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716話 深淵特許許可局

 「ではそろそろ、【包丁戦士】が持ってきた【失伝秘具】を見せてもらおうか」


 まあ、俺が持ってきたと言っても第3陣プレイヤーの後輩たちから徴収してきたものだがな。


 まずはこれだ。

 【バットシーフ】後輩から恐喝して手に入れた【失伝秘具】の【洛落陽葉】だな。

 葉のような見た目をしているが、【バットシーフ】後輩ではこの【失伝秘具】【洛落陽葉】の使い方が分からなかったらしいし、俺が見てもこの葉の使い方は検討もつかない。

 【洛落陽葉】という名前からして、この世の栄誉は去ってゆく感じがするがそれが効果に関係するか不明だ。



 「ふん、やはり【包丁戦士】が持ってくる【失伝秘具】には妙な因果を感じるのぅ……

 これは我の配下がかつての次元天子や聖獣たちとの対戦の際に失ってしまったもの……の一部のようだ。

 これ一枚で何が起きるというわけではないが、持っているエネルギーを利用して純粋に我の力の行使の補助くらいには使えそうだのぅ……

 それよりも、別の使い道はあるがこの破片だけではそれが限度か」


 この葉一枚では真の形ではないということか。

 それなら【バットシーフ】後輩や俺が使い道を見出だせなかったのも納得だ。

 

 ただ、一枚で【失伝秘具】足り得る潜在能力の高さを驚嘆すべきなのか、断片となってしまうような脆弱性を嘆けばいいのか複雑な気分でもある。


 

 「あの戦闘狂が暴れておったところに強引に突っ込んで行ったらそうもなってしまうのぅ……

 活路を拓くためとはいえ、惜しいことをしたな」


 ルル様の言う戦闘狂とは新緑都市アネイブルで俺たちの前に立ち塞がっていた聖獣の【ミューン】のことだろう。

 ルル様は聖獣たちをそれぞれの行動から取ったあだ名で呼ぶからな。


 さっきも言った【ミューン】は戦闘狂、【ウプシロン】は暴飲暴食、【クシーリア】はナルシスト、【タウラノ】は小者。


 ちなみに、【オメガンド】のことは何と言うのか聞いたことはない……はず。

 俺が覚えていないだけかもしれないが……


  

 「暴食って【包丁戦士】さんがたまに流すアナウンスにも出てくる言葉ですよね!

 いや~、実はあの【ウプシロン】さんと【包丁戦士】さんって気が合うのかもしれませんね!」


 それはどうだろうか?

 同族嫌悪って言葉もあるくらいだ。

 似ていても、反りが合わないことだっていくらでもあるさ。


 それにそもそも、俺の【暴食】はプレイヤーキルを対象にしているから、おそらく【ウプシロン】の飲食関係とはまた別物だと思う。


 「ふひひっ、あてぃしもそうおもいますぅぅ……

 同じ文字でも別のことを指しているのは明確ですからねぇぇ」


 「ええっ、そうなんですか!?

 いや~、初耳ですよ!?」


 わざわざ言わなくても分かることだと思ってたから説明しなかったんだよなぁ……

 






 「……」



 あっ、ルル様が早く次に進めろという雰囲気を出している。

 怒っているわけではなさそうだが、若干呆れられているな……

 普段は俺とルル様のタイマンでの会話がメインだったから、その時よりもルル様への対応が疎かになっているのは迂闊だった!

 【コラテラルダメージ】のクランメンバーたちと話すと、どうも話が脱線してしまう傾向にあるぞ……

 急いで軌道修正しないと……


 そう思い、俺は次の【失伝秘具】を取り出してルル様の触手の上に載せていった。

 今度は【フランベルジェナイト】から譲ってもらった【失伝秘具】の【地這連丮】だ。

 手袋のような形をしている装備型【失伝秘具】だな。

 


 「これは我の直属の配下で扱えるものは少ないのぅ……

 ジェーライトもアルベーもファイヌルも【蕭条たる百足壁】も、そして我も四足歩行はしないからのぅ……

 そもそも足が四本ではない故に、条件に適合しないのだ」


 ……【失伝秘具】の効果を見破ったのは流石だよなぁ……

 でも、言われてみるとジェーライトは足が無いし、アルベーは三本足、ファイヌルは八本足、今は谷底にいるデカブツムカデは……数えたことはないがレイドクエスト名的に百本足だろうな。


 そう考えると、この【失伝秘具】ってルル様にとって価値が皆無に近いんじゃないか……?

 

 

 「我らが直接有効的に使う……には難しいが、深淵獣なら話は別だのぅ。

 深淵獣は力が定まっておらぬ故に、外部からの刺激を得て形を変える……この前のユニーククエストで勝利した結果プレイヤーでそれに関与することが可能になった。

 そのような関与でもっと四足歩行の深淵獣を生み出せるであろうな。

 この【失伝秘具】があれば……我も助かるであろうな」



 ……ん?

 ルル様が助かる……?

 どういうことなんだ……


 俺はルル様の言葉に引っ掛かりを覚えたが、ルル様はそんな俺に気にすること無く話を進めていく。

 


 「ふむ……数が規定数を越えていて、性能も申し分ない。

 それに用途も分かれているとなれば、お前たち二人にも【Bottom Down-Online The Abyss】を使用する許可を出してやろう。

 ただ、お前たち二人ではこれを広めることは出来ないという制約はかけさせてもらおう。

 あくまでも、自力でこの域に達した【包丁戦士】に付随するものであるということをゆめゆめ忘れるでないぞ……」


 「いや~、分かってますよ~!

 あっ、今インストールされてますね!

 【包丁戦士】さんと深淵奈落をラブラブデート出来るなんて嬉しいですね~!」


 「ふひひっ、とりあえず何とかなりましたねぇぇ……

 これであてぃしが人に会わずに自由に散策できる場所が増えましたよぉぉ……」



 お前ら……深淵奈落を一体何だと思ってるんだ……?

 場違いな発想の二人に、思わずため息をつく俺なのだった……








 ほどほどにするのだぞ……?


 【Bottom Down-Online Now loading……】

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