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721話 烏の鏡

 【フェイ】とボマードちゃん(ジェーライト)を前衛に、俺を中衛に、【骨笛ネクロマンサー】を後衛にして戦いは今もなお継続中だ。


 前衛の二人(?)が回避をメインに行動しつつ、【アルベー】からのヘイトを集めているお陰で、その後ろにいる俺や【骨笛ネクロマンサー】への攻撃の頻度が極端に減っていっているのが助かる。


 特に俺の身体スペックが驚異的に強化されているので、少し攻撃するだけで一気にヘイトが俺に集まってしまうから俺は【骨笛ネクロマンサー】と一緒に【堕音深笛】による前衛二人へのバフを付与したり、狼包丁を操作して攻撃を遠隔で受け流したりするのがメインとなっている。


 

 俺一人で戦った方が一気にダメージを稼げるのは明らかだが、それでは【ジェーライト】と戦ったときのように蓄えているリソースの差で最終的に負けることも明らかだからな。

 こうやって補助をしつつ、確実に【アルベー】の体力を全員で削っていくのが安牌だ!

 二の足を踏むようなことをせず、深淵に適応できるプレイヤーの仲間を強引にここまで連れてきたのがそもそもそれが理由だし。



 「ふひひっ、あてぃしと【包丁戦士】さんの【堕音深笛】のデュエットは最高ですねぇぇ……

 深い深い音色が響きますよぉぉ……」


 【骨笛ネクロマンサー】のガシャドクロの見た目をした黒い霧が動き回り、俺の黒い霧を巻き込みながら前衛二人にバフを叩き込んでいっている。

 特にボマードちゃん(ジェーライト)の身体能力が少しでも上がるのは戦略的に大きな意味を持つからな、ある意味必須事項だろう。


 虚弱ボディですら巧みに操る【ジェーライト】が、もっと動きやすくなるからな。

 回避盾としての役割をより果たしやすくなるはずだ!




 そんなこんなで、俺たちの戦闘は順調に進んでいっていたのだがここに来て【アルベー】が新たな行動の予兆を示し始めた。




 

 【БББББББББББ!!!!】


 【アルベー】は黒い霧を操作し、宙に漆黒の色を宿す鏡を作り出した。

 つぶらな瞳を思わせるような真円形をした鏡は、【アルベー】の周りを円を描くように回り始めたのだ!

 




 主を守る盾の如く動き回る鏡を見ていると、【トランポリン守兵】お嬢様が空中に生み出すトランポリンをどことなく思い出されるな。


 ……もしかして、こういう【トランポリン守兵】お嬢様染みたことが元々出来たから【アルベー】は【トランポリン守兵】お嬢様を気に入って身体に吸収されているのかもしれないな。

 生前(?)と似たようなことを再現できるのなら、【アルベー】にとっても都合がいいだろうし。



 


 そんな回転する鏡と【アルベー】との間に挟まれてしまったのは……【フェイ】だった。

 回避盾として前衛で奮闘していたのが仇になってしまった。


 【アルベー】と【フェイ】と鏡が直線上に並んだとき、【フェイ】の身体の動きが急激に鈍り……そして身体ごと地面に突っ伏すこととなってしまったのだ。


 「こ、これは【アルベー】によるデバフ……!?

 し、しかし、デバフサークルには足を踏み入れていないはず……っ!?」


 【フェイ】は突如として身体に襲いかかった負荷に困惑しつつも、そこから脱出しようともがいている。

 しかし、レイドバトルでの一瞬の停滞は文字通り死を意味することとなるのだ。


 

 【アルベー】は眼前で身動きのとれなくなった【フェイ】を睨み付けると、その両眼を【フェイ】を見つめることだけに集中させているようだ。


 そして、漆黒を宿した眼光が【フェイ】へと重くのし掛かり【フェイ】がひしゃげ始めた。

 


 「がっ……!!

 ふごぉ……こ、れ、は……

 む、り、で……す……よ……」

 

 【フェイ】は息絶え絶えに断末魔を遺すと、そのまま重力に押し潰されたかのように圧迫されてしまった。

 【フェイ】がいたであろう場所には骨の破片が飛び散り、それ以外には何も残っていなかった。




 「ああっ、清純そうな方の【包丁戦士】さんが無惨な姿に!?

 いや~、ショックです……」


 「油断するなヨォ~?

 イャ~、次にああなるのは同じように前に出てる俺様たちなんだからナァ!

 俺様は【アルベー】に負けるつもりは無いが、この宿主様の身体だと限度があるゼェ!

 そら、スキル発動!【魚尾砲撃】!」


 「潰されるのは勘弁して欲しいですよ、【ジェーライト】さん頑張ってくださいね!

 いや~、私の戦闘技術だとこの戦いにはついていけそうにないので……」


  

 ボマードちゃんと【ジェーライト】による会話が繰り広げられているが、【ジェーライト】の戦闘センスによってその身体は鏡の間合いに入らないようにしながらも、攻撃の手を抜かずに【魚尾砲撃】を放ちヘイトを散らしていっている。



 プレイヤーでここまで回避盾としての役割を果たせる人材は包丁次元だと片手で数えられるほどしかいないので、素直に助かるな。


 「ふひひっ、あてぃしも次への布石の準備をしますよぉぉ……

 しばらくは【堕音深笛】のバフだけで我慢していてくださいぃぃ……」



 こうして、俺たちは【フェイ】という手駒を失いつつも、次なるステージへと進もうとしていた。








 あれを突破するのは骨が折れると思うがのぅ……


 【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】

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