730話 【十二天将後六ー土神天空】
「【ブーメラン冒険者】にはスキル【休息万命急急如律令】とスキル【六根清浄急急如律令】を既に教えているが、もうこの辺りは習熟したでおじゃるな!
妾が教えることはここまででおじゃる。
なので、今日は新たな呪術スキルを伝授するでおじゃるよ!」
おおっ、なんだかいいタイミングで【ブーメラン冒険者】に同行できたみたいだな。
まさかここで新スキルの取得に立ち会えるとはラッキーだ。
「ようやく次のステップに進めるんだねっ!
かなり長い期間修行することになったけど、スキルを増やすためにレイドボスを一人で倒すよりは現実的だから仕方ないよねっ!」
……そういえば【ウプシロン】戦の時には既にその2つのスキルは使えていたもんな。
逆にあれから増えてなかったのか……
「呪力は何度も使い続けて身体の中で増幅していくものでおじゃる。
神度のように偶然の行動で上がるものじゃないでおじゃる。
だからこそ、次の段階に進むための呪力が身に付くのを待っていたでおじゃるよ~」
深度や神度は称号さえ獲得できたら勝手に上がっていくし、それとは別のステータスを参照するためなら仕方ないか。
「竜人の力を途中から使い続けてたのも呪力が上がるのが遅かった原因かなっ?
こんなに時間がかかるって分かってたらもうちょっといっぱい使っておけばよかったよ~っ!」
少しだけ気落ちした【ブーメラン冒険者】だったが、次の瞬間には気持ちを切り替えたようで……
「それで、私にどんな呪術スキルを教えてもらえるのかなっ?
これまでのレイドバトルでも色々使っているのを見たけど、どれも格好良かったから楽しみだねっ!」
「まあまあ、そう慌てなくてもきちんと教えるでおじゃるよ!
妾の呪術スキルが格好いいのは分かるが、ちょっとだけ落ち着くでおじゃるよ!」
なんか、いつもレイドバトルで驚き慌てふためいている【タウラノ】とは印象が違って見えるな。
ルル様が【タウラノ】を小者狐と言うように、本来同じレイドボスである相手にも毎回ビビっていたのに、今【タウラノ】が見せているのは上位者としての振る舞いだ。
これは自分が統括しているエリアだからなのか、はたまた教える側に回っているからなのか不明だが意外ものを見せられた気分になった。
内弁慶ってやつだな?
「今回妾が教えるスキルは【十二天将後六ー土神天空】でおじゃる!
十二天将スキルは呪術スキルの中でも上位でおじゃるが、このスキル【十二天将後六土神ー天空】だけは妾が特別に調整を加えたのでプレイヤーでも使いやすくなっているでおじゃるよ!」
【十二天将後六ー土神天空】……ね?
【タウラノ】にピッタリのスキルの名前だな。
天空は十二天将の中で最も卑しい性質を持っていて、不実や損失、中身の無いもの、消耗を象徴している。
そして、欺くことが殆どで信用できない凶将として扱われているから、自らの属する【上位権限】レイドボスである【菜刀天子】を密かに倒そうとしていた【タウラノ】にはこれ以上無いほどマッチしているのだ。
それを自覚していて、そのスキルを特別に調整をかけていたのだろう。
ちなみにだが【タウラノ】が過去に十二天将スキルを使ったのは、595話で【菜刀天子】の【渡月伝心】から俺たちを守るとき【十二天将後五ー金神白虎】を使ったのを一度見ただけだ。
確かあの時に聞いたのは、【十二天将後五ー金神白虎】は【伝播】の力へのメタスキルという話だった。
ということはこの【十二天将後六ー土神天空】も……?
「呪術スキルに対するメタでおじゃるな。
これ以上妾と修行するには、まずこれを覚えてもらわないことにはついてこれなくなるでおじゃるよ」
「何だか凄そうなスキルだねっ!
そんな格好いいスキルが覚えられるなんて光栄だよっ!」
【ブーメラン冒険者】は素直に喜んでいるが、実際のところ使い勝手はどうなんだろうな……
呪術スキルに対するメタを張れたとしても、呪術スキルそのものがマイナーなスキルだから使い道は少なさそうという印象だ。
「じゃから言っておるでおじゃろう。
これは他の十二天将スキルへの足掛けとなるものでとじゃる。
ここから【伝播】や【燃焼】、【生命花】、【流動】……その他の性質にも対抗できるものを少しずつ覚えていくのでおじゃる」
なるほどな。
自分が一番覚えさせやすいものから教えて、その感覚を使用者に刻み込むわけだ。
中々教育としては悪くないだろう。
プレイヤーに積極的にスキルを配るレイドボスなだけあって、その辺りは【タウラノ】なりに考えた結果というわけだな。
それにしても、ここから【ブーメラン冒険者】が色々な性質のスキルに対するメタスキルを覚えていったら【トランポリン守兵】お嬢様とは別方面で厄介な防御系のプレイヤーとして台頭してくるに違いない。
これは俺もウカウカしてられないな……っ!
……。
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