740話 逆転の発想
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日は昨日考えた【金剛海の輝虎魚】の結晶化毒対策が実際に通用していくのか試していくぞ!
……というわけでやってきました海エリア。
「さて、狂人のアイディアとやらを見せてもらいたいところだ」
「【包丁戦士】ちゃんって変わったことをやらかすって有名だから、私も楽しみね」
無人島にたどり着いて早々に出迎えてくれたのはいつものように【バグパイプ軍楽隊員】と【虫眼鏡踊子】だった。
そんな名の売り方もしてたのか……
まぁ、深淵関係のストーリー進行を独走していると考えたら、他人からはそう見られていてもおかしくはないか。
それに関しては言い逃れするのは難しい気がするし。
というわけでだ、【紅蓮砂漠隊】で今すぐ死んでも問題ないやつっているか?
「さっそく狂人染みた発言だな……
なんだ人柱にでもするのか?」
「とりあえずクランメンバーに声をかけてみるわ。
最悪誰も立候補しなかったら私がその役目をやってあげるわよ」
【虫眼鏡踊子】が立候補してくれたが、その後2人だけ死を恐れない【紅蓮砂漠隊】のクランメンバーが立候補してくれたので、まずそいつを使わせてもらうことにした。
さて、実験を始めようか!
スキル発動!【深淵顕現権限ББ】!
俺がスキルを起動すると、【紅蓮砂漠隊】のモブプレイヤー二人を生け贄に捧げて俺の周りに黒い霧が発生し、いつものように俺の両面の眼球を【アルベー】の邪眼へと削ぎ変えていく。
「うおっ、禍々しい……
俺も【堕音深笛】を使うから深淵の力については少し分かるけど、これは規格外過ぎるぞ!
流石は狂人……」
「【包丁戦士】ちゃん、ここからどうするのかしら?」
まあ、とりあえずここから何もせず【金剛海の輝虎魚】の結晶化毒を浴びてみようと思う。
「浴びるだと!?」
「そんなことして大丈夫かしら?」
それはやってみないと分からないな。
分からないからこそ、本番前に試すわけだ。
ちなみに、この【アルベー】の細胞はデバフに対する強力な耐性を手に入れることが出来る。
これで防げるなら御の字、防げないなら……その時考える!
「行き当たりばったりだなこの狂人……」
「分かったわ!
とりあえずこの餌玉を海に投げて……」
【虫眼鏡踊子】が【金剛海の輝虎魚】を誘き寄せるために、餌玉を海に投げ落とすとそこから餌に食いつくようにして【金剛海の輝虎魚】が海面へと浮上してきた。
【Raid Battle!】
【金剛海の輝虎魚】
【レイドバトルを開始します】
ダイヤモンドのように輝くオコゼが現れた瞬間に俺は腰に提げていた包丁を手に取り【金剛海の輝虎魚】へと斬りかかっていく。
俺が狙うのはもちろん刺々しい背ヒレだ!
【金剛海の輝虎魚】は防衛のために結晶化毒を噴出し、俺に浴びせてくる。
俺は左腕だけで受け止めながら背ヒレをそのまま切りつけた。
……ダメージの通りは一番いいみたいだな。
だが、デバフに対して強い耐性のある【アルベー】の細胞を励起していたのにも関わらず、左腕は結晶化してしまった。
「やっぱり結晶化してるな……
防ぐのは不可能なのか……?」
【バグパイプ軍楽隊員】は諦めの声を吐き出したが、今回の検証でこの結晶化がデバフ扱いではないということが分かった。
つまり、逆転の発想をしてみよう。
あえて防がないってことをな!
「逆転の発想?」
そう、デバフじゃないってことは結晶化毒はバフ……つまり能力向上効果のある支援行動ってことだ。
だから、結晶化したこの左腕で【金剛海の輝虎魚】を殴りつければっ!!!
俺はダイヤモンドのように変貌した左腕で正拳突きを放ち、【金剛海の輝虎魚】の胴体に打ち込んでいく。
【……!?】
「ダメージが通った!?」
「あら、その発想は無かったわね……
【金剛海の輝虎魚】の毒で変質したのだから、【金剛海の輝虎魚】の身体の体質に似せられるということね!
それなら固くても削れるわ!」
そういうことだ!
これを大人数でやればかなりダメージを与えられるんじゃないか?
倫理観が真っ当な【トランポリン守兵】お嬢様が居たら、こんなプレイヤーを湯水のように捨て去る作戦は却下されそうだがこのプレイヤーに人権のないゲームでは【トランポリン守兵】お嬢様の考え方の方が異質で……
「今度【トンカチ戦士】リーダーに掛け合って10人くらいで同時に殴ってみるか……?」
「攻略の糸口が見えたわね!」
俺が目に見えてダメージを与えることに成功した手段をどのように活かすのかを考えている二人が俺の前にいた。
そんな二人を見ながら俺は、全身に結晶化毒が回りきってしまい目の前が真っ暗になり……死に戻りすることとなった!
これが兵器としてのプレイヤーの使い方だ!
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