方が今後のためになりそうだ。
なので、中央を避けて城壁側を歩いて設備を確認してみる。
まずは砲台だな。
城壁の外に向けて数多く設置されている汎用性の高い攻撃手段だ。
俺は今108ポイントあるらしいが、この砲台で弾を一発撃つのに2ポイント使うので54回撃てることになる。
試しに撃ってみるか……
さっそく【風船飛行士】たちが戦っている東方向に向かって……発射!
「ちょっwww
危なwww
誰だよ砲弾飛ばしてきたやつwww」
城塞から発射された砲弾は上空を飛んでいた【風船飛行士】の真横を通りすぎ、地上へと着弾。
そして、地上にいたゾンビ一体を葬り去っていった。
砲台の効果で、砲弾に視点を変えられたので遠くの様子でも確認できたからこうやって説明できている。
ゾンビに撃つのが一番有効的だが、視点を変えられたのである程度の範囲なら偵察にも使えそうだ。
だが、ゾンビを葬り去ったのにも関わらずポイントは増えていなかった。
この砲台はゾンビを倒せる破壊力があるが、範囲が狭いのでコストパフォーマンスは悪そうだ。
次は……トラップ系の罠を発動させてみるか。
……これか?
俺が次に見つけたのは油を周囲に広げる釜状の罠だった。
砲台よりも必要とするポイントは高く、6ポイントだった。
さっき106ポイントになったからこれで……残り100ポイントだ!
俺が罠を発動させると、釜が【強欲なる咎死人】の方向へと向かって飛んでいった。
【強欲なる咎死人】はその釜を難なくかわしてしまったが、そのまま地面に落ちた釜が割れて中に閉じ込められていた油が周囲に広がった。
「スキル発動!【渦炎炭鳥】!
……ってナニィ!?」
ちょうどクラン【お屋敷組】の【メイジ】モブプレイヤーが【渦炎炭鳥】を使って火の玉を放っていた瞬間だったようで、火の玉が油が広がった地面に落ちてしまった。
そうなれば結果は火を見るよりも明らかだ。
【強欲なる咎死人】やその周囲のゾンビ……そしてプレイヤーたちを巻き込みながら炎上していったのだ!
「あちっwww」
「皆様守りますわよ!
スキル発動!【近所合壁】!」
上空の【風船飛行士】は火に炙られており、地上の【トランポリン守兵】お嬢様は必死に周りのプレイヤーを守っていた。
だが、その中でもこの好機を逃さずに冷静に対処するプレイヤーがいた。
「ふむ、スキル発動!【兎月伝心】」
……そう、兎獣人に種族転生しているステッキ次元のMVPプレイヤー、【ロイス=キャメル】だ!
あの兎耳紳士は、戦場が燃えるなかで行動を制限された【強欲なる咎死人】に向かって光の粒子を飛ばしていき周囲を取り囲ませていた。
そして、光の粒子が【強欲なる咎死人】を千切りにしていく。
俺が来る前に既に満身創痍だった【強欲なる咎死人】の身体はその一撃が引き金となって身体が崩れ落ちていき、そして消え去っていった。
【ワールドアナウンス】
【【強欲なる咎死人】が撃破されました】
【【咎死人】のGK個体が一体消失しました(3/7)】
【東方向の【強欲なる咎死人】が率いるモンスターの襲来が止みました】
あ、これもしかして俺何かやっちゃった感じか!?
他の次元のプレイヤーがゲートキーパーを倒すのに意図せずして手を貸してしまったのか。
城塞を守れたのは良いことだが、最終的なスコアのことを考えたら敵に塩を送ってしまった結果になってしまった。
設備使いたさのあまりやらかしてしまったというわけだ。
……まあ、アナウンスを信用するならまだボスであるゲートキーパーは四体いるはずだから、焦る必要は無いんだけどな。
ここからが勝負の分かれ目だろうな。
一回目の防衛でどれだけ防衛戦の感覚を掴めたのか、それをどのように活かせるのかが腕の見せ所だ!
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