732話 【短弓射手】の誘い
本日2話目の投稿になります!
前の話を読んでいないかたは前の話からどうぞ!
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日は珍しく【短弓射手】から呼び出しをくらっているので向かっていこうと思う。
というわけでやってきました沼地エリア……【無限湖沼ルルラシア】。
そこでは不機嫌そうな顔のおっさん……【短弓射手】と【リフレクトミラーディフェンダー】……リデちゃん、そして【神殿】製作対抗の次元戦争中に目にしたロープ使いのモブプレイヤーが居た。
ロープ使いのモブプレイヤーは【エヌレッド=シャーク(廻)】と戦ったときにボマードちゃんを背負っていたが、こいつはボマードちゃんのファンであるということしか知らない。
なんで【短弓射手】とリデちゃんの二人と一緒にいるんだろうか。
「あら、お嬢ちゃん来てくれたんだねぇ……
オジサンからの誘いだったから来てくれないかもしれないと思っていたけど、杞憂で済んだみたいで良かった」
「オジチャンっ!
も~、【包丁戦士】が聞いていることに答えてないよ!
このロープ使いの人はジョブ【クレリック】で、私とオジチャンが深淵の黒い霧で継続的にダメージを受けちゃうからその回復をしてくれているのよ!」
「ボマードちゃんが可愛いのはモチロンだけど、リデちゃんも可愛いからね!
可愛い娘からの頼みなら断れないさ!」
立て続けに【短弓射手】、リデちゃん、ロープ使いのモブプレイヤーの三人が話を繋げていった。
ふーん、ゲームによっては回復系のジョブに就いているプレイヤーは蔑ろにされることも多いが、このボトムダウンオンラインではきちんと需要があるみたいだ。
何故か俺は【花上楼閣】による他人からの回復の効果を受けにくい体質となってしまっているから、ジョブ【クレリック】による恩恵はほとんど感じられないがな!
……で、お前たち三人が俺をわざわざここに呼び出した理由はなんだ?
ユニーククエストでの戦いのリベンジマッチってところか?
お前たち相手なら3対1でも受けてたってやるが……?
俺は腰に提げていた包丁を手に取り、臨戦態勢を取りながら俺と相対する三人へと問いかけた。
こいつらが俺を誘う理由なんてそれくらいしか思いつかないからな。
そう問いかけるのが自然だろう。
だが、俺の険呑とした雰囲気を意に介していないのか、【短弓射手】は表情を変えずに丸腰のまま俺の問いかけに答えるべく口を開いた。
「今回はそんな物騒な呼び出しではないんだよねぇ……
オジサン、結構警戒されているみたいだけど今は戦うつもりなんてないよ。
お嬢ちゃんと戦うにはこの戦場だと不利だからねぇ」
……ユニーククエスト前ならともかく、【無限湖沼ルルラシア】は今となっては俺に圧倒的有利な場所になっている。
それはさっきリデちゃんが言ったような深淵の黒い霧によるスリップダメージが大きな理由の一つとなる。
タンクプレイヤーであるリデちゃんや遠距離からタイミングを窺いながら攻撃する【短弓射手】とはとても相性が悪い地形効果だろう。
「そうなんだよ!
【包丁戦士】が勝っちゃったからこんなことになったんだからね!
反省して欲しいくらいだわ」
「はいはい、リデちゃんもその辺にしておいてねぇ……
実力でオジサンたちが負けたんだから、そこを掘り返すのは野暮というものだよ。
……お嬢ちゃんを呼んだのは……これを見てもらえたら分かるんじゃないかねぇ?」
【短弓射手】がリデちゃんを宥めながら指差した方向を見るとそこには六人くらい入れそうな大きいテントと、その前で焚かれている焚き火が目に入った。
そして、そこで積まれているものを見て察することが出来た。
これは……キャンプだな!?
「その通りだねぇ!
こう見えてオジサンはアウトドアが好きでねぇ、お嬢ちゃんのプレイヤーキルを防いだり【荒野の自由】関係で動いている時以外はこうやってキャンプをしていたりするんだよ。
リアルだと気軽に行くのは難しいけど、ゲームの中ならいつでも出来るからねぇ!
オジサンが若いころにはこんなことが出来るなんて思ってなかったからありがたい話だねぇ~」
【短弓射手】はキャンプ好きのオジサンだったってわけだな。
だが、そこに俺が呼ばれた理由とは?
俺にオジサンとキャンプで楽しめということなんだろうか。
「そうだよ。
オジチャンは【包丁戦士】と戦闘じゃなくて、別のことを通して人柄を確認してみたいんだって。
変わってるわよね~」
リデちゃんが耳元に口を近づけてこっそり俺だけに教えてくれた。
【短弓射手】はそんな意図で俺に接触してきたのか……
酔狂だが、悪くはない。
どうせ早急にやらないといけないことなんて無いんだから付き合ってやろうか。
ガハハ!!!
早く戻ってこい!!!
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