686話 形を取り戻した包丁1
祭壇に突き刺された【大深罪鉄林包丁】がエネルギーを吸収し終えると、今度は【神殿】そのものと一体化し始めた。
【神殿】と一体化した【大深罪鉄林包丁】は、包丁の姿から形を変え始めていく。
上下左右に伸びていき、それぞれの方向に伸びた部位が別々の姿を取り始めていったのだ。
そして、無機物であったはずの包丁が鼓動をし始めた。
そのまま色や機能まで変わっていき、最終的に人の形を取ったのだ!
おーい、元気か~?
俺はそんな人影に対してまるで慣れた様子で声をかけていった。
そんな俺の叫び声が【神殿】の中で山びこのように響き渡ると、少しだけ離れたところにいた人影が迫ってきた。
その大きな人影は、一見すると威圧感があるのだが、俺には馴染みのある姿だ。
俺は全くの初対面のやつに馴れ馴れしくしたわけじゃない。
出来上がった人影……この見た目からして暑苦しいガチムチのおっさんは俺の一心同体にして、このゲームで一番信頼している男……
「ガハハ!!!
ワシに元気さを問うとは無意味なことだ!!!
もちろんいつも元気に決まっているからな!!!」
そう、【槌鍛冶士】だ!
……っ、待ってたぞお前の復活を!
【ワールドアナウンス】
【【鉄血森林の森人君主】が復活しました】
【【神殿】機能により復活したため【鉄血森林の森人君主】の【上位権限】を機能制限をつけた上で再実装します】
【Raid Battle!】
【鉄血森林の森人君主】
【槌鍛冶士】
【メイン】ー【鉄血森人君主】【上位権限(神殿)】【エンチャントスペシャリスト】
【サブ】ー【失伝秘具】【幻界超技術】【プレイヤー(偽)】
【甦った隠者は再び唯一無二の相棒を選んだ】
【レイドバトル同時発生につき難易度が上昇します】
【レイドバトルを開始します】
【ディメンションバトル】
【包丁の煌めき】
【蛇腹剣の冬眠】
【ピッケルの揺れ】
【神殿が完成されました】
【【包丁次元】WIN!】
【【包丁次元】が1位次元の勝利特権で【ピッケル次元】と【蛇腹剣次元】のリソースを吸収しました】
【【ピッケル次元】が5位に降格しました】
【【ピッケル次元】の一部エリアの規模が最低限まで縮小しました】
【【蛇腹剣次元】が7位に降格しました】
【【蛇腹剣次元】の一部エリアの規模が最低限まで縮小しました】
【勝利報酬は王宮にて選択してください】
【個人アナウンス】
【【包丁戦士】が暴食の力により称号【『sin』次元の暴食者】を獲得しました】
【称号の効果で【Bottom Down】!】
【【包丁戦士】の深度が77になりました】
【【包丁戦士】が称号【次元の奉納を受けた天子】を獲得しました】
【称号の効果で【Deification】!】
【【包丁戦士】の神度が大幅に上昇し神度が40になりました】
【【包丁戦士】が称号【深淵なる神殿の完成者】を獲得しました】
【称号の効果で【Bottom Down】!】
【【包丁戦士】の深度が78になりました】
【【包丁戦士】が称号【森人の生還(仮)】を獲得しました】
【称号の効果で【Bottom Down】!】
【【包丁戦士】の深度が79になりました】
そうして次元戦争が終着し、俺と【槌鍛冶士】は新緑都市アネイブルの天子王宮へと戻ってきた。
こうやって【槌鍛冶士】と次元戦争から戻ってくるのは一番はじめの次元戦争である蛇腹剣次元との戦い以来だ。
だが、あの時よりも感慨深いものがあるな!
こうやって【槌鍛冶士】が再び姿を取り戻してくれたからな。
「ガハハ!!!
それはお前のお陰だ、ワシも感謝しておるぞ!!!
【神殿】の完成に使った【失伝秘具】がワシの作った【大深罪鉄林包丁】ではなかったらこうもいかなかっただろうからな!!!
力こそ大部分を失ってしまったが、それでも唯一無二の相棒であるお前と再び会えたこと……それが一番嬉しい!!!」
痛い痛い、もうちょっと優しくしてくれよ……
【槌鍛冶士】は男泣きしながら俺の肩をバンバンと叩いてきた。
色々と【槌鍛冶士】が復活する見込みみたいなのは感じていたが、今ここで語るのは野暮な話というものだ。
ただただ、今は【槌鍛冶士】が人の形を取り戻して俺の前に現れてくれたことを喜ぶとしよう。
可能性があったとしても、復活しない場合もあり得たんだからな!
少なくとも別の【失伝秘具】を【神殿】の完成に使っていた場合は【槌鍛冶士】が復活することはなかっただろうし。
「その通りだな!!!
ワシが力を込め、自ら手掛けたものを【一心同体】であるお前が使ったからこその奇跡だ!!!
この奇跡を以て、これからもお前のために鍛冶をやらせてもらうぞ!!!」
……っ、ああ!!
ああ!!
よろしく頼むぞ!!!
……ようやく戻ってこれたぞ!!!
【Bottom Down-Online Now loading……】
367話でキャメルちゃんを描きました!
それなりにかけた(つもり)なのでぜひ見に行ってみてください!