724話 断頭台上の鳴動する阻鴉眼(挿絵あり)
「ふひひっ、本当にやるんですねぇぇ?」
ああ、頼んだぞ【骨笛ネクロマンサー】!
俺は【骨笛ネクロマンサー】にとあることを頼んだ。
それについて【骨笛ネクロマンサー】は怪訝そうな表情を浮かべていたが、一応俺の頼みを聞いてくれたようでそれを実行に移そうとしている。
【骨笛ネクロマンサー】はさきほどボマードちゃんを引き戻した時と同様に蜘蛛糸を噴射して【アルベー】がいる方向へ飛ばしていった。
【アルベー】は蜘蛛糸に自分が直接触れるのを嫌がったのか、黒い霧で生み出していた鏡を割り込ませて蜘蛛糸をガードしてきた。
「ああっ、防がれちゃいましたよ!?
いや~、中々上手く行かないものですね……」
ボマードちゃんは【骨笛ネクロマンサー】による蜘蛛糸が防がれてしまったことを嘆き悲しんでいる。
せっかくの攻撃が防がれてしまったということで落ち込んでいるのだろう。
だが、これは想定済みだ。
いや、むしろ上手く行ったと言ってもいいな!
「えっ、それってどういう……?」
「ふひひっ、こういうことですよぉぉ……」
【骨笛ネクロマンサー】は蜘蛛糸がくっついた鏡を引っ張り、【アルベー】の周りを回っていたのを止めて同じ場所に留まるように糸を手繰り寄せ始めた。
綱引きの要領で鏡の行動を制限するというわけだな。
だが、想定外だったことも発生してしまった。
「ふひひっ、この鏡……思っていたよりも動く力が強いですねぇぇ……
鏡を引っ張るつもりがあてぃしが逆に引っ張られてますよぉぉ!」
鏡との綱引きに負けかけている【骨笛ネクロマンサー】はずるずると回転に巻き込まれようとしていた。
【骨笛ネクロマンサー】の助太刀に行くか否か悩むが……
「ふひひっ、【包丁戦士】さん!
あてぃしに気を回さず【アルベー】に攻撃をしてくださいぃぃ……
今なら鏡のデバフ範囲がほぼ固定されているので攻めるなら今しかないですよぉぉ!!」
「それなら私も一緒に攻めます!
いや~、そろそろアレを使いたいと思っていたんですよ!」
そういうとボマードちゃんは【アルベー】に突撃して、その途中に【アルベー】が展開したデバフサークルに巻き込まれて今にも圧迫死しそうになっている。
「苦しいが……俺様に任せロォ!
スキル発動!【名称公開】!」
ボマードちゃんが放った【名称公開】は【アルベー】へと襲いかかったが、ここで【アルベー】の持つ特性によってデバフは全て俺に共有化されていってしまった。
本来なら【骨笛ネクロマンサー】にもデバフが飛んでいくはずだったが、黒い霧を操作してカーテンを作り上げて対象を俺だけに限定させた。
これで俺の身体が急激に力を失い始めたが、これでいい!
俺もここまで力を温存していたが、【アルベー】を倒した時のことを思いだしあの状況を擬似的に再現すべく行動していくことにした。
浮かしていた狼包丁を手に取り、羽の急加速によって【アルベー】へと接近していく。
そして、瞬時にウインドウ画面を開き称号を急ピッチで変更していく。
俺がこのタイミングで付け替えた称号は……【天の邪鬼】だ!
「ふひひっ、【包丁戦士】さんから力が溢れていますねぇぇ!!!!
これは……っ!!!!」
そして、力が逆転した身体で狼包丁を振りかぶり横凪に斬撃を放とうとした。
だが、その寸前に必殺のスキルを宣言する。
スキル発動!【フィレオ】!
さらにスキル発動!【渡月伝心】!
俺に力を貸してくれぇぇ!!!
【スキルチェイン【フィレオ】【渡月伝心】】
【追加効果が付与されました】
【デメリットが増加しました】
俺が横凪に放った斬撃は延伸するように飛翔していき、3つの飛翔する斬撃として【アルベー】の首を捉えた!
だが、その斬撃は首を一部刈り取っただけに留まりあの時の再現とはならなかった。
ちっ、流石はレイドボス!
あの時とは違って首へのダメージの蓄積が少なかったか……
くそっ、俺の身体はどうなっている!?
せめてどっちかの手は残っているといいが……
俺は次の行動を起こすために、【フィレオ】のデメリットである四肢切断のうちどこが俺の身体に残っているのか確認したが……
!?
俺の四肢は健在、五体満足の状態で【アルベー】の前に身体をさらしていた。
代わりに俺の背後にあった十二枚の羽のうち三枚が砕け散っていたようだが、この羽が俺の部位として認識されたってことだな。
そういうことなら都合がいい!
さらにいくぞ!
スキル発動!【フィレオ】!
さらにスキル発動!【渡月伝心】!
【スキルチェイン【フィレオ】【渡月伝心】】
【追加効果が付与されました】
【デメリットが増加しました】
さらにもう一回!
重ねてもう一回!
加えてもう一回!
俺はこの好機を逃さないように逆風、唐竹割りなど様々な斬撃でスキルチェイン【フィレオ】を4連続で放った。
これで合計十二枚の羽と、俺の両足、そして右腕があらぬ方向へと消し飛んでいき、俺の包丁も上空へと飛んでいってしまったが、十二もの飛翔する斬撃が【アルベー】の首をあらゆる方向から切り取っていく。
全ての斬撃が見事命中しているが、これもここまでの戦いで【アルベー】が疲労していたからこそだ。
【ξБ>/≠БББξξБББ††#」БББББББББ!!!!】
……だが、それでも【アルベー】はまだ息をしていた。
首の皮一枚繋がっているという感じだが、まだ生きているのは確かだ。
そんな【アルベー】は死屍累々な俺を無視して鏡の移動を邪魔している【骨笛ネクロマンサー】に眼光を飛ばしてデバフサークルに取り込んだ。
「ひぎぃっ!!
ほ、【包丁戦士】さ、ん……あと、は、まかせ、まし、た、よぉぉ……」
鏡に蜘蛛糸をつけている状態だったので回避することもかなわず、そのまま圧迫死していってしまった。
そしてここに残されたのは左腕しか残っていない俺と、首の皮一枚繋がっている状態の【アルベー】だけだ。
【БББББББっ】
ハッ、勝ち誇った顔をしてやがるな?
確かにこの状況ならそう思うのも仕方ないだろう。
だが、さっきの攻撃で俺じゃなくて【骨笛ネクロマンサー】を優先した時点でお前は詰んでいるんだ!
その時、【フィレオ】のデメリットで腕と一緒に吹き飛んでいっていた狼包丁が【アルベー】の上空へと舞い戻ってきていた。
二番煎じだが、これで地に伏せ!
断頭台上の阻鴉眼……ってな!
スキル発動!【フィレオ】ォォォォォォ!
そして、袈裟切りの動きをした狼包丁から放たれた飛翔する斬撃によって【アルベー】の眼もろとも首が狩り取られ、深淵奈落の黒い地面へとボトリと落ちていった。
……ということは!!
【ワールドアナウンス】
【レイドクエスト【【鳴動する阻鴉眼】ーБ】がレイドチーム【爆骸乙女隊~深淵を添えて~】によってクリアされました】
【この次元のプレイヤーにスキル【阻鴉邪眼】の第二段階が開放されました】
【レイド参加者へのアナウンス】
【レイドクエスト参加者全員が称号【【鳴動する阻鴉眼】ーБの討伐者】を獲得しました】
【レイドクエスト参加者全員が称号【深淵機構Бを乗り越えたもの】を獲得しました】
【個人アナウンス】
【称号の効果で【Bottom Down】!】
【【包丁戦士】の深度が82になりました】
【称号の効果で【Bottom Down】!】
【【包丁戦士】の深度が83になりました】
【部位破壊ボーナスで【Б細胞】を獲得しました】
【【包丁戦士】が称号【深淵の双眼】を獲得しました】
【称号の効果で【Bottom Down】!】
【【包丁戦士】の深度が84になりました】
【深淵細胞を重ねることが可能になりました】
これで重ねの兵法も可能になったか……
いよいよ我らに寄ってきたのぅ!
カッカッカッ!
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】