698話 骨骨トーク
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日は【骨笛ネクロマンサー】に会いにいくか!
あいつは基本的に引きこもりだから、俺から顔を見せにいかないと会う機会が殆ど無いのだ。
というわけでやってきました岩山エリア……【堅牢剣山ソイングレスト】。
ここに【骨笛ネクロマンサー】の拠点がある。
洞穴の中という薄暗い場所だが、性根が根暗な【骨笛ネクロマンサー】はこの雰囲気を気に入っているらしい。
俺には分からない感覚だが、「広くなくて明るくないからちょうどいいですぅぅ……」とか言っていたな。
「ふひひっ、その通りですよぉぉ……
この暗さがクセになるんですぅぅ。
……それで、【包丁戦士】さんはどうしてここに来たんですかぁぁ?」
間延びしたような、エコーのかかったような不思議な喋り方の【骨笛ネクロマンサー】がどんな用件で俺がここに来たのか尋ねてきたな。
別にこれといった用事があるわけじゃなく【骨笛ネクロマンサー】、お前の顔を見たくなっただけだぞ?
「ふひひっ、ナンパみたいなこと言いますねぇぇ……
それはあてぃしじゃなくて、ボマードちゃんにしてあげてくださいよぉぉ。
きっと喜びますよぉぉ……」
あいつは何をしても喜ぶから、今さら気にかける必要もないだろう。
それに、自然と会う機会も多いからな。
だが、【骨笛ネクロマンサー】は違う。
ユニーククエストの時はなんだかんだ戦場にかなり常駐してくれていたようだが、それ以降ほとんど引きこもっていたんじゃないのか?
他のクラン【コラテラルダメージ】のメンバーに聞いても、最近お前と会ったやつが誰もいなかったぞ?
「ふひひっ、あの戦いで色々使ってしまいましたからねぇぇ……
アイテムを作り直しているんですよぉぉ……
あてぃしは消費アイテムや素材を使うので、しばらく再起不能になっていたんですよねぇぇ……」
骨粒とかだな。
骸骨を使役するのにも使うんだろうし、他のスキルでも消費してるっぽいからな……
そういうのを触媒って言ったりもするな。
「ふひひっ、深淵獣を操れるようになってから多少はマシにまりましたけどねぇぇ?」
そう、前の戦闘中に気になっていたが深淵獣に外骨格を装着させてたよな。
あれってどういう仕組みなんだ?
あんな芸当をやっていたのは後にも先にもお前くらいだったから一切詳細が明かされてないんだが。
「ふひひっ、【包丁戦士】さんもあれが気になるんですねぇぇ!
あれはあてぃしのability【粉骨再身】で集めた深淵獣の粒子を生きている深淵獣に纏わせているんですよぉぉ!
そしてあの外骨格を経由して深淵獣を操っているんですよぉぉ」
ちょっとテンションを上げながら語り始めた【骨笛ネクロマンサー】。
自分の研究(?)を発表できて嬉しいんだろう。
こいつが大人数の前で発表することなんてないだろうから、俺相手くらいしか言えそうな相手が居なかったんだろうな……
……それにしても、深淵獣の粒子を集めたって?
おいおい、話が違うんじゃないか。
ability【粉骨再身】で集められるのはキルされたプレイヤーの粒子だけじゃなかったのか。
前にお前からそう聞いたんだが……
俺が問い詰めるようにぐいっと近寄ると【骨笛ネクロマンサー】は何故か頬を赤らめて顔を背けてしまった。
なんで顔を背けるんだ。
「ふ、ふひひっ、【包丁戦士】さん顔が可愛いので近いと恥ずかしいですぅぅぅ……」
ボマードちゃんみたいなこと言うなよ……
いや、こいつの場合は人と接触する機会が少ないから耐性がないのか。
俺は可憐な乙女だから照れて直視出来ないのも頷ける話だ!
はっはっはっ!
ちょっと嬉しいぞ。
「ふひひっ、【菜刀天子】と戦ってから不思議とabilityの使い勝手が良くなったんですよねぇぇ……
あの【渡月伝心】を相殺した時から……ですかねぇぇ
【黄泉月心】は自発的に使えないですけど、あの時の感覚が活きてるんですかねぇぇ?」
そういうものなのか?
俺にはよく分からない。
だが、限界を超えた力を使った後だとそれまでの抑えていた力を制御しやすく感じることはあるから、その感覚に近い……と想像してみる。
俺も【深淵纏縛】で限界を超えた力の行使を続けているうちにその下位スキルである【深淵顕現権限】をある程度こなせるようになったし。
「ふひひっ、そういえば言おうと思っていたんですけど今度空いているときに深淵奈落に連れていってくださいぃぃ……
あてぃしなら適応出来そうな気がするんですよぉぉ」
ふーん、それなら今度試してやるか?
こいつは色々と異質だから案外何とかなったりするかもしれないし。
カッカッカッ、我のところまで来れるかのぅ……?
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