743話 霞のプロデューサーフラゲ
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
昨日は【黒杖魔導師】にユニーククエストのリークをしてきたんだったな。
【大罪魔】の根本的な問題については魔術的な意味で俺よりも【黒杖魔導師】の方が詳しいだろうから、あいつに任せるのが正解だろう。
俺はさらに根回しを……
そう思っていたが、普段は俺しかいない天子王宮の謁見の間に一人の人物の影が現れた。
山伏のような姿とサラリーマンのような姿をまぜこぜにしたカオスな見た目のやつだ。
基本は山伏衣装なんだが、ネクタイをしていたり、キッチリメガネをキメて、髪は七三分の状態でワックスで固めているようだ。
この時代錯誤な服装をしているやつは前に……生産イベントで一度見たことがある。
ゲーム運営プロデューサーの【山伏権現】だ。
【どうも、ゲーム運営プロデューサーの山伏権現です。
まずは、ここまでこのゲームを楽しんでいただけたようで、プロデューサーとして感謝を!
これからもこのゲームをよろしくお願いします!】
もはやお決まりになった登場時の挨拶を口にしながらも、【山伏権現】は俺のことを見定めるような目で見つめてきている。
このゲーム運営プロデューサーが出てくるってことは、そろそろあれが開催される時期だったということだな。
【【包丁戦士】君が察しているように、次元戦争開催のお時間だ!
はい拍手!】
俺はこれからの次元戦争に想いを馳せながら【山伏権現】が促すように拍手をしていた。
さて、今回はどんな形式の次元戦争なんだ……?
【今回の次元戦争も前回の包丁次元が参加したものと同じで三つ巴……つまり、残り2つの次元が参加するよ!
どの次元が相手なのか今から楽しみだね】
楽しみだね……とか言っているがこの【山伏権現】が対戦カードを作っているんだろうから、本当は知っているはずだ。
【そして、形式だけどタワーディフェンス形式で拠点を守るものになるよ。
質で強さを発揮していたレイドボスとは違うタイプの相手と戦うことになるから、心しておくように!】
タワーディフェンス形式とは自分の領地に次々と侵入してくるエネミーを倒すものだ。
そういうタイプのゲームは、数多くのエネミーが湯水のように現れてくることが一般的だな。
だからこそ、質ではなく量との戦いになるってことだろう。
つまり今回も……
【そう、参加人数は多めに設定してあるよ、鋭いね!
その予測は【包丁戦士】君の経験に依るものかな?】
まあ、そう思ってもらっていいだろう。
大量の相手と戦うのなら、こっちもそれなりの数がいないとただの蹂躙だからな。
……レイドボス相手でも蹂躙はされているけどな。
あの強さ設定も大概だぞ……
【それは面白いからだよ!
君たちがどのような形でレイドボスたちを乗り越えるのか見ることが最大の娯楽さ】
いい性格してやがるな、俺たちは必死こいてなんとかレイドボスを倒していっているというのに!
それを高みの見物……酒のツマミにしてもしているんだろうか。
他人の苦労は蜜の味とも言うし、ある意味一般的感情とも取れるがこの【山伏権現】の場合はもっと別の視点で楽しんでいるように思える。
【上位権限】レイドボスとは違う……またその上からの超越的視点とでも言うのだろうか。
少なくともゲーム運営プロデューサーがするようなものではないのは確かだ。
まるで俺のような……いや、ないか。
【【包丁戦士】君とは違うだろうけど、的外れでもないかな。
ともかくだよ、タワーディフェンス形式は前回の次元戦争とは違って同じ拠点に3つの次元のプレイヤーが集まって協力するものだ。
死に戻りは何回も出来るけど、その分最終評価から減算されるから注意だよ!
分かったかな?】
呉越同舟というやつだな。
同じ拠点を守りながらも、最終的には敵同士というわけだ。
【山伏権現】は明言こそしなかったが、最終評価という単語が出てきたから二回目の次元戦争である【Battle field 特異次元 燃尾之急の鉄心屋敷】でのレイドボスを倒して回るものと似たような評価方法だろう。
戦闘プレイヤーでも生産プレイヤーでも活躍すれば次元の勝利に貢献できるというものだ。
あの時は解析貢献ポイント、支援貢献ポイント、ダメージ貢献ポイントがあった。
今回もそれが適応されるのかどうかは分からないが、【包丁次元】のプレイヤーにはこの辺りを意識して動くように伝えるべきだろう。
【そういうことだね!
君たちの奮闘するところを楽しませてもらうから、手を抜かないで頑張るように!】
【山伏権現】はそう言い残すと、姿を霞のように消していった。
本当に食えないゲーム運営プロデューサーだな……
【楽しみにしているよ!】
【Bottom Down-Online Now loading……】