75話 気づいていましたか?
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
どうやらイベント予選期間が終わったようだ。
三週間にも及ぶ長い予選だったが、結果はどうなったんだろうか。
明日公式サイトでも代表戦に出れる人が発表されるようだが、それに先駆けて草原エリアの闘技場で結果発表などされるらしいから行ってみようと思う。
後から分かるなら別に行かなくてもいいのでは?と思う人ももちろんいるとは思うが、こういうのはライブ感が重要だと俺は思う。
せっかくなら味気ない公式サイトで確認するのではなく、発表の時の臨場感を皆で共有するのが楽しい。
ということで来ました草原エリアの闘技場。
中に入ると、そこには観客席いっぱいのプレイヤーたちがいた。
この包丁次元でのはじめてのオープンイベントとだけあって、みんな興味津々なんだろう。
暇とも言う。
観客席がいっぱいなので、歩きながら空いている席でもないかなと思いブラブラしていると、そこには見慣れたロリ巨乳がいた。
ボマードちゃんだ。
「あっ、【包丁戦士】さんじゃないですか~!
いや~、ここまでプレイヤーが集まると思ってなかったですけど、大盛況ですね!」
ちゃっかり席を確保しながらそう俺に話しかけてきたタンクトップロリは、近くにいた付き添いの検証班メンバーに手振りで何か伝えている。
その後、検証班メンバーが移動し始めた。
あっ、席譲ってくれたのか。
「さあ、どうぞどうぞ!
いや~、私の徳の高さに感謝してください!」
なぁ~にが徳の高さに感謝だ!こいつの場合は涜の高さの間違いじゃないのか!?
まあ、感謝はしておいてやろう。
「なんかしれっと酷いこと言われてませんか?
いや~、いつ喋っても【包丁戦士】さんは辛辣ですよね~
……でもそこがまた……」
こいつ、たまにボソボソ独り言言い始めるよな。
気にしたら負けなので安定のスルーだ。
そんな感じで雑談をしていると、闘技場の中央に【菜刀天子】が派手なエフェクトを伴って出現した。
なんとなく気になって石を投げてみたらすり抜けたので、ホログラムか何かなんだろう。
「なにやら不敬な行動をしている底辺種族がいるようですが、進行上問題はありません。
では改めまして底辺種族たちよ、私はサポートAIの【菜刀天子】です。
この次元の統括をしている存在と覚えておいてください。
その矮小な頭で覚えられるのかは知りませんが」
こいつのことを知っていたやつはほとんどいないので、簡単な自己紹介から始める案外手堅い登場の【菜刀天子】だ。
凛とした姿に見惚れているプレイヤーたちの声が各地から上がっているのがよくわかる。
こいつ、性格は高飛車だけど、顔はいいからなぁ。
分からないこともないが、毎日見てるからなぁ……
「今回お前たち底辺種族を集めたのは他でもない、今回の闘技場イベントの代表選手に選ばれたプレイヤーを大々的に紹介するためです。
底辺種族の割には頑張ったほうのプレイヤーなので、私自らがその紹介をしようという趣向なので、名前を呼ばれたものは栄誉に思うように」
なんという上から目線……
ただ、場の雰囲気からかこの偉そうな言葉にもうぉー!!といつ歓声が耳をつんざくほど上がっている。
これが場酔いというやつか。
「それではまず北の無限湖沼ルルラシア闘技場の代表者からです。
底辺種族の動きを超越したリアルスキルを発揮して戦う凄腕プレイヤー!
スタイルは私にこそ及びませんが、底辺種族にしてはかなり良いと評判!
生産プレイヤーとしての意地を見せましたか!?
頭の花飾りがチャームポイントの【釣竿剣士】です!」
【菜刀天子】が包丁を掲げるとホログラムで【釣竿剣士】の顔が映し出された。
釣竿を振りかぶる姿のパネルみたいだ、躍動感があっていいな。
「やっぱりあの人は勝ち残りますよね~
いや~、あの意味不明なリアルスキルをゲーム内に持ち込んでいるだけありますよね!
全身が発光できるリアルスキルなんて普通じゃないですよね~」
それには激しく同意できる。
当然のように勝ち残ると思ってたし、リアルスキルの意味不明さにも理不尽さを感じてしまうのだ。
あれが同じ人間だとは思えなさすぎる!!
「このように代表者に選ばれたプレイヤーの参加登録のときに撮影した写真を大々的に映し出しますので、どんな見た目か確認しておくと良いでしょう」
説明ありがとう、【菜刀天子】。
「次は南の岩山エリア闘技場の代表者です。
守りの固さと機動力の高さが持ち味。
動く度に揺れるツインテールドリルがチャームポイントです。
そして、執事とメイドを侍らす生粋のお嬢様プレイヤー!
背中に背負う大きなトランポリンが目を引く【トランポリン守兵】です!」
ホログラムのパネルに現れたのは中心にポリンお嬢様、後ろに大量のメイドと執事が対になって控えている綺麗な撮れ高を狙ったものだ。
流石ロールプレイ重視のプレイヤーだな、こういう少しの要素にも手を抜かないとは。
「はぇ~、あれが南のトッププレイヤーって噂だった【トランポリン守兵】さんの見た目なんですね!
会ったことはないですけど、あの金髪ツインテールドリルはテンプレートのお嬢様って感じがしますよね?
執事とメイドのプレイヤーが囲いなんて憧れますよね!」
アイドルとしてファンに囲われているお前が言うなよ。
まあ、アイドルオタクに囲まれるのと、執事メイドに囲われているのでは意味や外観、雰囲気などなど性質が全く違うので一概には言えないけどな。
というかボマードちゃんはポリンお嬢様には会ったことないのな。
まあ、俺も最近会うまで会ったことなかったけど……
あのお嬢様はそんなに遭遇率が低いプレイヤーなんだろうか。
ポリンお嬢様の紹介が終わり、【菜刀天子】が手に持った中華包丁を掲げて次の代表者のホログラムを映し出した。
前髪が跳ねたようなキャラクタークリエイトをしていて、可憐な雰囲気を漂わせている少女だ。
無邪気そうな表情で、顔の前に両手をおきピースサインをして映っている。
少女がするには、無難なポーズの選択だ。
そこまで計算されている。
これは俺がよく見る姿のプレイヤーだな。
このゲームを始めてから一番よく見ている顔かもしれない。
「あっ、あれって!?」
ボマードちゃんも気づいたようだ。
「このプレイヤーは瞬発力と対応力、そして連撃が強みのプレイヤーです。
可憐な見た目とは裏腹に極悪非道のプレイヤーキラーであるということも周知されている、自他共に認めるレッドプレイヤー!
ついたあだ名は狂人、蛮族などなどその凶暴性を示すものばかり、西の新緑都市アネイブル闘技場代表は【包丁戦士】っ!」
そう、ホログラムに映し出されたダブルピースをした可憐な少女というのは。
俺だ!
気づいていましたか?
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