735話 色と太さ
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
昨日は太い力の流れを見つけたが、ログインしていられる時間が足りなくなったので最終的にログアウトすることになってしまった。
せっかく平泳ぎまでして辿っていたのに残念ではあるが、こればっかりは仕方がない。
ちなみに、ちゃんと水着に着替えてるぞ?
普段のマントのままだと動きにくいからな……
「あら、あなた様も来ていらしたのですわね?
連日の調査をなされるとは思っていなかったので、ダブルブッキングしてしまいましたわ!?
どちらか引きまして?」
浜辺で泳いでいた俺を見つけた【トランポリン守兵】お嬢様がふと声かけてきたようだ。
【トランポリン守兵】お嬢様もきちんと水着に着替えているので、ガッツリ調査するつもりだったのだろう。
だが、予定をズラすつもりだったのに俺と被ってしまったわけだ。
まあ、でも二人で調査したらいけない理由なんてないし、今日は一緒にやってもいいんじゃないか?
一人よりも何か別の着眼点を共有できるだろうし悪くないだろ。
「確かにそうですわね!
あなた様とワタクシでは思考を違いますし、ちょうどいいですわ!」
……ということで今日は二人で調査することになった。
俺はさっそく、昨日の太い力の流れについて【トランポリン守兵】お嬢様と情報共有したが、俺の情報に対して【トランポリン守兵】お嬢様はポカンと呆然とした表情を顔に浮かべていた。
どうした?
「ワタクシではその力の強弱は視ることが出来ませんでしたので、あなた様の両眼の特徴ということですわね。
ワタクシは力の強弱は視れませんが、色で力の性質をある程度ですが見極めることが出来ますわよ!
あなた様は色を視れまして?」
色か……
俺が視れるのは深淵の黒色くらいだな。
【トランポリン守兵】お嬢様の言うようにカラフルさで性質を視ることは出来ない。
「そうなると、ワタクシたち二人で視た方が詳しく力を分析出来ますわね。
あなた様が先ほど仰っていました太い力の流れのものはありまして?」
ああ、【トランポリン守兵】お嬢様が来る少し前に見つけていたんだ。
それを平泳ぎで辿ろうとして少し進んだところで呼び止められたから、今俺の近くで見えるぞ?
そう、これだこれ!
俺はそう言いながら右脇周辺に流れていた力の流れを指差した。
他は糸くらいの太さだが、これは腕の太さくらいある。
「これは……水色ですわね。
ここですと視認しにくいですが、辿れないことはないですわ!
色としては珍しいですわね。
ただ、この海エリアでは多く見られるのであなた様のガイドが無ければ気にかけることの無かったものですわよ」
海エリアでよく見る性質で、より力の流れが太いって……これは当たりなのでは!?
正直力の太さだけでも判断は出来ていたが、【トランポリン守兵】お嬢様に性質を視てもらったのでより確実性が増したように思える。
これは……【トランポリン守兵】お嬢様だけだったら見つけられなかったパターンだな。
プレイヤー自身か、手に入れた深淵細胞に依るものなのかは分からないが同じ【アルベー】の眼でも見ているものが違うのは、今後も覚えておいた方が良さそうだ。
【アルベー】の深淵細胞を持っているのは【トランポリン守兵】お嬢様しか知らないが、レイドバトルで一斉に多くのプレイヤーたちが【アルベー】に攻撃を与えていたんだ。
他に隠し持っているやつがいてもおかしくはない。
そういうやつを見つけて海エリアの調査に引き込めれば、調査難易度が一気に軟化する可能性は高い。
海エリアの調査と並行して、誰かに調査を依頼しておくか……
「ワタクシも探してみますわ!
もしかしたら、ワタクシのクランメンバーで密かに持っているプレイヤーがいる可能性もありましてよ」
俺のクランでも深淵細胞を隠し持っていたやつは居たからな……
騒動に巻き込まれたくないようなやつは表沙汰にしてしないだろう。
そんなことを思いながら俺と【トランポリン守兵】お嬢様は泳ぎながら水色の太い力の流れを辿っていくのだった……
流れが変わったカニね……
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