687話 新緑都市アネイブル拡張
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
先日は次元戦争で無事勝利をおさめたわけだが、気になることもあるからな。
あの戦いの後、他の次元のリソースを吸収したというアナウンスが流れていた。
【槌鍛冶士】の件で一旦考えるのを止めていたが、日を改めてログインした今はそれの確認をすべきだろう。
というわけでやってきました新緑都市アネイブル。
まずほのぼの市場に来てみたが、そんなに変化は感じられなかった。
人の賑わいや、景色、雰囲気などにも特にこれといったものはない。
他にも変わったことがないか市場を歩いていると、ふと知らないモブプレイヤーの会話が耳にはいってきた。
「おい聞いたかよ!」
「何かしら?」
「新緑都市アネイブルに新しいマップが実装されたって話だ!
何でも、これまで見たことのない場所が急に出来ていたってことらしい」
「へー、面白そうね!
今から行ってみましょうよ!」
「ああそうだな!
南西方面に広がってるらしいし、ちょっと見てこようぜ」
……なるほど、新マップが実装されたのか。
次元戦争の舞台も新緑都市アネイブルの亜種みたいなものだったからな……
そんなわけで、新緑都市アネイブルの南西に来てみたがそこには小川が流れる新緑エリアが広がっていた。
これは丸々【Battle field 特異次元アネイブル】と同じ景色だな!?
少し前に見た地形配置をしていたから、おそらくはそうなんだろう。
蛇腹剣次元とピッケル次元から奪ったリソースで再現したというところだろうか。
包丁次元に元々設置されていた新緑都市アネイブルと比べると原始的な風景だが、あそこは深淵獣が増えて手狭になっていっていたからな。
こうやって土地が増えると開拓し甲斐もあるというものだろう?
現に建築系の生産プレイヤーたちが俺の目の前で土地の整備をやっているからな……
「あっ、【包丁戦士】さんも来ていましたか!
この魚が釣れそうな新エリアは生産プレイヤーとして見逃せないですから当然ですよね!」
当たり前のように俺の背後に立っていたのは釣竿を肩にかけている花飾りを髪につけた少女、【釣竿剣士】だった。
釣りが出来そうなところには何処でも現れるな……
多分だが、俺がまだ行けていない海エリアにも釣りに行ってそうだ。
というか【釣竿剣士】の性格的に行っていない方がおかしいと言えるだろう。
「流石【包丁戦士】さん、生産プレイヤーの何たるかを理解しているようですね。
海エリアも面白いところなので実際に行ってみてください」
気が向いたらな?
ユニーククエストとか次元戦争とかで時間を取られていて海エリアに向かう余力も無かったから、今後は行けたら行くとしよう。
【釣竿剣士】はこの新緑都市アネイブルの新マップ、どれくらい探索したんだ?
あの次元戦争の時と何か変わりがあったか知りたいんだが……
俺がそう問いかけると、【釣竿剣士】は勿体ぶることなくすぐに答えてくれた。
「基本的には似たようなものですね。
ところどころ違うところもありましたが、誤差の範囲でした。
【包丁戦士】さんが見つけたという鉱山もそのままありましたし」
へー、鉱山も残ったままなのか。
ということは他の次元のプレイヤーが作った【神殿】とか拠点もそのままなのか?
「どうやらそれは無いみたいですね……
人工物は全く見つけられませんでした。
そして、あの巨大な虫眼鏡もありませんでした。
生産プレイヤーとして非常に残念です」
ちっ、地味に虫眼鏡が残っていることを期待したが、流石にそこまで甘い話は無かったようだ。
そうして歩いていると、不意に無機質な脳内アナウンスが鳴り響き始めた。
【Raid Battle!】
【想起砂漠の現像鮫(廻)】
【エヌレッド=シャーク(廻)】
【機戒鮫】【砂塵潜鮫】【イリュージョンテイマー】
【幻想を引き連れ再臨した鮫は何を見せるか】
【レイドバトルを開始します】
そうか……こいつもそのまま連れてきたことになったのか!?
包丁次元に連れてきたからか、しれっと情報がオープンされた状態になっているのであの時よりも戦いやすくなっているはずだ。
「うわっ、砂漠エリアの鮫がこんなところで復活してやがる!?」
「ぐわいあああああああああぁ!!!」
「なんで来た瞬間にキルされてしまうんだ俺……」
「( 'ᾥ' ) ギリィ」
……まあ、倒しやすくなっているといってもレイドボス討伐総力戦相当のメンバーを集めている前提の話だがな!
案の定、スナック感覚で【エヌレッド=シャーク(廻)】に攻撃されて光の粒子となっていくモブプレイヤーたちを横目に俺は逃げ帰ることとなったのだ。
偶然とはいえ、ミーの眷属が復活したのは喜ばしいことだ。
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