703話 夢幻深淵(挿し絵あり)
【Raid Battle!】
【深淵域の管理者】
【エルル】
【???】【上位権限】【ボーダー】
【ーーー深度不足のため未開示ーーー】
【深淵へ誘い】
【冒険者を堕とす】
【深き真価を見極め】
【境界に流転する】
【封印された夢想が解き放たれし時】
【ーーー深度不足のため未開示ーーー】
【ーーー深度不足のため未開示ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
昨日は新たなスキル【夢幻深淵】を得たり、夢幻の力を鍵に宿したり、【失伝秘具】の【深淵異本】を手に入れたりした。
そこで時間が無くなったのでログアウトしたが、今日はそれらを確認していこうと思う。
「それで我のところにいるというわけだな。
カッカッカッ、それならば見届けてやろう」
ルル様は意図的に都合が悪いことを説明しないことがあったりするが、基本的なことについては親切に教えてくれるのでそれを利用して説明係として居てもらうことにした。
「【夢幻深淵】だが、その銀鍵に秘められた夢幻の力を使う必要がある。
禁書を解き放った銀鍵は【荒野の自由】が保有していた【失伝秘具】【クロックギア】と同様にエネルギーを溜め込む機能が備わっておるはずだのぅ……
そのエネルギーを使い【失伝秘具】である【深淵異本】を起動するスキルと考えておればいいだろう。
【深淵顕現権限】や【深淵纏縛】と同じように起動状態は常に保っておけるわけではない。
銀鍵に溜め込んでおる夢幻エネルギーが無くなった時点で終了するのだ」
つまり、【失伝秘具】の【夢幻銀鍵】と【失伝秘具】の【深淵異本】……そしてスキル【夢幻深淵】は3つでワンセットということだな。
手に入れた経緯からしてもそんな感じはしていたが、案の定といったところだな。
【失伝秘具】であるからして個々で別の使い道が無い……ということは無いだろうが、ルル様が説明しない以上は今必要ない情報かルル様にとって不都合な情報なんだろう。
とりあえずスルーしておこう。
「ほれ、夢幻エネルギーが溜まっているその鍵を解放して【夢幻深淵】を使ってみるがいい。
そこからどうなるのかは我としても見物である故に楽しみだのぅ……」
そこはかとなく不穏な発言だが、ルル様がやってみろというのなら最悪の状態になることはないと信じるしかない。
【失伝秘具】【夢幻銀鍵】起動!
俺は【失伝秘具】【夢幻銀鍵】に深淵の黒い霧を纏わせると、それに反応した鍵が空中に浮かび上がりその場で高速回転し始めた。
この高速回転はキリゲーの時もあったな!?
深淵の力が作用するときの反応の一種なんだろうか。
そして、その鍵が空中に二メートルほどの漆黒の大きな鍵穴を作り上げた。
……この中に入ればいいのか?
そう思っていたが、鍵穴に入ろうとした俺をルル様は寸前で止めてきた。
「待つのだ、そのまま入ればその身体が朽ち果てることになるかもしれぬぞ?
故に、入る直前でスキル【夢幻深淵】を使い身体を保護してから入るのだ。
それを忘れても我は安全を保証出来ぬのぅ……」
よしっ、それなら……
スキル発動!【夢幻深淵】!
俺がスキルを発動させると夢幻エネルギーと呼ばれるミチのエネルギーと深淵の力が同時に膜のように俺の身体に張り付き始めた。
そして俺は鍵穴へと走り抜けていく。
鍵穴の中に入ると四方八方が真っ暗で何も見えない空間が広がっていた。
そして、今の俺ではここから身動きが取れないようになっているようだ。
どうやって脱出したものか……と考えていたが、俺の身体に張り付いていた夢幻エネルギーと深淵の力が俺の内部構造を書き換え始めた。
まるで【深淵纏縛】を思わせる……ということは俺にこの後起こることは……
っ、変身だ!
俺の身体に纏わりついた深淵の霧が体内構造を変化させながら、俺の新たな服装となる。
俺の装備は黒色が基調で、赤色のラインが入ったセーラー服となった。
これは内部情報の性質を考えなければコスプレのようなものだろう。
そしてその後には、俺の背後には紫色の瞳のような形をした羽のようなものが左右に合計12枚出現した。
ルル様の翼と違い俺に直接生えるのではなく、背後に浮かぶ形だな。
俺が動くとそのままついてきてくれるタイプだろう。
ただ、見た目が怖いな……
こんなのが四六時中後ろからついてきていたらノイローゼになること間違いなしだ!
最後に、俺の包丁にも変化があったようだ。
銀色の鍵……【失伝秘具】の【夢幻銀鍵】を刀身へと取り込むと姿を大きく変え始めた。
包丁の鍔には六匹の狼の頭が現れ、刃を呑み込もうとするかのように威圧感をしてしている。
柄には毛皮がびっしりと生え、末尾には六本の茶色の尻尾が生えた。
これはまさか……【修練武器上位解放】か!?
蛇腹剣次元の【マキ】がチュートリアル武器である蛇腹剣を巨大な蛇に変化させていたから、同じように狼の姿を模した装飾がついたので同じ現象かと思ったのだ。
「カッカッカッ、これはお前の身体ステージが強制的に押し下げられているからこそそれに引っ張られて姿を変えたのだ。
本来の【修練武器上位解放】と比べると不完全な状態ではあるが、それに近いものにはなっておるはずだ」
そんやケルベロスもビックリな六匹の狼の頭がついた包丁は、俺の手から離れて空中をひとりでに動いている。
自律しているのかこいつは……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】