690話 突入!海エリア!
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日はそろそろ新しいエリアに足を踏み入れてみようと思う。
ユニーククエストやら次元戦争やらで後回しになっていた海エリアのことだ!
無限湖沼ルルラシアを抜けたさらに奥にあるって話だから、アクセスが非常に悪く取っつきにくかったが今は差し迫った用事もなく、【槌鍛冶士】の鍵の完成を待つばかりなので悠々自適に向かうぞ!
というわけでやってきました沼地エリア……無限湖沼ルルラシア。
俺はこれまで先に進むことのできなかった場所の境目周辺で辺りを見渡していた。
【菜刀天子】を倒してロックを解除するまでは行き止まりになっていてあらゆる手段を試しても通行不能だった。
そして、風景も沼地が延長されているだけだったはずなのだが、今は不自然なほど急に景色が切り替わっていた。
ぬかるんだ沼地が足元に広がっていたのが、とある境目を線にして砂浜に変貌しておりその先には広大な大海原が存在していたのだ!
砂浜には釣りをしているプレイヤーや、海水浴を楽しんでいるプレイヤー、バーベキューをしているプレイヤーなど様々なやつらがレジャーを楽しんでいた。
……のどかだな、おい!
もっと荒れ狂った波が押し寄せる極限のような環境を想像して挑みに来たんだが、拍子抜けしたぞ。
まさかこんなに観光地のようなエリアがあるとはな。
俺がそんな風に脱力していると背後から誰かが近づいてきている気配がした。
俺はプレイヤーキラーだからな、気配には敏感なのだ。
そんな気配の主が俺に語りかけてきた。
「これは【トンカチ戦士】様がこの浜辺を開拓したからですわ!
あの深淵獣と機戒兵のユニーククエストの最中も、最後の決戦時以外はここで開拓作業をクラン総出で行っていたと聞いておりましてよ」
うんちくを俺に語り始めたのは、ゴスロリ風の服装の金髪ツインテドリルの女プレイヤーである【トランポリン守兵】お嬢様だった。
岩山エリアを活動の拠点にしているはずだがこんなところで会うとはな……
【トランポリン守兵】お嬢様は何の用事で来たんだろうか。
「あら、単純なことでしてよ?
海水浴をこちらでさせていただきたく思い、お忍びで足を運ばせてもらいましたわ!
ここで海水浴を出来るのもクラン【紅蓮砂漠隊】のメンバーたちの尽力があってこそですわ」
さっきも言っていたが、噂の【紅蓮砂漠隊】がここでどんな開拓をしていたというのだろうか。
一見すると開拓する必要のない平和な砂浜にしかみえないんだが。
「あなた様は気づかれませんでしたのですわね?
こちらの砂浜は岩山エリア……堅牢剣山ソイングレストから運搬した岩盤を土台に、スキル【想起現像】で発生させた砂を敷き詰めたものでしてよ!
砂浜が赤いので気づいていると思いましたわ」
……海に気を取られてあんまり意識していなかったが、あの砂浜って真っ赤じゃん!
なんで気づかなかったんだろうかと自分でも思ってしまうが、海という環境にテンションが上がっていて視界が狭くなっていたのかもしれないな。
というか、よくもまあそんな大開拓をやろうとしたな……
【トランポリン守兵】お嬢様からの情報を鵜呑みにするのなら、沼地から出てすぐに海だったっぽいが結構な範囲に砂浜が広がっていることから、その苦労が偲ばれる。
……いや、待てよ?
砂浜が人工的に広げられたものならなんで無限湖沼ルルラシアとの境界線でくっきり砂浜が途切れているんだ?
システム的に作られたものなら理解できるが、人工的にこんな風に不自然にする必要はないはずだが。
「それは、無限湖沼ルルラシアとこの海エリアの性質の違いですわ!
【想起現像】は機戒種族のスキルですので、深淵の力が蔓延するようになった無限湖沼ルルラシアでは相性が悪く、通常の赤砂では長時間持たないのですわよ。
それとは逆に、この海エリアでは砂が持続して残る……というよりは消えないのでしてよ!
ワタクシも驚きましたが、【検証班長】様がクランメンバーを集めて効果時間を計測しておりましたので間違いはないと思いますわ」
へー、エリアにもそんな性質の違いがあったのか……
勉強になるなぁ。
もしかすると、他のエリアにもそんな感じの特色があるのかもしれない。
俺が詳しく調べることはないと思うが、【検証班長】がこの情報を知った時に歓喜していたであろうことは、ありありと想像できてしまった……
「【検証班長】様ですから……」
【トランポリン守兵】お嬢様が遠い目をしていることから、俺の想像が正しかったという証明がされてしまった。
ガハハ!!!
【検証班長】は【邪神像】を作るときも高頻度で興奮していたぞ!!!
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