756話 一転攻勢
「おおっ!
【フェーン】がキツイ一撃を入れてくれたぞ!!」
「これであのロリゾンビを倒せただろ」
「俺、この次元戦争が終わったら花屋を開こうと思ってるんだ……」
「やったか!?」
そんな露骨なフラグを立てていくモブプレイヤーたち。
こらこらこら!!
せっかく良い感じにダメージを与えたのにそんなことばかり言っていると……
【火……流……煙……硝……】
【マキ】ゾンビが新たにスキルの発動を宣言すると、巨大蛇腹剣の蛇口から赤い炎が煙と共に吐き出され始めた。
回転するように振り回されている巨大蛇腹剣の周囲は吐き出された炎と煙に包まれてどんどん過酷な戦場へと変化していっている。
「ゲホッゲホッ……
なんだこりゃ!?」
「煙たい……」
「先輩、なんか微妙にダメージ受けていってるっぽいッスけど!?
これ大丈夫なんッスか!?」
「これは見たことがないスキルですね。
聖女である私の結界を無視して妨害してくるなど……
神への不敬ですよ!」
スキル【火流煙硝】によって撒き散らされた煙により視界が制限され、地面には炎が燃え盛るようになっているのでプレイヤーたちへと動揺が走った。
プレイヤーへの直接的な干渉じゃないから【綺羅星天奈】の【天元聖域】をすり抜けているのか……
あの風の結界も思ったより抜け道があるんだな……
「……アァン!?
わりぃかよォ?(ボソッ)」
【綺羅星天奈】は俺の小言にオラついてきた……小声で。
やはり身内に正体を明かす度胸は無いらしい。
聖女ロールプレイって言ってしまったら姫プみたいなものだから、本人としては今の立ち位置が心地よくて離れたくないのだろう。
気持ちは分かる。
それはそれとして、この結界の弱点は【綺羅星天奈】も把握していたようで十字架次元のプレイヤーたちに炎に近づかないように指示を出していた。
落下ダメージといい、地形に関するダメージが効くっていうのは今後十字架次元と戦う時のためにも覚えておくべきだな。
そうして炎と煙に対応している間にも【マキ】ゾンビからの攻撃が止むわけではないので、巨大蛇腹剣によって次々にプレイヤーたちが吹き飛ばされていっている。
その中でも、これまでは落下ダメージくらいでしか死に戻りしていなかったプレイヤーたちも炎に落とされて直火焼きになって死に戻りする者も出てきた。
ああっ、【メリケンサックボクサー】もヤられてるじゃん!
貴重な戦力が……
厄介なことになってきたな……
「ダメージはそれなりに与えられています。
ここは一発大きい攻撃を与えられたら倒せるかもしれませんが……」
【綺羅星天奈】は何かを堪えるようにして肩を震わせながらそう呟いた。
おそらく、自分が攻撃に出れたらその突破口を開けるのに……と思っているのだろう。
だが体裁を気にするので参加できないというわけだ。
それなら同じMVPプレイヤーである俺が一肌脱がないとな!
スキル発動!【渡月伝心】!
【スキルチェイン【天元顕現権限】【渡月伝心】】
【追加効果が付与されました】
【スキルクールタイムが増加しました】
俺は手に持っていた包丁を掲げてそこから粒子を拡散させ、【マキ】ゾンビを取り囲むようにして配置した。
「俺っちも行くッス!
スキル発動!【渡月伝心】!」
「包丁次元に遅れを取るわけには行かない!
スキル発動!【比翼炎禽】」
「オイラもやるんだなぁ!
スキル発動!【比翼炎禽】!」
俺と【バットシーフ】後輩が【マキ】ゾンビを取り囲んでいる間に、十字架次元のやつらは一枚の翼の形をした炎の翼を生み出してそれを解き放ち始めた。
その数……約30!
その大質量攻撃を防ぐようにして巨大蛇腹剣が壁となったが、そっちを優先してくれて助かったぞ!
俺たち二人の【渡月伝心】が一気に【マキ】ゾンビに集まっていき、その全身を切り刻み始めた。
だが、このペースだと削りきれない……か。
【バットシーフ】後輩、間髪いれずに次のやつもいくぞ!
スキル発動!【渦炎炭鳥】!
【スキルチェイン【天元顕現権限】【渦炎炭鳥】】
【追加効果が付与されました】
【スキルクールタイムが増加しました】
「了解ッスよ!
スキル発動!【渦炎炭鳥】ッス!」
俺と【バットシーフ】後輩はそれぞれ【マキ】ゾンビを挟んで両側から赤色の魔法陣を生み出すと、そこから火柱を発生させた。
轟々と燃え盛る炎に包み込まれた幼女は苦しみながら巨大蛇腹剣を振り回し、周囲にいたプレイヤーをどんどん吹き飛ばしていっている。
「焼けてる焼けてるって!!」
「あっちは火柱、こっちは地面が燃えてるしどこも熱いんだが……」
「加減ってものを知らないのか!」
とかいう十字架次元のプレイヤーたちも炎の翼矢を放っていたので、共犯者みたいなものだろうに一方的に被害者面されても困るんだが。
そんなことを考えていると、【マキ】ゾンビから禍々しいオーラが放たれてきた。
何をするつもりなんだこのロリゾンビは!?
何かしたり、何もしなかったりする……
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