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748話 少年探偵ホルムズ

 「ふむ、そろそろ何かが引っ掛かってもおかしくない時間なのだが……

 反響での探知にもめぼしい反応はないようだ」


 俺たちが暗闇の中を歩き始めてしばらく経つが、今のところこれといったものはまだ見つかっていない。

 次元戦争という催しものとしては、この辺りで何もないのには違和感があるぞ。


 「君の言うように、私もそう思う。

 逆説的に考えるのであれば、ここに来るのは早すぎたということになるが……」


 本来なら、今は城塞の中を探索している時間ということなのだろう。

 早く来てもまだイベントが発生していないとかな。


 「それなら一度城塞に戻ってみるかね?

 君の言うような憶測が正しいのであれば、これ以上進むことで得られるものは無さそうだ」


 【ロイス=キャメル】は俺を品定めするかのように、これからの行動についての提案をしてきた。

 確かに俺や【ロイス=キャメル】が言ったように来るのが早すぎただけというパターンは大いにあり得る。

 このまま城塞に戻ってタワーディフェンスに勤しむために力を蓄えておくのが手堅い選択肢だ。



 いーや、このまま進むぞ!


 だが、俺はここであえて直進を選択した。

 この選択には【ロイス=キャメル】も驚いたようで、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。

 そりゃそうだろう、さっきまで撤退の合意をするための誘導を【ロイス=キャメル】は会話に混ぜてきていたんだからな。

 その誘導に乗りそうな雰囲気を出していたのに、突如裏切られたら驚くだろうよ。



 だが、なにも始まっていないということは逆にチャンスだと俺は考えたわけだ。


 「チャンスかね?」


 そうだ。

 後からここに来ても何かに邪魔されて進めなくなっているパターンを思いついたわけだ。

 今は何もなくても急に強いエネミーが壁として立ち塞がってきて、倒さないと進めなくなっていたらここで引き返したことを後悔することになるはずだ。


 それくらいならあえて進み切ってしまうのもアリだと思うぞ!



 「ふむ、一理ある作戦だ。

 私のステッキ次元では思いついたとしても実行しないだろうが、せっかく包丁次元の君と同行するのだ。

 その考えに乗ろうではないか」


 意外にも俺が提案した作戦に乗った【ロイス=キャメル】。

 双方のMVPプレイヤーの意見が合致したことで後方にいるモブプレイヤーたちは胸を撫で下ろして安堵していた。

 ここで意見が食い違って口論になっていたら、最悪戦闘が始まると思って冷や冷やしていた……というところだろうな。







 そんなわけでさらに奥へと進んでいくと、石の台座の上に何やら石像のようなものが置かれている場所を見つけた。

 その石像は人物の姿をしているのではなく、とある道具の形をしていた。


 その形とは……

 

 「釣竿だな。

 何故このような場所に釣竿の石像が置かれているのであろうか」


 そう、なんの変哲もない釣竿だ。

 わざわざこんなオブジェクトが設置されているなんて、不可解でしかない。

 今回の次元戦争には十字架次元とステッキ次元と包丁次元しか参加していないはずだから、釣竿次元は関係ないはずだ。

 それとも次元に関係のない別の暗示なんだろうか……

 


 「そうですよね、実に不可解な謎です!

 ……あっ、先生!

 待っていてもらって良かったのに来てくださったんですね!」


 そんな釣竿の石像の前には茶色のキャップを被った小学生くらいの少年が立っており、【ロイス=キャメル】に気づくと声をかけてきた。

 パッと見探偵のような見た目をしているから、少年探偵を気取っているのだろうか?

 頭上にはピョコピョコと動く犬のような耳が生えていた。

 たぶん【犬獣人】……ってところだな。


 「紹介しよう、この少年は【シャルル=ホルムズ】。

 信頼の証として名前をあえて教えておこう」


 「ホルムズです、よろしくお願いします!

 ボクはステッキ次元では探偵プレイヤーとして活動してます」


 【シャルル=ホルムズ】……有名な推理小説の主人公に語感が似ているぞ?

 探偵のような見た目をしているので、少なからず意識してそうだがな。

 【ロイス=キャメル】といい、ステッキ次元では作家や創作の登場人物からもじる名前が流行っているんだろうか?




 そんな【シャルル=ホルムズ】少年は右手を俺に差し出して握手を求めてきた。

 俺はそれに応える……ように見せかけて拳を突き出して【シャルル=ホルムズ】の顔面を殴ろうとした。


 だが、【シャルル=ホルムズ】少年はそれを掌で往なし受け流していった。

 小さな身体だが華麗な身のこなしで攻撃を凌がれしまったな……

 まあ、俺はプレイヤーキラーだからな。

 体重移動で体術のプロ級の実力があるって分かっていたからあえて仕掛けてみたが、良いものを見せてもらった。


 「先生!

 なんなんですかこの女の子は!

 急に殴りかかってくるなんて恐ろしい人ですね!

 蛮族か何かですか!?」


 シャルル少年探偵よ、俺はそんな野蛮なやつじゃないぞ?

 お前が対応できるプレイヤーっていう前提でやったジャブみたいなものだからな!

 

 「それでも初対面でこれは失礼ですよ!

 プレイヤーキラーかと思いましたよ」


 いや、それは間違ってないけどな。

 俺は包丁次元ではトッププレイヤーキラーとして恐れられているし。

 

 俺がそう伝えるとシャルル少年探偵と、【ロイス=キャメル】はそれぞれ異なる反応を示した。


 「やはり君は素質があるようだ」


 「それ、自分で言うようなことですか……?」

 

 

 


 言うようなことだったり、言わなかったりする……


 【Bottom Down-Online Now loading……】

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― 新着の感想 ―
[一言] なるほど、少年探偵! うちのおじいちゃんたちがザワザワしそうです
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