726話 釣れるか釣れないか
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日は海エリアに顔を出してみるか!
【釣竿剣士】も連れてっちゃお!
「なるほど、海エリアにこのような場所があったとは……
釣りしかしていなかったので、漂流して移動するという条件を満たせなかったのは生産プレイヤーとして不甲斐ないですね」
はい、というわけでやってきました海エリア……の漂流無人島(仮)。
【トランポリン守兵】お嬢様と来たとき以来だが、今回は【釣竿剣士】も同伴である。
【Raid Battle!】
【絶深海の総座長】
【???】
【???】【上位権限】【???】
【ーーー海域に適応していないため開示拒否ーーー】
【ーーー海域に適応していないため開示拒否ーーー】
【ーーー海域に適応していないため開示拒否ーーー】
【ーーー海域に適応していないため開示拒否ーーー】
【ーーー海域に適応していないため開示拒否ーーー】
【ーーー海域に適応していないため開示拒否ーーー】
【ーーー海域に適応していないため開示拒否ーーー】
【ーーー海域に適応していないため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
そして俺たちを出迎えたのは、青色の長袖の服の上に赤色のノースリーブ、青色のスカートという派手な服装をしている少女だ。
だが、それ以上に目立ったのはまるで紅葉のように紅い……カニのハサミのような形状をした羽を生やしていることでただの少女ではないということは一目瞭然。
……そう、こいつがこの海エリアの【上位権限】レイドボス【絶深海の総座長】だ!
「レイドクエストの名前で当方のことを毎回呼ばれると鬱陶しいカニね……
これから、当方のことは【カニタマ】と呼ぶといいカニ!」
「【カニタマ】ちゃんですか……
蟹のレイドボスみたいな名前ですね?」
蟹みたいなレイドボスというより、あの姿は蟹そのものだったぞ……
しかもかなりデカイし、防御力も高そうだった。
俺がそう伝えると、【釣竿剣士】の眼が光ったように思えた。
どこか野心に燃えるようなその眼差しは、【カニタマ】へと突き刺さっている。
「蟹の形態になったら是非とも釣り上げさせて欲しいですね!
生産プレイヤーとして水に生息するレイドボスを釣り上げるのは至上命題です!」
蟹釣りか……いや、【ウプシロン】も亀だったしそこは気にしない方がいいんだろうか。
うん、こいつの生産プレイヤーという言葉に惑わされるのは止めておこう。
「当方を釣り上げるのは止めて欲しいカニ……
これでも総座長……取りまとめ役カニよ!
そう易々と釣られたくないカニ」
【カニタマ】はドン引きしながら【釣竿剣士】から距離を取るために後退りしていった。
自分を釣り上げたいという相手の近くに居たくないだろうから、反応としては真っ当なものである。
俺だってそんなやつが現れたら嫌だし……
「……総座長ということは、配下のレイドボスたちもいるんですよね?
ですが、今のところ海エリアでレイドボスを見かけたという報告は聞いていないですね……
クラン【紅蓮砂漠隊】が自作の大型船で航海しているようですけど、それでも見つかっていないですし私もレイドボスがいないと思っていたのですが……」
「それは海域への適応が進んでいないからカニよ。
海を航海した部分が増えればそれでも良し、海産物を身体に取り込むも良し……つまり海域に適応するには色々と手段があるカニ。
でも、それぞれで適応の度合いは違うカニ!
そうやって適応していけばいつか当方の配下には会えるカニよ~!
もちろん例外はあるカニが」
なるほどな?
海での活動を多く、広くしていくとエンカウント出来るってわけか。
プレイヤーを長く同じエリアに居させようという工夫……まるでテーマパークに来たような気持ちだな!
まあ、テーマパークにしてはアトラクションとかは無いけど。
「それが当方の配下たちカニよ!
存分に戯れるといいカニ!
もっとも、プレイヤーたちが勝てるとは思ってないカニね」
これは舐められているな?
いや、身体スペックの差もあるから誰がみてもそういう感想になるのは知ってたけど。
「その配下たちって釣れますか?」
【釣竿剣士】は唐突にそんなことを聞き始めた。
どれだけレイドボスを釣りたいんだよお前は……と俺は呆れていたが……
「……そんな質問をされるとは思ってなかったカニ。
でも、釣れる配下もいそうカニね……
あとはプレイヤーたちの技量と工夫次第カニ!」
「なるほどなるほどなるほど!
これはテンションが上がってきました!
さっそく【槌鍛冶士】さんに色々と相談しないとっ!」
【釣竿剣士】はそう言い放ち、すぐさまログアウトしていった。
……行動が早い!?
あの動きを見るに、あいつのモチベーションが今とんでもないくらい上がっていっているのは間違いないだろうな。
「プレイヤーにも色々居るカニね……」
全くだな。
それをユーが言うのだな……
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