751話 別れる戦線
【ワールドアナウンス】
【西方向から【怠惰なる咎死人】が率いるモンスターが襲来!】
【東方向から【強欲なる咎死人】が率いるモンスターが襲来!】
「ここからが本番のようッスね!
とりあえず俺っちと【メリケンサックボクサー】は先行して西側に入ってくるッス!」
「ちわッス!」
俺たちが話し合いを始める前に【バットシーフ】後輩と【メリケンサックボクサー】はクラン【裏の人脈】のメンバーを引き連れてすぐさま駆け出していった。
会議をしていても、現場にいるプレイヤーが居なければ埒が明かないからな。
あいつらに置いていかれないように、俺たちも2手に別れて迎撃するぞ!
「分かりましたわ!
ワタクシは東側に向かいますわ!
【バットシーフ】様とは真逆に向かった方がバラバラになって都合がいいですわよ!」
「オレも東側だなwww
東のトッププレイヤーって呼ばれてるしwww
それと、【トランポリン守兵】とはタッグを組むことが多いからちょうど良いンゴねぇwww」
ちょうど2つ名持ちが半分に別れたか。
情報を広く集めるって考えるならちょうどいいかもしれない。
ただ、戦力の偏りを考えると【風船飛行士】と【トランポリン守兵】お嬢様という、トッププレイヤー二人が東側にいるのは都合が悪いな。
あの二人についていくプレイヤーの数もかなり多いので、東側はてこ入れすら要らないかもしれない。
一方で、西側は【バットシーフ】後輩と【メリケンサックボクサー】という2つ名持ち二人が行く西側戦線だが、戦力的には大幅に不足していると言えるだろう。
この二人の戦闘の実績については目立ったものがないし、ついていくプレイヤーの数もごく僅かだ。
そうなれば俺と【包丁戦士狂教団】のメンバーたちが向かうべき場所は一つ!
西側戦線だ!
「御心のままに!」
「狂巫女様、ついていきます!」
「例えこの身が焼かれようとも!」
頼もしいぜお前ら!
俺たちは先行した【バットシーフ】後輩と【メリケンサックボクサー】たちを追いかけるようにして城塞の西側に向かって駆け出していった……
【【死屍累々城塞バンデット】西側戦線】
西側戦線では、わらわらと沸いてくる顔色の悪い人型のゾンビのような連中が【死屍累々城塞バンデット】に向かって進軍してきている最中だった。
それを迎撃しているのはクラン【裏の人脈】のメンバーたちと十字架次元のプレイヤーたちだ。
「不浄なる生命ですね。
ですが、聖女である私にはその不浄を祓います。
そして、神から賜った私の美しさを以てこの不浄を救済します!
スキル発動!【天元顕現権限】!【風流聖域】!」
【スキルミックス!】
【【天元顕現権限】【風流聖域】】
【混合発動【天元聖域】】
【修練武器に概念混合されます】
【デメリットとして魔力が減少しました】
十字架を地面に打ち立てているプレイヤーの姿も見えるので、十字架次元のMVPプレイヤーである【綺羅星天奈】が周囲に防壁を張っているのだろう。
こっちにMVPプレイヤーが来てくれて助かった……
聖女である【綺羅星天奈】がいるってことは、十字架次元の戦力はこっちに比重を置いているってことだから、来ているプレイヤーの頭数も多いように見える。
俺のなんちゃって巫女と違って、きちんと数多くのプレイヤーたちから信仰心を集められている聖女ロールプレイをこなしている【綺羅星天奈】はMVPプレイヤーたちの中でも特に集団戦闘の中心に立つべきプレイヤーだろう。
そういうプレイヤーが居るのと居ないのとでは、プレイヤーたちの士気が段違いだからな。
プレイヤーキラーである俺では果たせない役割だ。
「ストックスロット2!【天元顕現権限】!
先輩の羽使わせてもらうッス!」
俺たちが西側戦線に到着するとそこでは【バットシーフ】後輩が黄金色の天子の翼を顕現させている最中だった。
宙に浮かび上がりながらバットで次々にゾンビたちをなぎ倒していく姿は、後輩ながら心強く見えた。
「ちわッス!
俺のパンチをその身で味わえ!」
【メリケンサックボクサー】は拳にハメたメリケンサックでゾンビを一体一体屠っていき、ペースこそ【バットシーフ】後輩よりも少し遅いが堅実に戦いを運んでいる。
仮にも情報系クランを率いているリーダーなだけあって、上半身半裸という見た目の割りには手堅い性格なのだろう。
ゾンビからの攻撃を軽快なフットワークでかわしつつ、攻撃の隙を見て顔面にパンチを打ち込む姿は見ていて痛快だな。
地味にノーダメージで戦い続けているので、継続戦闘能力に秀でたプレイヤーと見て間違いなさそうだ。
「ちわッス!ちわッス!ちわッス!ちわッッッッッス!!!!」
継続戦闘能力が高いのは良いことだが、こいつはうるさいな……
どうにかしろ【バットシーフ】後輩!
「えっ、俺っちッスか!?」
他人任せだったり、じゃなかったりする……
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